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【3】セブにて
3-31:城崎side
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腕を回し、ぎゅっと力を込める。愛しい人。
「……石鹸の匂い」
「ああ、もう香水の匂いじゃないよ」
「ふふっ」
「直居君も、シャンプーの匂い」
「はい」
こんなたわいもないやりとりが心を温かくする。
「今日、楽しかった?」
「はい。最高の誕生日でした」
ーーよかった。
「直居君、生まれてきてくれてありがとう。20年間、今日まで生きててくれて、俺と出会ってくれて、ありがとう」
直居君は、嫌だったかもしれないけど。
それでもこうして俺の前にいる。そのことが奇跡のように嬉しい。
でも、こんなこと言われたくなかっただろうか。腕の中の直居君の体が強張るのを感じた。
「……直居君、ごめん。君の気持ちも知らないで、こんなこと言われたくないよな」
謝ると、胸にぐりぐりと頭を押し付けられる。これは、首を横に振っている?
そっと顔を上げさせると、目に涙をたっぷり溜めて唇を噛んでいる。
「ごめん、……ごめんな?」
指で涙を掬い取るが、俺が決壊させてしまっただろうか、むしろ次々溢れてくる。
直居君は尚も首を振っている。何か言いたいことがあるんだろうか。
「話、聴くから。落ち着いてからでいいよ」
宥めるように言うと、もう一度胸に擦り寄ってきた。抱きとめて、頭や背中を撫でてやる。
「うっ……ひぐ……うぅっ………」
くぐもった嗚咽が聞こえてくる。
「我慢しなくていいよ。ごめんな、俺のせいだね」
背中をトントンと優しく叩く。不用意なことを言ってしまった。せっかくの楽しい誕生日を最後の最後でぶち壊してしまったようだ。
「俺、もっと勉強するね。直居君のこと、もっと教えて」
どんな言葉が彼を傷つけて、何を嬉しいと感じるのか。恋人になれなくても、理解者になりたい。一番近くで、彼を支えられる人に。
「……石鹸の匂い」
「ああ、もう香水の匂いじゃないよ」
「ふふっ」
「直居君も、シャンプーの匂い」
「はい」
こんなたわいもないやりとりが心を温かくする。
「今日、楽しかった?」
「はい。最高の誕生日でした」
ーーよかった。
「直居君、生まれてきてくれてありがとう。20年間、今日まで生きててくれて、俺と出会ってくれて、ありがとう」
直居君は、嫌だったかもしれないけど。
それでもこうして俺の前にいる。そのことが奇跡のように嬉しい。
でも、こんなこと言われたくなかっただろうか。腕の中の直居君の体が強張るのを感じた。
「……直居君、ごめん。君の気持ちも知らないで、こんなこと言われたくないよな」
謝ると、胸にぐりぐりと頭を押し付けられる。これは、首を横に振っている?
そっと顔を上げさせると、目に涙をたっぷり溜めて唇を噛んでいる。
「ごめん、……ごめんな?」
指で涙を掬い取るが、俺が決壊させてしまっただろうか、むしろ次々溢れてくる。
直居君は尚も首を振っている。何か言いたいことがあるんだろうか。
「話、聴くから。落ち着いてからでいいよ」
宥めるように言うと、もう一度胸に擦り寄ってきた。抱きとめて、頭や背中を撫でてやる。
「うっ……ひぐ……うぅっ………」
くぐもった嗚咽が聞こえてくる。
「我慢しなくていいよ。ごめんな、俺のせいだね」
背中をトントンと優しく叩く。不用意なことを言ってしまった。せっかくの楽しい誕生日を最後の最後でぶち壊してしまったようだ。
「俺、もっと勉強するね。直居君のこと、もっと教えて」
どんな言葉が彼を傷つけて、何を嬉しいと感じるのか。恋人になれなくても、理解者になりたい。一番近くで、彼を支えられる人に。
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