184 / 198
クリスマス番外
12:潤side
しおりを挟む
マンションのエントランスで貴矢さんの部屋番号を押して呼び出すと、すぐに開けてもらえた。電車の中で少し暖まってはいたが、外で待たされなくてよかった。
「潤、おはよう~。よく来たね」
玄関に入るや否や、寝起きのふにゃふにゃ貴矢さんにぎゅうっと抱きすくめられる。
「寒かったねえ、冷えひえだ」
「外、まだ真っ暗でしたよ」
「早く中であったまろう」
貴矢さんの腕から解放され、靴を脱いで上がらせてもらう。靴箱の上、僕が昨日あげたばかりのアクセサリートレイが目に入る。
「これ……」
「ありがとー、いい感じでしょう?」
ふにゃふにゃととろけるような笑顔の貴矢さん。気に入ってもらえたようだ。
リビングに通され、ソファに座るように促された。コートを脱いで一息つく。窮屈なくらいに重ね着してしまったせいで、ようやく動きやすくなった。
「コーヒー飲む?」
キッチンから貴矢さんの声。
「あ、僕も手伝います」
「いいよいいよ、座ってて」
さっきよりは歯切れのよい話し方になってきたが、寝起きのぽやぽやした貴矢さんに任せるのは心配だ。
「じっとしてるより動いている方があったかいですから」
「そう?」
キッチンに入ると、ケトルを火にかけていた貴矢さんがこちらを向いて笑った。
「ミル出しますね」
貴矢さんは本当にコーヒーが好きなようで、豆から挽いて淹れている。豆もそのときによって1種類で淹れたり、2種類をブレンドして使ったりと気分によって変えているようだ。豆のチョイスは貴矢さんに任せて、僕はそれを挽く係。
ーーあれ?
いつもの棚にミルを見つけたが、位置が違う。
ーー何だろう、違和感……。
さりげなく、隣の棚や他の物の位置を確認する。今まで洗いかごに入れっぱなしになっていた菜箸やフライ返しなどの調理器具がない。
「潤、おはよう~。よく来たね」
玄関に入るや否や、寝起きのふにゃふにゃ貴矢さんにぎゅうっと抱きすくめられる。
「寒かったねえ、冷えひえだ」
「外、まだ真っ暗でしたよ」
「早く中であったまろう」
貴矢さんの腕から解放され、靴を脱いで上がらせてもらう。靴箱の上、僕が昨日あげたばかりのアクセサリートレイが目に入る。
「これ……」
「ありがとー、いい感じでしょう?」
ふにゃふにゃととろけるような笑顔の貴矢さん。気に入ってもらえたようだ。
リビングに通され、ソファに座るように促された。コートを脱いで一息つく。窮屈なくらいに重ね着してしまったせいで、ようやく動きやすくなった。
「コーヒー飲む?」
キッチンから貴矢さんの声。
「あ、僕も手伝います」
「いいよいいよ、座ってて」
さっきよりは歯切れのよい話し方になってきたが、寝起きのぽやぽやした貴矢さんに任せるのは心配だ。
「じっとしてるより動いている方があったかいですから」
「そう?」
キッチンに入ると、ケトルを火にかけていた貴矢さんがこちらを向いて笑った。
「ミル出しますね」
貴矢さんは本当にコーヒーが好きなようで、豆から挽いて淹れている。豆もそのときによって1種類で淹れたり、2種類をブレンドして使ったりと気分によって変えているようだ。豆のチョイスは貴矢さんに任せて、僕はそれを挽く係。
ーーあれ?
いつもの棚にミルを見つけたが、位置が違う。
ーー何だろう、違和感……。
さりげなく、隣の棚や他の物の位置を確認する。今まで洗いかごに入れっぱなしになっていた菜箸やフライ返しなどの調理器具がない。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる