あなたはミラ

秋野小窓

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 いつまで柳井さんと一緒にいられるか分からないから、寝る時間を削って勉強するのはやめた。ベッドに潜り、柳井さんに話しかける。

「明日の生解説、柳井さんですか?」
「うん」
「行ってもいいですか」
「いいよ。土日は時間違うから気をつけて」
「はい」

 あれから昼休みには行っていない。最近は夜に眠れているから、寝落ちせずに見られるかもしれない。

「今日は違う話しようか」
「お願いします」
「くじら座のミラの話」

 解説のときの話し方とは違う。ストーリーがあるわけではなく、星の知識を話してくれた。これでは眠くならないかも……と思っていたが、相槌を挟まなくても柳井さんがどんどん専門的な話をしてくれるおかげで気づいたら夢の中だった。


「おはようございます」
「おはよう。朝飯いる?」
「いります!というか、手伝います」

 キッチンに立つ柳井さんのアシスタントを買って出る。

「柳井さん、今度料理教えてくださいよ」
「うん」
「やった!」

 とりあえず、料理を覚えるまではいてもらう口実もできた。料理を覚えたいのが一番の目的だが、少しでも長く一緒にいられる理由が欲しい。

 朝食を終えて出勤する柳井さんを見送り、キッチンを片付けて身支度をする。いつもは見ないプラネタリウム番組も観てきたいな。
 最近のプラネタリウムは音響に凝っていたり匂いの演出がついていたりとかなり進化しているらしい。県立の科学館はそこまで設備が進んでいないようだが、生解説とはまた違った番組を楽しめそうだ。
 今日は一日科学館で過ごすことにした。
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