ヒノキの棒と布の服

とめきち

文字の大きさ
上 下
92 / 187

第六十一話 王国の幸

しおりを挟む

 その夜、カズマは魔力の続くかぎり皮袋を作った。
 大型の鞄を数個、教会レベルの大きさで作ったので、余裕がありそうだ。
 小型の巾着も一〇個ほど。
 小分けしやすいので、使い勝手も良い。
 こればかりは、魔力の消費量を軽減できなかったようで、全部作り終えたらなにやらふらふらする。
 おぼつかない足を運んで、ふらふらと部屋にたどりついた。
 ベッドには、ティリスとアリスティアが夜着で座っている。

「お屋形さま!」
 ふらつく足を叱咤して、やっとベッドに入ったのは日を超えてからだった。
「いったいいくつの皮袋をお造りになったのでしょう?」
 アリスティアは、心配そうにカズマの前髪を持ち上げる。
「さあ。」
 ティリスは、落ち着いた雰囲気で、ベッドに倒れこんだカズマの頭をなぜた。
「ティリスさま。」
「アリスティアさま、殿さまはこのようにお疲れになるほど、帝国で何を見たのでしょうね。」
「そうでございますね。」

 カズマはその晩、眉間に寄せたしわがなかなか伸びなかった。

「アリスティアさま。」
「はい。」
「わたし、懐妊いたしております。」
「はあ?」
「子供ができたと。」
「はい…ええええええええええええ!だってあの一回きり!」
「そうですね。」
「はあああ、なんということでしょう。」

 当たりましたねえ。

「アリスティア様、探査の魔法を。」
「ははい。」
 こんなふうに人体に使うことになるとは、アリスティアにしても思っていなかった。
 ティリスのおなかには、約十五センチほどの胎児が見られる。
 体重にして約一〇〇グラム。
 だいたい十五週前後のもようである。
「吐き気もあまりでなくなりました。」
「ああ、あなたの食欲不振はそこにありましたの。」
「ええまあ。」

 ベスなどには気づかれていたかもしれない。

 そろそろおなかもポッコリしてくる。
「でもこれでは帝国の食料事情が…」
「移動にはアマルトリウスがお手伝いしてくれますよ。」
「そ、そうですね。」
「豊穣の聖女たる私が行かなくては、帝国も救われません。」
「しかし…」
「ええ、大丈夫です。」

 こらこらカズマ、そこでぐーすか寝てるんじゃないですよ。

 翌日

「ゲオルグ=ベルン、
 イーエルモン=ヤマーチ、
 ホーリオ=モーケス、
 カラナム=カズージ、
 ホルスト=ヒターチ、
 マルノ=マキタ。
 君たちは、この金を持って近隣所領の市場で小麦を中心に食料を買い集めてくれ。」

 若者を代表してゲオルグが手を上げた。
「お屋形さま、食料と申しましても。」
「まずは、小麦、大麦、ライムギ。食料とは芋、かぼちゃ、それからりんごなど。塩は忘れるな。」
「つまり、軍隊の糧秣のように考えればいいのですか?」
「そうだ、兵站ととっていい。行動食がほしい。」
「かしこまりました。」
「所領の食料事情が傾くようなことのないよう、気をつけろ。このマジックバッグは時止めだ、時間は気にするな。」

「うげえ、ものすごい財産だ。」
 ホーリオはうなった。
「持ち逃げされるなんて、考えてないのかね?」
 カズージは、自分のことだと気が付いていない。

 イーエルモンは、カズマに聞いた。
「移動は馬を使ってもよろしいですか?」
「おお、そうそう、ティリスが集めてくれた馬がある。各自、馬具は適当に使ってくれ。」
 ティリスは、野生の馬や、軍隊の厩舎から逃げ出していた馬を見つけて、城の厩につないでくれていた。
「三日で行けるだけ行ってこい。」

 ざざっと整列して、若者たちは二人一組で出かけていった。
 ゴルテスは渋い顔をしている。
「お屋形さま。」
「なんだ?」
 カズマは、手元の書類を眺めている。
「おひとりで何をなさるおつもりでござる。」
「うんまあ、できることはしておくつもりだ。たぶん、おぬしの考えている通りだろうさ。」
「それはしかし…王国が何と言うか。」
「しょうがねえな、これが俺のやり方だ。オシリス女神にも言われているしな。」
(そりゃあ勝手に生きろってやつでしょう!
 これを勝手と言うんですかね?)

