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第十三話 マレーネちゃんがんばる その②
しおりを挟む交代で見張りをしながら、野営をする。
これだけ晴れていれば、天幕も必要ないだろうから、木の下でマントかぶって寝ることにした。
俺のマントはオークが着てるから、俺は草を刈ってきて、代用してる。
ああ、オークを草で包むと、痛まないのか。
今頃気がついた、俺もアホの仲間だ。
それからライトの魔法を出して周りを照らし、エアカッターで周辺の草を刈りまくった。
「エアカッター!」
ばしゅばしゅばしゅ!
「で、こいつを集めてと…」
ジャックがあきれる。
「おまえ、それはやりすぎじゃないか?」
「草刈りくらいで固いこと言うなよ。」
俺は、ジャックに毒ついた。
オークを包むだけでなく、自分の下にも敷いたら寝心地がよくなったんだよ。
「ほしけりゃ自分で集めろ。」
「お?いいのか?じゃあ俺も敷こう。」
ミシェルもいっしょになって草を集めている。
やっぱ背中がごつごつするのはご遠慮申し上げたい。
キャンプのお約束だよ。
「うん、これはいいな。」
ジャックが口に出すころには、みんなが集まって来た。
知らないうちに、全員が草を集めていた。
「あ~あ。」
まあ、街道わきが綺麗になってよかったね。
「土ボコ~土ボコ~。」
暇な夜の時間を、マレーネは土ボコの練習に使っていた。
ポコポコ
マレーネの前には小さな土ボコがたくさんできている。
「長さを伸ばせ。」
「え?」
「せっかくできた土ボコだ、その長さを長くするんだ。」
「ながさ…」
「こうだ。」
にゅるるるるる
「あ、槍みたいに長くなった。」
「そうだ、それに硬化をかける。」
しゃき~ん
コツコツと叩いてやると、固さがよくわかる。
よく固まった槍は、キンキンと金属音がする。
「こいつを風魔法で持ち上げると…」
ぎゅうううんんん
なんとなく、二十メートルくらいまでは持ち上がる。
ざくー!
地面に突き刺さった。
「すごい!」
「な?風魔法が使えるようになると、便利だろう?」
こくこくと、マレーネはこわれた赤ベコみたいに首を振る。
「すごいです、師匠はいろいろなことができるんですね。」
マレーネはほほを赤くして感激している。
「まあ、全部基礎魔法の応用だ。こうなったらいいなって言うものを、少しずつ形にする。」
「魔法はイメージ、ですね。」
「そうだ、魔力はイメージを形にするために使うんだ。」
「はい。」
その様子を、焚火から見ているレミー。
「なんかさあ、マレーネちゃんはまじめだねえ。」
マルソーが、カップを口に運びながら言う。
「あ?親父を喰わそうと、必死なんだよ。」
ジャックが寝そべっている。
「なんだよ?それ。」
「親父は足ケガして歩くのに杖がいる、母ちゃんは逃げる、必死だったんだろうさ。」
「へえ、苦労してるんだ。」
「ま、隣のミシェルがいなかったら、あいつら飢え死にしてるところだ。」
「なるほどねえ、それで必死だったんだ。」
「ああ、ユフラテを見る目が、ほかの冒険者とぜんぜん違う。」
ジャックも言う。
「そうだな、どうしても冒険者で喰うんだって言う、なんか悲壮な感じがしてたぜ。」
「それに、ユフラテが引っ張られたわけだね。」
「そうなるかな、ああいう子は、ほっとけないやつだからなあ。」
マルソーは楽しそうだ。
「この旅で、あの子はまた伸びるよ。」
「三属性持ちか、成長するまで面倒みる気があれば、儲けもんだよな。」
ジャックのマレーネを見る目も優しい。
マルソーは、ジャックに聞いた。
「ジャック、パーティに入れたいのか?」
「このまま育ったら、あの子・化けるぜ。」
「相棒が、ショボいなあ。」
「だから、ユフラテは無理してでも鍛えてるんじゃないか?」
マルソーは腕を組む。
「そうだな、もう少ししたら、パーティを組んでやってみるか。」
「あれ?今でもパーティなんじゃないの?」
「おいレミー、ユフラテのレベルがEなんて、本気で思ってないよな。」
ジャックもあきれ顔だ。
「へ?」
「あいつは、本当はCクラスだって不思議じゃない実力だぞ。」
「そうなの?」
「そうさ、あいつの魔法を見たろう。初期魔法や生活魔法の威力で、アレだぞ。」
ジャックは、突き刺さった槍を指さす。
マルソーも、うなずいてそっちを見ている。
「あんなことのできるやつが、こんな低層にいるわけがない。忘れ病ってだけで、本当はAクラスなんじゃないか?」
言われてみれば、魔法の腕だけでなく、メイスを自在に操る腕もすごい。
ウサギを一人で持ち上げる腕力も強い。
レミーは、ごくりと生唾を飲んだ。
「じゃあ、目が覚めたらあたしたちの前からいなくなるかも?」
「そうだ、だから俺は焦ってこの旅をしようと思ったんだ。」
マルソーは、真剣な目で土の槍を見ていた。
「教えてもらえることは、全部吸収したい。」
「同感。」
あたしだけかよ!のほほんとしてたのは!
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