4 / 24
前編
第3話:VS首無し騎士
しおりを挟む首無し騎士との戦いは熾烈を極めていた。
教会に金属がぶつかりあう重低音が何度も響く。
くそっ! こいつ固い! 魔法も全く通らない! しかも……!
首なし騎士はこちらの剣を盾で受け止めると、槍を高速で突き出した。俺は身体を捻り、ギリギリで躱す。
しかも、攻撃に隙がない! こうなったら……! 定期券を取り出し、剣にセットしようとした瞬間、ピッ♪とその場に不釣り合いな音が響いた。
えっ? あっ。タッチでもいけるんだ……。新しい定期券の仕様を理解した瞬間、身体にとんでもない衝撃が加わる。しまっ……!
盾で思い切り殴られ、俺は教会の壁まですっ飛ばされた。チカチカした視界には槍を構えてこちらに突っ込んでくる騎士の姿が写る。
まずい! 咄嗟にバッグに手を突っ込み、お目当ての物を地面に投げつける! 途端に辺りに濃い煙が広がる。
目標を見失った騎士の突撃で壁が砕かれる。俺は煙の中で回復薬をがぶ飲みして、どうにかして呼吸を整えた。持ってきて良かったな……煙玉。
煙でほとんど視界が無いが、『第六感』でなんとなく嫌な気配は感じられる。今度は定期券を剣にタッチせずにセット。輝きを放つ剣で、そのまま嫌な気配が大きい方に斬りかかる。
ガァン! 手応えあり! 解放したこの剣は、振るう時は羽根のように軽く感じるが、実際の質量はそのままだ。それなら、剣速が早い分衝撃は増す!
「うおおおおおおおおお!!!」
何度も何度も剣を叩きつける。甲冑を打つ衝撃で徐々に煙が晴れていく。
「まだまだ!」
剣に雷魔法を纏わせて更に打つ。騎士が後退したその一瞬、槍を持っている腕を斬り上げた。
騎士の手を離れて宙に浮く槍、俺は地面に突き刺した剣を踏み台代わりにして、空中に身を投げた。
「これで、終わりだああああ!!!!」
空中でキャッチした槍を空洞の鎧の中に垂直に投げ込む!! 位置エネルギーを得た槍はそのまま騎士を貫いた。ほどなくして、騎士は砂になっていった。
「はぁ……はぁ……はぁ……ははは、やった……いやったぁ!」
一人でEランクをクリアしたのは初めてだ。溢れる思いそのままに腕を突きあげた。
「さてと、一体何が貰えるかな」
出現した駅でしばし休憩したあと、券売機で報酬を確認する。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
期限:+0-6-0 スキル:手練レノ王宮騎士 アイテム:☆信義の槍
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
想像以上の大当たりだった。期限も長いしスキルも有用そうだ。何よりアイテムがレアアイテム!
報酬が入っているロッカーを開けると、首無し騎士が持っていたよりも一回り小さい槍が入っていた。
「剣も使い慣れてるけど、新しい槍も新スキルと相性が良さそうだな……! そうだ! 合成もやろう!」
興奮で独り言を連発しつつ、券売機で合成を始める。今の『元見習イ武芸者ノ見習イ魔法剣士』と組み合わせて……。
色々と試したあと、定期券を確認する。
―――――――――――――――――――――――――――――
元見習イ武芸者ノ聖騎士⇔第六感ヲ持ツ見習イ冒険者
経由 揺蕩タウ小サナ幸運
0-7-15 まで
ガタン ゴウト様
―――――――――――――――――――――――――――――
どうやら『魔法剣士』と『王宮騎士』が融合する形で『聖騎士』に変わったようだ。期限を3ヵ月も消費したが仕方ない。
俺は確信した。このスキル合成できる定期券があればダンジョン電車をいつか攻略できると。
とはいえ、今日はもう帰ろう。足はフラフラで魔法の使いすぎで頭も重い。期限も得たことだし、数日は休んでもいいかもしれない。
そんなことを思いつつ帰りの電車に乗り込もうとしたとき、全身に悪寒が走った。『第六感』か!?
バッと振り返ったが何もいない。そりゃそうだ。もうクリアしたんだから。
釈然としないが……まあ疲れのせいだろう。改札を通り、そのまま電車に乗り込んだ。
――――――――――――――なるほど、『アレ』を手にしたのはあいつか。
黒いフードを被った男が呟く。
「勘はいいようだが……まだ『アレ』を使いこなせていないな……。厄介なことになる前に始末するか」
男が定期券を改札に通すと、時空を歪めて黒い汽車が黒煙を吹いて走ってくる。
そしてそのまま、男を乗せると再び時空を歪ませて、暗い闇へと走り去っていったのだった……。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
異世界行きのバスは運行中です。
赤沼 夜
ファンタジー
バイト帰りにバスに乗った。主人公の今井 清嗣(いまい きよつぐ)そしたらまさかの異世界行き?
異世界で主人公がポロロという魔法みたいなやつを使い色々な経験をして、成長して行く物語。
異世界に来た主人公は果たして
この世界で生き抜くことが出来るのか……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話
天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。
その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。
ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。
10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。
*本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています
*配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします
*主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。
*主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません
【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~
椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。
しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。
タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。
数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。
すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう!
手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。
そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。
無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。
和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる