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おまけ
雨の日デート9
しおりを挟む……恥ずかしい。昨夜はまあ、酒も入っていたし。口の中に指を突っ込まれて、不可抗力で声を出してしまったわけだが。
素面で。朝から。俺は何をやっているんだ。
「京さん?大丈夫ですか?」
「……」
車の助手席に乗り込んでから一言も発しない俺を気遣うように、泰歩が声をかけてくる。顔を背けたまま、外を眺める。
窓を伝って横に流れていた雨の雫がピタッと止まった。新しい雫がポツポツと増える。信号待ち。
「体辛いですか?無理させちゃったかな……」
手が伸びてくるのを察知して、パシッと振り払った。顔、見られたくない。
「怒ってます?」
「……怒ってない」
「本当に?」
それ以上答えない俺に、ふう、と諦めたように息を吐く。雫はまた横に流れ始めた。
流石に態度が悪い自覚はある。愛想尽かされても文句を言えないくらいには。
決して怒っているわけでも、体が辛くて黙っているわけでもない。でも、無邪気にしゃべれるような気分でもない。
ふむ。
そっぽを向いたまま、右手を伸ばす。
「ん?……あ。ふふ」
気づいた泰歩が笑う。俺の手は、運転席の座面のフチに乗っかっている。指の背が、太ももに軽く触れる位置。
すぐに捉えられ、足の上に乗せられてしまった。手の甲をぽんぽんと2回叩いて、泰歩の左手はハンドルに戻されたようだ。
「あれ、雨止んできましたか?」
「うん」
「今日も雨の予報だったのに。晴れてきてますね」
ふるふる震えながら流れていく雫が、いつの間にか出てきた太陽の光を受けてきらめく。
「夜晴れてたら、今夜こそ星観に行きましょうか」
雨上がりの夜空は星がよく見える。雨で空気中の塵が落ちて、ただ晴れている日よりも綺麗に見えるのだ。泰歩がそんなことを知っているとは思わないが、いい提案だ。
ようやく、顔を左から前に戻す。
「そうだな」
雨の日も、そこまで悪くないな。
●おしまい●
++++++++++++++
最終話のアップができていませんでした……!
番外編、完結です。
お読みいただきありがとうございました!
こまど
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