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【3】セブにて

3-18:城崎side

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 キラキラと目を輝かせながら、直居君は終始はしゃいでいた。目に映るもの何でも、見て見て、と一つひとつ教えてくれる。俺が買った水着に、海の向こうに見える島、波飛沫、色とりどりの魚たち。
 昨夜のことがあって体調も気になっていたが、まったく心配いらなかった。

「城崎さん、見てください!船が浮いてるみたい!」

 海の透明度が高く、バンカーボートが飛んでいるように見える。

「ホントだね」

 無邪気に興奮している彼が可愛くて、景色よりもつい直居君を目で追ってしまう。他の観光客と同乗しているツアーだが、誰よりも全力で楽しんでいる姿に笑みが止まらなかった。

「初めてのシュノーケリングはいかがでしたか?」
「すっっごかったです!お魚いっぱいいました!」

 賢いはずなのに、小学生のような感想を寄越すのが面白い。まあ、バカンスに来て難しいこと考えてもしょうがないしな。

 アイランドホッピングを終え、ホテルに戻るため車に乗り込むと、走り始めてすぐに直居君は寝てしまった。
 はしゃぎ疲れて帰りの車で寝てしまうなんて、本当に子どもみたいだ。無防備な寝顔。こっそり写真を撮ったら怒るだろうか?
 満ち足りた気分で寝顔を眺めているうちに、ホテルに到着した。

「疲れた?」
「すみません、寝ちゃって……でも、元気です!」
「ふふ、よかった。シャワー浴びてから夕食にしようか」
「はい!」

 せっかくの誕生日だ。ホテルのレストランでコース料理を予約してある。これだけ元気が残っていれば、食べながら寝てしまう、なんてことはないだろうな。
 想像して思わず吹き出す俺を、直居君は不思議そうな顔で見ていた。
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