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【7】温泉旅館
7-6:直居side
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ふわふわして気持ちいい。貴矢さんにできること、と思って懸命にお酌をしていたら、僕も同じだけ飲んでしまった。
食事の片付けとお布団を敷いてもらうのに、普通だったらここで温泉に行くんだろうけど、ここまで飲んでしまったら危ないということで、貴矢さんと一緒に酔い覚ましの散歩に繰り出した。火照った体に夜風が気持ちいい。
ふわふわ、ふわふわ。
お腹いっぱいで、お風呂も気持ちよくて、お酒もおいしくて、幸せだ。
「ふふふ~」
「どうした?」
ご機嫌の僕を、貴矢さんも優しい笑顔で見守ってくれている。
「こんなに幸せで、いいんですかね~?」
「ははは、それはよかった」
貴矢さんの手を捕まえて、ぶんぶんと振りながら歩く。貴矢さんは手を振りほどくこともなく、僕に合わせてくれる。
なんで、僕の手をほどかないでいてくれるんだろう。
ずっと繋いでいてくれたらいいのに。
この温かくて大きな手も。
いつか、離れていってしまうんだろうか。
ーー僕の酔っ払いの思考回路は、あんなに幸せだった気持ちも一気にマイナスに引き摺り込んでしまった。
「潤君……?」
僕は、答えられないでいた。
「泣いてるの?……どうした?」
ぐずぐずと鼻を啜っている僕に、貴矢さんは優しい口調で問いかけてくれる。こんな、僕なんて、優しくしてもらえるような人間じゃないのに。
「淋しくなっちゃった?」
邪魔にならないように、道路の端に誘導してくれる。そのままいつものように、僕を抱きしめて背中をトントンしてくれた。
食事の片付けとお布団を敷いてもらうのに、普通だったらここで温泉に行くんだろうけど、ここまで飲んでしまったら危ないということで、貴矢さんと一緒に酔い覚ましの散歩に繰り出した。火照った体に夜風が気持ちいい。
ふわふわ、ふわふわ。
お腹いっぱいで、お風呂も気持ちよくて、お酒もおいしくて、幸せだ。
「ふふふ~」
「どうした?」
ご機嫌の僕を、貴矢さんも優しい笑顔で見守ってくれている。
「こんなに幸せで、いいんですかね~?」
「ははは、それはよかった」
貴矢さんの手を捕まえて、ぶんぶんと振りながら歩く。貴矢さんは手を振りほどくこともなく、僕に合わせてくれる。
なんで、僕の手をほどかないでいてくれるんだろう。
ずっと繋いでいてくれたらいいのに。
この温かくて大きな手も。
いつか、離れていってしまうんだろうか。
ーー僕の酔っ払いの思考回路は、あんなに幸せだった気持ちも一気にマイナスに引き摺り込んでしまった。
「潤君……?」
僕は、答えられないでいた。
「泣いてるの?……どうした?」
ぐずぐずと鼻を啜っている僕に、貴矢さんは優しい口調で問いかけてくれる。こんな、僕なんて、優しくしてもらえるような人間じゃないのに。
「淋しくなっちゃった?」
邪魔にならないように、道路の端に誘導してくれる。そのままいつものように、僕を抱きしめて背中をトントンしてくれた。
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