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それから日曜日までの三日間は、放送での呼び出しはなかった。
そして会長とのデートの当日……俺は予定の時間よりも三十分近く早く着いていた。
……流石に早く来すぎたか?
初デート(仮)ということもあって、正直かなり緊張している。
一応昨日『初心者用デートマニアル』を読破したが、それでも不安は拭いきれない。
俺は緊張を和らげる為に、スマホのアプリ(ゲーム)を立ち上げる。
……落ち着けこれはただのお祝いだ……デートなんかじゃない。
会長の行為は、同じ境遇の俺への配慮、勘違いすれば恥をかくのは自分自身。
間違っても会長にその気はない。
俺はアプリ(ゲーム)をやめ、スマホに表示されている時間を確認する。
1時40分。
時間的にはまだ余裕あるな……
体感的にはとっくに30分経ってると思ったが、時間の概念は時に残酷だ。
これがアニメ見てる時なら最高なんだけどな……
俺は時間を潰す為、再びアプリ(ゲーム)を起動する……
「何やってるんですか?」
すると不意後ろから会長が画面を覗き込んで来た。
……ヤバイ滅茶苦茶可愛い。
「……あの……心臓に悪いので離れてもらえますか?」
距離が近くこともあって、匂いや息遣いが直接伝わって、色々とヤバイ……
「童貞には刺激が強すぎましたか?」
正直即死です。
「……そんなことより早く行きますよ会長」
冷静を装い、会長から距離を取る。
「大丈夫ですか? 顔赤いですよ?」
顔は見えないが、恐らくあの時と同じニヤニヤ顔をしているだろう。
ソ◯トバンク店内。
「じゃあケータイ買いましょうか?」
「……本当に買うんですか?」
「当たり前じゃないですか? 今の時代ケータイ持ってない人なんていませんよ? それにケータイないと色々と不便ですよ? 例えば〝俺を呼び出す時〟とか?」
あえて最後を強調する。
会長だって放送を個人の私用で使うことは許されない。
今は日が浅いから何とか誤魔化せてはいるが、回数が重なれば流石に教師陣も不審がる。そうなればバレるのも時間の問題だろう。
「仕方ないですね……」
会長は渋々と言った感じで納得し、金色のガラケーを手に取る。
「会長まさかとは思いますが……その金色のガラケーを買うつもりじゃないですよね?」
「ダメですか?」
ダメではないが、今の高校生なら好んでは選ばない。
「会長、こっちのスマホなんてどうですか?」
俺は最新機種のスマホを指差す。
「……高いですし」
俺は会長の反応に引っ掛かりを覚える。
現に会長の反応はあくまで〝値段〟に対してであり、機種に対しての拒絶ではない。
だとすると会長がスマホを持ってないのは、自分の意思ではなく、家庭環境が原因の可能性が出てくる……
「まあ、気づきますよね」
会長は俺の反応を見て、そう結論づける。
「普通に考えて、私の歳でケータイを持ってなければ、家庭環境に問題があると考えます」
「いえそんなことは……」
「別に無理しなくていいですよ……現にそうなんですから」
会長は一度そこで言葉を切り、そのまま続ける。
「私の家庭は母子家庭です。両親は私が幼い頃に離婚し、私は母親の方に引き取られました。しかし母親には邪険に扱われ、ろくに愛情を注がれませんでした。まあ幸い母親は世間体を気にしてた為、学費や衣服にはお金を裂いてくれましたが……」
「じゃあ最新機種のスマホでも買いましょうか?」
「……貴方話聞いてました? それとも新手の嫌がらせですが?」
「別に嫌がらせではありませんよ? ただ今日は通帳からお金を下ろしたので、財布には丁度10万円程あります」
「同情はやめて下さい」
「同情ではありませんよ? 現に会長がスマホを持てば俺の利に繋がります。何かあったらいつでも会長を呼び出せますし、一方的にセクハラもできます……なので俺のワガママに付き合ってくれませんか?」
当然俺の行動は偽善だ。それっぽい理屈を言って俺の行為を押し付けてるに過ぎない。
だがスマホは連絡ツールとしては必須だ。
会長が今後のことを考えてるなら、受け取らざるを得ない。
「……仕方ないですね……貴方の計画に乗ってあげます」
この日俺の貯金がなくなったのは言うまでもない。
家に帰って来た頃には常に午後6時を回っていた。
俺は食事を簡単に済ませると、寝る準備を整え、ベットに倒れこむ。
今日は人生の一生分の運を使った気がする。
正直今でも胸が高鳴っている。
会長の匂い、息遣い、全てが脳裏に焼き付いて離れない。
完全に犯罪者の思考に陥っているが、会長を目の前にすれば誰でもこうなる。
それ程までに会長は魅力的だ。
俺は目を瞑り、今日の会長とのデート(仮)を振り返る。
……
……金を奢った以外にロクな思い出がない。
からかわれ、煽られ、罵倒され……だが自然と嫌な感じがしない……むしろ幸福と言うか幸せと言うか……完全に飼いならされてるな俺。
俺の意識はそこで途切れた。
そして会長とのデートの当日……俺は予定の時間よりも三十分近く早く着いていた。
……流石に早く来すぎたか?
