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【3】セブにて
3-11:直居side
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そんなことを考えながら眠りについたのがよくなかったんだと思う。あの日の悪夢にうなされ、飛び起きてしまった。
「ーー……っ!!」
真っ暗な部屋。あのホテルとは違う。なのに、震えが止まらない。
時計を見る。まだ午前1時だ。寝なきゃいけない。もう一度、寝なきゃいけないのに。
身体中を這い回る感触。身動きできない恐怖。あのまま助けが来なかったら、僕はどうなってたんだろう。
何だか息苦しい。リビングに行きお水を飲む。動揺は一向におさまる気配がない。
『怖くなったり、嫌な気持ちになったりしたら、すぐに言ってね』
城崎さんの優しい笑顔と言葉がふと蘇る。
左側のドアの向こうに、城崎さんがいる。寝ているところを起こしていいとは言われていない。ゆっくりしに来たのに、こんな真夜中に起こされたら何のための旅行だか分からないだろう。
大丈夫。ここに城崎さんがいるって思うだけで、少しほっとできるじゃないか。ここには僕を傷つけようとする人はいない。大丈夫、大丈夫。
このままここで寝ようかな。ソファに沈み込みながら、目を閉じてみる。
ほら、ここはベッドじゃない。怖くない。
まどろみはじめた瞬間、暗闇から無数の手が伸びてくる。
「……っあぁ……っ!」
飛び起きた拍子にソファから落ちる。痛い。夢から現実に戻ってきて、今日は眠れそうにないと悟る。
このままここで朝を待とうか。諦めて、リビングの電気を点ける。
部屋がパッと明るくなると同時に、左側のドアが開いた。
「……直居君?どうした?」
城崎さんが眩しそうに顔を顰めている。
やばい、起こしちゃったんだ。
「すみません、静かにします……!」
「なんか、物音、したけど」
さっきソファから落ちたときのだ。うう、申し訳ない……。
「……直居君、具合悪い?顔色、よくないみたい」
「大丈夫です、すみません……」
ああ、でも、もう起こしちゃったんだ。……迷惑だったら、断るよな。頼ってみても、いいだろうか。
本当に?という顔でこちらを伺っている城崎さんに、ダメ元で聞いてみる。
「あの、そっちで一緒に寝てもいいですか……?」
「え?」
城崎さんは驚いた顔で一瞬固まって、すぐに破顔した。
「もちろん。おいで」
「ーー……っ!!」
真っ暗な部屋。あのホテルとは違う。なのに、震えが止まらない。
時計を見る。まだ午前1時だ。寝なきゃいけない。もう一度、寝なきゃいけないのに。
身体中を這い回る感触。身動きできない恐怖。あのまま助けが来なかったら、僕はどうなってたんだろう。
何だか息苦しい。リビングに行きお水を飲む。動揺は一向におさまる気配がない。
『怖くなったり、嫌な気持ちになったりしたら、すぐに言ってね』
城崎さんの優しい笑顔と言葉がふと蘇る。
左側のドアの向こうに、城崎さんがいる。寝ているところを起こしていいとは言われていない。ゆっくりしに来たのに、こんな真夜中に起こされたら何のための旅行だか分からないだろう。
大丈夫。ここに城崎さんがいるって思うだけで、少しほっとできるじゃないか。ここには僕を傷つけようとする人はいない。大丈夫、大丈夫。
このままここで寝ようかな。ソファに沈み込みながら、目を閉じてみる。
ほら、ここはベッドじゃない。怖くない。
まどろみはじめた瞬間、暗闇から無数の手が伸びてくる。
「……っあぁ……っ!」
飛び起きた拍子にソファから落ちる。痛い。夢から現実に戻ってきて、今日は眠れそうにないと悟る。
このままここで朝を待とうか。諦めて、リビングの電気を点ける。
部屋がパッと明るくなると同時に、左側のドアが開いた。
「……直居君?どうした?」
城崎さんが眩しそうに顔を顰めている。
やばい、起こしちゃったんだ。
「すみません、静かにします……!」
「なんか、物音、したけど」
さっきソファから落ちたときのだ。うう、申し訳ない……。
「……直居君、具合悪い?顔色、よくないみたい」
「大丈夫です、すみません……」
ああ、でも、もう起こしちゃったんだ。……迷惑だったら、断るよな。頼ってみても、いいだろうか。
本当に?という顔でこちらを伺っている城崎さんに、ダメ元で聞いてみる。
「あの、そっちで一緒に寝てもいいですか……?」
「え?」
城崎さんは驚いた顔で一瞬固まって、すぐに破顔した。
「もちろん。おいで」
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