「ふはははははは!」

「なんでえ。」
「おもしろうござる。」
「ならけっこうじゃねえか。」
「さよう、拙者・南西部のポーヌ=ラ=ロランド伯爵領にツテがござる、さっそく買い付けに行ってまいりましょう。」
「そうか、ではこのカバンを持っていくがいい、金貨は一〇〇枚でいいか?もっといるか?」
「さよう、一五〇枚で。」
「是非もなし。」
 昨夜作った革袋やかばんは、いっそう役に立ちそうだ。

「アマルトリウス!」
「は~い。」
 気の抜けた返事だ。
「アマルトリウス、南部トゥールーズに行きたい。」
「御意。」
 アマルトリウスは、にこにこと白い歯を見せた。
「いい子だ。」
 カズマは、アマルトリウスの頭をなぜた。

「ティリス!アリスティア!」
「「はい。」」
 横の部屋から二人が入ってきた。
「ティリス、今ある畑に小麦を育てたい、無理はするな一週間でできるようにしてくれ。」
 それを無理って言うんですけどね。
「あればあるだけ・ですね。」
「そうだ、頼めるか?」
「おまかせあれ。」
 ティリスは、胸をはって笑う。

「アリスティア、ワインだ、ブドウだけでなく、イチジク、リンゴ、できるものを片っ端からワインにしろ。」
「かしこまりましてございます。」
「確か、大工が何人かいただろう、そいつらに樽を大量に作らせろ。」
「はい。」
「ラル!」
「おう。」
「樽造りはお前が差配しろ、いいな。」
「わかった。」
「ジャック!マルソー!」
「「おう」」
「ラルを手伝ってやってくれ。」
「御意!」

「マレーネ、エディット。」
「「はい!」」
「お前たちは、肥料の発酵をやれ。」
「「はい!」」

「よし!みんなかかれ!」

 みな一斉に部屋を飛び出してゆく。

「さて、行ってくる。」
「御意。」
 ひとり、ゴルテスがカズマを送り出した。

 城の前でふわりと浮き上がるピンクの幼竜。
「六八〇キロか、二時間半かな?」
「そんなにかけない。一時間で飛ぶ。」
「できるのか?」
「できなきゃ言わない。」
 アマルトリウスは、風の結界を強化する魔法の腕が上がっている。
「わかった、まかせる。」
「うん!」

 南部ガロンヌ川流域に広がる穀倉地帯。
 一面の小金の海。
 そして、緑のじゅうたんが広がる。
「なんだあの緑色は。」
「あれはキャベツだよ。」
「あれがか、すごいな。」
「むこうはジャガイモかな?」
「おお!宝の山だな!」
「おうさ、降りるよ。」
「まかせる。」
 畑の周りには人影はない。

 ばさりと羽根を広げると、全幅一八〇メートル。
 きらきらと輝くピンクの鱗が美しい。
「もっと褒めて!」
 ほっそりとしたシルエットは女性的で優美なラインを描く。
 首に乗っているカズマは、その大きさに蚤のようだ。
 身長は八〇メートル。
 滑空する姿は、まさに鳳凰が空を駆けるようだ。
 空そのものを抱きかかえるように、空気が大きな固まりのように押し寄せる。

 唐突に、その姿が消え、カズマは少女の背中に跨るように乗っている。
 言っちゃあなんだが、間抜けな情景だ。

「ほっとけ!」

 森の上で、姿を変えたアマルトリウスに気づいたものはいない。
 ざざざと、森の木々を縫って二人は着地した。
「ありがとう、アマルトリウス。」
「なんの、お安い御用さ。」
「行くぞ。」

 二人は、連れ立って街道を進んだ。
 トゥールーズの領都は目の前だ。
 城門前には、旅の商人や冒険者でごった返している。

「マゼランのBクラス冒険者?どうしてこんな遠くまで?」
「冒険者だからな、冒険に来たのさ。」
「なるほど…てえ!双竜勲章!伯爵さま?どうしてこんな普通の受付に並んでらっしゃるのですか!」
「あ、いやここしか知らないから。」
「貴族の方はあっちの受付なんですよ。」
「そうか、すまない。」
「いえ、こちらこそ、どうぞお通りください!」
「すまんな。」

 カズマは、アマルトリウスを伴って城門から中にはいった。

「どうしたんだ?」
 受付では先ほどの兵士が震えていた。
「いや…いま通ったのが、伯爵さまだったんだよ。」
「伯爵?ふつうじゃん。」
「普通じゃねえーよ!知ってるか?魔物一万匹を一人でやっつけた男だぞ。」
「ああ、ウワサだろ?そんな大したことじゃなかったんじゃねえの?」
「んなわけあるか、あの連れてた娘、尻尾があったぞ。」
「獣人か?」
「ドラゴニュートだったぞ。」
「うへえ。」

 二人は、市街に入っていく二人を見つめた。

「南国だねえ。」
 カズマは、街路に植わっているパームツリーを見上げた言った。
「そうかい?」
 アマルトリウスは、興味なさげだ。
「市場はどこかな?」
「マルクト広場だろう?あっちだね。」
「おお?あ、天幕が見える。」
「よし、やったね。」
「行ってみよう。」
「うん。」

 二人は、市場が開催されているらしい場所を見つけた。
「おお、あるある。おお、塩もあるぞ。」
「おっちゃん、塩全部おくれ。」
「全部だって?金はあるのか?」
「あるのか?」
 アマルトリウスは、カズマに振り向いて聞く。
「あーるよ~。」
 どっかのひとみたいな返事だな。

