両性愛は人類愛!

真憂

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時系列がめちゃくちゃ?

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彼女はオーディション会場から逃げるように出て、近くの商業ビルを駆け抜けていた。レンタルショップのホラー映画のコーナー。夜のお店。次々と流れていく。カラオケ店を目にした時、さっきのオーディションを思い出して吐き気がした。急いでビルを出て、近くのゴミ捨て場に倒れこんだ。

呼吸が過呼吸と言っていい程荒い。息が苦しい。どうしよう。このオーディション会場付近から離れなきゃ。SNSで告知した私が馬鹿だった。そしたらあいつが来るに決まってるのに。あいつが来る前に逃げなきゃ、今すぐ…はやく…はやく…

「何やってんの」

金髪内巻きボブの女が立っていた。

「…ゆいちゃん?」

言ったとたん、呼吸が更に荒くなった。息ができない。吐くことができず、吸うことばかりを繰り返す。

「ちょっとお姉さん、大丈夫?頭も身体も」

男声で言われた瞬間、涙が出てきた。よかった、あいつじゃない。

「全くなんなのさ。ライブだって言われて来たらオーディション会場だし、よくわかんねぇストーカーファンが乱入してくるし。俺は何を見せられてるのさ、コントか?」

彼の股間を思いっきり蹴った。

「痛って!俺は手術でタマ取るタイプじゃねえんだよ!」

「私のこんな状態を見てコントと言えるあなたの神経を疑う」

「そんだけ元気なら大丈夫じゃない?さっきの蹴りも力が入ってたし。憎まれ口言えるうちは人間は生きるよ」

その言葉でなんだか落ち着いた。「ほら」と差し出された水を飲む。

「…あいつのことなら何も聞かないで。口に出したらまた前の状態に戻る」

「それより疑問があるんだけどさ」

「何よ」少したじろぐ。

「お姉さん、俺に会った時、普通に前のグループのライブ帰りじゃなかった?」

「え…?」

「時系列がめちゃくちゃなんだよ。まるで誰かの創造の世界みたいに。おかしいと思わない?」

そう言われてもピンと来ない。そもそも彼とどういう風に出会ったっけ…?それを考えるとまた光が差してくる。眩しい光が。

「まああんまり追及し過ぎるのもよくないか。そうされると俺も困るんだ。次はあの場所かな…」

彼の声が遠くなる。「おやすみ」
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