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第20章副将軍とエマ(前編)

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エマがゼンの仕事の整理をした結果、ゼンの仕事の3分の1くらいは副将軍のサッリに任される事となった。
ところがその事が気に食わなかったのか、ゼンが居ない隙を突いて、サッリが文句を言いに来た。

サッリはエマを見ると言った。
「お前が噂の愛人か。ゼン様になにを吹き込んだ。」

サッリは凄い剣幕だった。
しかしエマはなにも感じなかった。

エマは言った。
「別に何も言っていません。ただゼン様の仕事を整理しただけです。あと正確には愛人でもありません。」

するとサッリは言った。
「余計な事をしやがって」

エマは随分と態度が大きいなと思った。
そして官僚時代の上司の事を少し思い出した。
こういう人間は結局、受け流すしかない。

エマは言った。
「私はニカ様の信任を受けてゼン様の業務の補佐に当たっています。私に対して不満を言うという事は両名に不満を言うという事です。その意味が分かっているのですか。」

するとサッリはさらに怒りを募らせて、エマを怒鳴りつけた。
「女がぐちゃぐちゃうるせえよ」

エマは見た目に似合わず気が短いほうだ。
しかしエマはこの男に対して怒るのは時間の無駄だと思った。
そこで、エマは言った。
「話はそれだけですか。それなら、出て行ってもらえます?私は忙しいので」

するとエマに脅しが効かないと分かり、ゼンにこの事が発覚する事を恐れるサッリはエマに対して下手に出た。
「言いすぎた。悪い。あんたが綺麗だからつい口が滑っちまった。」

エマはその言葉を聞いてため息をついた。
(全く反省してないですね。)
女というものを舐めているのだろう。
そしてエマはふと気付いた。
この様に今までの周りの人間が受流してきたからここまで増長したのではないだろうか。
こういう男は痛い目を見たほうが良いのだ。

エマは言った。
「サッリ・ハウリシオ。それ以上私を侮辱するならこちらにも考えがあります」

サッリは目を見開き、こちらをにらんだ。
「何をする気だよ」

エマは言った。
「あなたの財務処理には疑問が多い。小額なので目をつぶっていましたがその事を軍議にかけても良いのですよ。」

実はエマは、ゼンの仕事を手伝ううちにこの男が軍の資金を不正に利用している事に気付いていた。
しかし、金額がかわいいものだったので放っておいていたのだ。

もしこれがゼンにばれたら清廉なゼンのことだ、サッリはまともな死に方が出来ないだろう。
それを聞くとサッリは顔面蒼白になり、土下座して許しを乞うた。

それを見てエマは言った。
「もう良いから。立ち去れ。そしてこれからは真面目に働け」

「はい。」
サッリは涙目でそう言うと、立ち去って行ったのだった。

「今度からはこうする事にしましょう」
エマは少しすっきりして、そう呟いたのだった。
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