「どこまで運ぶんだ?馬車で運んでやるぞ。」
「ああ、大丈夫だこのカバンに入る。」
「へえ~、マジックバッグかい?」
「ああ、そのくらい全部入る。」
「へえ~、ここの裏にも塩は置いてあるんだぜ。」
「ふえ?」
「全部っつったよなあ。」
 おっちゃんは、にやりと笑った。

「へえ~、どのくらいあるんだ?」
「壺にして二十五個あるぞ。」
「よし買った。」
「へ?」
「全部買った!」
「あああ、まいどあり。」
 アマルトリウスの半分くらいの高さの壺が、ずらりと並んでいる。
 一個一〇〇キロは下らない。
 それをひょいひょいとマジックバッグに詰めてしまい、カズマはにっこり笑った。
「すげえ、全部入っちまった。」
「特別製だからな。」
「へえ~。」

 次にジャガイモのブースに向かう。
「かあちゃん!ジャガイモ全部くれ!」
「はあ?なにいってんだよ、このあんちゃん。」
「なんだよ、売れねえってのか?」
「そりゃ売ってやるけどさあ、全部かい?」
「たりめーよ、裏にもあるのか?」
「そりゃ一週間売るつもりだから、積んであるさ。」
「それ、全部買う。」
「ふええ!」
 約二トンのジャガイモを詰める。

「わお!キャベツだよダンナ!」
「おお!すっげえ。」
 隣には緑の山。
「おっちゃん、いくつあるんだ?」
「さてねえ?」
「いくつでもいい、全部くれ。」
「全部かい?」
「なんなら畑ごと買うぞ。」
「畑って…」
「じゃあ、今あるだけくれ、いくらだ。」

 そして、小麦のカマスが積んである一角。
 少なく見積もっても、二〇トンはありそうだ。
「まさか兄ちゃん、うちも全部よこせって言うのか?」
「おうともさ!」
「しかし、こんなに入るのか?そのマジックバッグ。」
「特別製だぞ、屁でもねえよ。」
「そんなことを大きな声でおっしゃっちゃあ、厄介ごとが起きますぜ。」
「そうかい?」
「へえ、ここだって全部が全部平和ってわけじゃねんですよ。」
「ふうん。」

 トゥールーズは、南方らしく開放的な人間が多い。
 一方、天衣無縫なばくち打ちも多いのだ。
 天衣無縫と言えば威勢は好いが、言ってみれば無法者。
 破落戸、やくざ、博徒。
 
 ま、美辞麗句並べたってクズのあつまりさ。

「商売できてて、争いがなければいいところだよな。」
「そう思うかい?」
 横合いから声がかかった。
「貸元がしっかりしてれば、破落戸が粋がることもあんめえ。」
「ふふふ、そりゃそうだ。」
「破落戸がカツアゲしてるのは、貸元が腰抜けだからさ。」
 おつきの下っ端が激高する。
「なんだと小僧。」
「なんだよ、おめんとこの親分は、腰抜けかあ?」
「やろう!」

「俺にコブシ向けたな。」
 がきい!
 手首から上が、明後日の方向を向く。
「あがあああああ」
「おそろしい早業だな。」
「俺のこと、知ってるんじゃないのか?」
「いや、威勢のいいやつが爆買いしてるっていうから見に来たのさ。」
「ほお~。」
「俺の子分と知って、落とし前はどうつける?」

「この町全部ぶっ壊してやろうか?」

 カズマは危険な光を瞳に宿して、相手を見た。
「本気かよ。」
「俺がやると言ったら、必ずやるぞ。」
「俺は、イブ=アズナブールだ。」
「そうか。」
「お名前を教えておくんなさい。」
「親分!」
「黙ってろ!」

「カズマ=ド=マリエナ。」

「うげえ!伯爵!」
「わかったらどっかいけ。」
「へい。」
 アズナブールは踵を返そうとした。
「ああ、アズナブール。」
「へい。」
「子分を」
「は?」

「お前の子分をこっちへ。」
 アズナブールは、腕が折れてひいひい言っている子分を呼んだ。
「ヒール。」
 あっという間に子分の腕は繋がった。
「釣りはとっとけ。」
「へい!」

「明日までに、キャベツ五トンと、小麦二〇トン集めとけ。」
「へいっ!」
「ジャガイモも二〇トンほしいな。」
「…」
「ダンナ、疑うわけじゃねえが。」
「金の心配はするな。」
「へい。」
 アズナブールは、子分を散らしながらその場を離れていった。

「すごいね~若旦那、アズナブールの親分が子ども扱いだ。」
「マリエナ…まりえな…ああ!マリエナ伯爵さま!魔物一万匹!」
「なんだよおまいさん、耳元でわめかないでおくれ。」
「あほう!あの方は魔物一万匹ぶっ殺して双竜勲章もらった、マリエナ伯爵さまだ!」
「「「しええええええ!」」」
 マルシェのおじちゃんおばちゃんは、みんな腰抜かした。
しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...