初デート(仮)ということもあって、正直かなり緊張している。
一応昨日『初心者用デートマニアル』を読破したが、それでも不安は拭いきれない。
俺は緊張を和らげる為に、スマホのアプリ(ゲーム)を立ち上げる。
……落ち着けこれはただのお祝いだ……デートなんかじゃない。
会長の行為は、同じ境遇の俺への配慮、勘違いすれば恥をかくのは自分自身。
間違っても会長にその気はない。
俺はアプリ(ゲーム)をやめ、スマホに表示されている時間を確認する。
1時40分。
時間的にはまだ余裕あるな……
体感的にはとっくに30分経ってると思ったが、時間の概念は時に残酷だ。
これがアニメ見てる時なら最高なんだけどな……
俺は時間を潰す為、再びアプリ(ゲーム)を起動する……
「何やってるんですか?」
すると不意後ろから会長が画面を覗き込んで来た。
……ヤバイ滅茶苦茶可愛い。
「……あの……心臓に悪いので離れてもらえますか?」
距離が近くこともあって、匂いや息遣いが直接伝わって、色々とヤバイ……
「童貞には刺激が強すぎましたか?」
正直即死です。
「……そんなことより早く行きますよ会長」
冷静を装い、会長から距離を取る。
「大丈夫ですか? 顔赤いですよ?」
顔は見えないが、恐らくあの時と同じニヤニヤ顔をしているだろう。
ソ◯トバンク店内。
「じゃあケータイ買いましょうか?」
「……本当に買うんですか?」
「当たり前じゃないですか? 今の時代ケータイ持ってない人なんていませんよ? それにケータイないと色々と不便ですよ? 例えば〝俺を呼び出す時〟とか?」
あえて最後を強調する。
会長だって放送を個人の私用で使うことは許されない。
今は日が浅いから何とか誤魔化せてはいるが、回数が重なれば流石に教師陣も不審がる。そうなればバレるのも時間の問題だろう。
「仕方ないですね……」
会長は渋々と言った感じで納得し、金色のガラケーを手に取る。
「会長まさかとは思いますが……その金色のガラケーを買うつもりじゃないですよね?」
「ダメですか?」
ダメではないが、今の高校生なら好んでは選ばない。
「会長、こっちのスマホなんてどうですか?」
俺は最新機種のスマホを指差す。
「……高いですし」
俺は会長の反応に引っ掛かりを覚える。
現に会長の反応はあくまで〝値段〟に対してであり、機種に対しての拒絶ではない。
だとすると会長がスマホを持ってないのは、自分の意思ではなく、家庭環境が原因の可能性が出てくる……
「まあ、気づきますよね」
会長は俺の反応を見て、そう結論づける。
「普通に考えて、私の歳でケータイを持ってなければ、家庭環境に問題があると考えます」
「いえそんなことは……」
「別に無理しなくていいですよ……現にそうなんですから」
会長は一度そこで言葉を切り、そのまま続ける。
「私の家庭は母子家庭です。両親は私が幼い頃に離婚し、私は母親の方に引き取られました。しかし母親には邪険に扱われ、ろくに愛情を注がれませんでした。まあ幸い母親は世間体を気にしてた為、学費や衣服にはお金を裂いてくれましたが……」
「じゃあ最新機種のスマホでも買いましょうか?」
「……貴方話聞いてました? それとも新手の嫌がらせですが?」
「別に嫌がらせではありませんよ? ただ今日は通帳からお金を下ろしたので、財布には丁度10万円程あります」
「同情はやめて下さい」
「同情ではありませんよ? 現に会長がスマホを持てば俺の利に繋がります。何かあったらいつでも会長を呼び出せますし、一方的にセクハラもできます……なので俺のワガママに付き合ってくれませんか?」
当然俺の行動は偽善だ。それっぽい理屈を言って俺の行為を押し付けてるに過ぎない。
だがスマホは連絡ツールとしては必須だ。
会長が今後のことを考えてるなら、受け取らざるを得ない。
「……仕方ないですね……貴方の計画に乗ってあげます」
この日俺の貯金がなくなったのは言うまでもない。
家に帰って来た頃には常に午後6時を回っていた。
俺は食事を簡単に済ませると、寝る準備を整え、ベットに倒れこむ。
今日は人生の一生分の運を使った気がする。
正直今でも胸が高鳴っている。
会長の匂い、息遣い、全てが脳裏に焼き付いて離れない。
完全に犯罪者の思考に陥っているが、会長を目の前にすれば誰でもこうなる。
それ程までに会長は魅力的だ。
俺は目を瞑り、今日の会長とのデート(仮)を振り返る。
……
……金を奢った以外にロクな思い出がない。
からかわれ、煽られ、罵倒され……だが自然と嫌な感じがしない……むしろ幸福と言うか幸せと言うか……完全に飼いならされてるな俺。
俺の意識はそこで途切れた。
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