ひとりで生きたいわけじゃない

【3】セブにて

3-34:城崎side

　この様子は、今年4月のプレゼントが何だったかちっとも気づいてないな。
　君に出会えたことだよ、と言ったらまた泣かせてしまうだろうか。

「直居君からのプレゼントなら、拾った石ころでも大事にしちゃう自信あるけどね」
「石なんて……僕小学生じゃないんですよ！」
「はは、分かってるよ。喩えだよ、喩え」

　なぜかプンスカしている直居君が新鮮で可愛い。

「直居君が初めてスイーツ勧めてくれた日のこと覚えてる？」
「あ、はい。クッキーですよね」
「そう。あのとき買ったクッキー、会社で食べてたら、同僚から揶揄われてさ」
「え？」
「好きな子からのプレゼントかって訊かれたんだ。自分で買ったって言っても信じてもらえなくてさ」

　あの日、まだ会って2回目だったな。その時から既に、周囲にバレてしまうくらい君のことが好きだったのか、と思うと不思議だ。

「直居君から買ったクッキーひとつでそれだけ幸せになっちゃうんだよ、俺」
「！」

　伝わったかな。気持ち悪いかもしれないけれど、それくらい君のことが好きなんだよ。

「分かりました。お誕生日には、クッキー焼きますね！」
「…ぷッ……そうきたか！」

　斜め上の反応に、耐えきれず笑ってしまう。直居君はきょとんとしている。
　いや、でも、手作りか。それは嬉しいな。

「ありがとう、楽しみにしてる」
「はい！」

　今夜もどうなることかと思ったが、笑って一日を終えられてよかった。直居君には、毎日笑っていてほしい。