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 ――……ん? 一度目? 一度目って何? 日をまたいでいないはずなんだけど……。

「しかし、僕自身が見たもの、君の様子を見ても、君が嘘を言っているようには思えない。そこで、再度ソルテラ家に話を持ちかけたんだ」

「――……話の腰を負って申し訳ないんですが……一度目、とか、再度、とか、どういうことですか?」

 この世界、前世みたいに、メールや電話でひょいっと簡単に長距離のやりとりが出来るような世界じゃなかったと思ったんだけど……。
 しかし、イタリさんはなんてことない、とでも言いたげに説明してくれた。

「確かに現代の通信機では、通話者が両方とも同じ国内に居なければ出来ない。技術的にも、法律的にも。しかし、ヴェスティエ王国とラトソール王国は陸地で繋がっている。中間に人を立てればいいだけのこと」

 いや、いいだけのこと、と言われても……。
 つまり、ソルテラの屋敷に直接出向いた人と、国境ぎりぎりでそのソルテラ家に直接交渉した人とイタリさんを繋いだ伝言役がいる、ってこと? よくそこまでするな……。

「ちなみに、ソルテラ家の屋敷に向かわせた人ってどこから来たんです?」

 わたしがソルテラ家の屋敷から、ミステラなんとかに向かうまで、馬車で何日もかかった。半日でどうこう出来る距離じゃない。直接会ったわけじゃなくて、対話も通信機器で済ませたんだろうか?
 ――なんて、思っていたのだが。

「世の中、知らなくてもいいことがある。むしろ、知らない方がいいことだらけだ」

 そんな風にはぐらかされてしまった。
 それってつまり、この国の騎士団と連絡を取るような人がソルテラ家の近くに居た、ってことだよね。もしかして、その、スパイ的な何某で、ラトソールのいたるところにそんな人がいたり、する、のか……?

 ――……。
 深く考えるのは辞めよう。

「すみません、続きをどうぞ」

 わたしが思った疑問を全てぶつけていったら、知らなくていいことまで知って、消されてしまいそうな気配がした。イタリさんのことだから、はぐらかしてはくれると思うけど、なんの力も後ろ盾もないのだから、余計なことは聞かないに限る。
 イタリさんも、賢明な判断だ、とでも言いたげな表情で続きを話してくれた。

「一度目は騎士団がアルシャ・ソルテラらしき人物を保護した、ということで、確認を取ったが、二度目は家名――ウィンスキーの名前を出した。君が死んだアルシャ嬢になりすました村娘だということになったら、君は何者でもなくなり、この家に置いておけないどころか、不審者として国から追い出さないといけなくなるからな」

 その言葉に、わたしはごくりと唾を飲み込んだ。追い出されるのは非常に困る。言葉が通じないあの国に戻ったところで、行き倒れになってそのまま死ぬ未来しか想像出来ない。
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