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「京さん、こっち」
泰歩に手を引かれ、ベッドに入る。キッチンの片付けに夢中になっていて、布団を敷いていないままだった。あんなに悩んでいたのが馬鹿らしいほど呆気なく、泰歩の腕の中にすっぽりと収まってしまった。
「寒くないですか?」
「うん」
昨日と同じように、足を絡めてくる。これ、温かいのはよいのだが、おかしな気分になりそうだ。
「さっきの続き、していいですか?」
続き?
何のことだ、と思って泰歩を見返すと、返事をするより先に唇が奪われる。
「ん……」
なんだかいつものキスと違う。いつもより、何というか……情熱的だ。
角度を変えながら、ちゅ、ちゅ……と音を立てて何度も口づけられる。
ーー……!
泰歩の舌が俺の唇に触れた。
これって、今日、まさか。
抱きしめる手に、背中を撫でられる。
ーー~~~~~……っ!
ゾクゾクと肌が粟立つ。背中だけでなんでこんなに感じるんだ。
「んっふ………」
思わず吐息が漏れてしまった。隙を突いたように、泰歩の舌が俺の唇を割ってズリュ、と侵入してくる。
ーーあ、やばい!
息子が反応してしまった。瞬間、脳裏に泰歩のAVコレクションが蘇る。彼の性的対象は女性だ。
男だと意識されたら嫌われる。絡んだ足から逃げ、両手を突っ張って強く胸を押し返した。
「あ……」
強張った泰歩の表情。
俺の熱、泰歩の足に当たってないよな?サッと血の気が引く。
「すみません、京さん。嫌でした?」
よかった。泰歩の様子からすると、セーフだったようだ。
「別に。寝るぞ」
素っ気ないふりをして、泰歩に背中を向ける。安堵の溜め息を吐いた。
……って、俺、何がしたいんだ。せっかくのチャンスだったのに。あのまま身を任せていたら、今日、一線を越えられていた?
いや、だが、今までは雄を意識してこなかったからキスやハグができていただけかもしれない。嫌悪され捨てられるくらいなら、肉体関係を持てなくても傍にいられる方がよい。
しかし、俺が夜の相手になれなかったら、泰歩は巨乳女子に取られてしまうじゃないか。そんなのはダメだ。
結論、何の解決にもなっていない。
ーー俺のヘタレ。しょうもな……。
今度は自分への失望の溜め息を吐いた。
泰歩に手を引かれ、ベッドに入る。キッチンの片付けに夢中になっていて、布団を敷いていないままだった。あんなに悩んでいたのが馬鹿らしいほど呆気なく、泰歩の腕の中にすっぽりと収まってしまった。
「寒くないですか?」
「うん」
昨日と同じように、足を絡めてくる。これ、温かいのはよいのだが、おかしな気分になりそうだ。
「さっきの続き、していいですか?」
続き?
何のことだ、と思って泰歩を見返すと、返事をするより先に唇が奪われる。
「ん……」
なんだかいつものキスと違う。いつもより、何というか……情熱的だ。
角度を変えながら、ちゅ、ちゅ……と音を立てて何度も口づけられる。
ーー……!
泰歩の舌が俺の唇に触れた。
これって、今日、まさか。
抱きしめる手に、背中を撫でられる。
ーー~~~~~……っ!
ゾクゾクと肌が粟立つ。背中だけでなんでこんなに感じるんだ。
「んっふ………」
思わず吐息が漏れてしまった。隙を突いたように、泰歩の舌が俺の唇を割ってズリュ、と侵入してくる。
ーーあ、やばい!
息子が反応してしまった。瞬間、脳裏に泰歩のAVコレクションが蘇る。彼の性的対象は女性だ。
男だと意識されたら嫌われる。絡んだ足から逃げ、両手を突っ張って強く胸を押し返した。
「あ……」
強張った泰歩の表情。
俺の熱、泰歩の足に当たってないよな?サッと血の気が引く。
「すみません、京さん。嫌でした?」
よかった。泰歩の様子からすると、セーフだったようだ。
「別に。寝るぞ」
素っ気ないふりをして、泰歩に背中を向ける。安堵の溜め息を吐いた。
……って、俺、何がしたいんだ。せっかくのチャンスだったのに。あのまま身を任せていたら、今日、一線を越えられていた?
いや、だが、今までは雄を意識してこなかったからキスやハグができていただけかもしれない。嫌悪され捨てられるくらいなら、肉体関係を持てなくても傍にいられる方がよい。
しかし、俺が夜の相手になれなかったら、泰歩は巨乳女子に取られてしまうじゃないか。そんなのはダメだ。
結論、何の解決にもなっていない。
ーー俺のヘタレ。しょうもな……。
今度は自分への失望の溜め息を吐いた。
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