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「……どこ、ここ――ひゃあ! ごめんなさい!」
最初のうちは転移酔いで頭がぼーっとしていて気が付かなかったのだが、よく見れば、机の上に載っていた。しかも、食事中の人がいる場所だ。慌てて降り、周りを観察してみれば、どうやら食堂かなにかであることが分かる。
少し埃っぽく、丸机は木製、椅子は酒樽の使い古し。公爵令嬢として生きていれば、一生縁がなかったであろう、俗っぽい庶民の店だ。
わたしが乗ってしまった場所で食事をしていたのであろう、丸眼鏡をかけた男性は、驚きつつも眉をひそめていたが、わたしと一緒に転移してきた青年を見るなり、表情をぱっと明るくさせた。
『アル!』
なんだか生きていることを喜んでいる様子ではあるが……。
困りながらも、わたしは周りの声に耳を傾けた。ざわざわとしている声は、一人として聞き取れない。声が小さいからではなく、使用言語が違うのだ。
エンティパイア帝国では、東西南北それから帝中都で計五種の言葉を使用している。
将来王妃になるのであればすべての言語を理解せねばと五つすべて覚えているが、周りの言葉はそのどれにも当てはまらない。
周囲の衣装も違うし、ちらと壁に貼られたメニューを盗み見てもよくわからない文字で書かれている。
ここは本当にエンティパイアではない。 先ほどまでは死の恐怖におびえていたが、今度は別の不安が湧き上がってくる。言葉も習慣も全く分からない地で、果たしてわたしは生きていけるのだろうか?
「――オ嬢さん」
妙にイントネーションのおかしい帝中都エンティ語に、私は振り返った。
先ほどの丸眼鏡の男性だ。わたしは思わず彼の手を取った。
「貴方! エンティ語が分かるの!? ここはどこ? エンティパイアじゃないのよね?」
思わずまくしたててしまったが、丸眼鏡の彼は聞き取れたようだ。理解に時間を要したようで、すぐには返事が返ってこなかったが。
「仕事デ、たまにグルトンへ、行クから」
「グルトン!」
グルトンと言えば、エンティパイア帝国の東のほうにある、エンティパイア三大美食国の一つにあげられる、小さな国だ。
なるほど、帝中都エンティ語のイントネーションがおかしいのは、東エンティ語のなまりが尾を引いているのかもしれない。
言われてみれば、東方から帝中都に出稼ぎに来る使用人が、帝中都エンティ語に慣れないうちに出る発音に似ていた。
わたしが帝中都エンティ語で謝罪したから、合わせてくれているのだろうか。
「東エンティ語のが分かるのかしら?」
「! ああ。そちらのほうが助かるよ」
東エンティ語ならば、おかしなところもなく、流暢に話すようだ。
「わたし、フィオディーナと申すものですわ。お先に名前をうかがってもよくて?」
「フィオディーナって……まさか」
すでに公表されていた婚約者だったからか、彼は驚いた表情を浮かべる。公爵令嬢がこんなところにいるなんて、思いもしなかったのだろう。
「もう、オヴントーラの名は語れませんわ。口調も崩してよくってよ。わたし、ただの平民になったのだから」
そう言えば、婚約破棄や家名はく奪を察してくれたようだ。ぎこちなくも、もうそれ以上は触れてこない。
「え、ええと……。僕はマルシ。君が助けてくれたのはアルベルト。ここはランスベルヒ島。エンティパイアの領地ではないよ」
その言葉を聞いて、少しだけ安心する。とりあえず、エンティパイアの外に、生きたままたどり着くことができたようだ。
「ランスベルヒはどこの国にも属さない、冒険者たちの島だ。独特のルールをもって秩序が保たれてて、法律らしい法律も、王様も貴族もいない。一応、ギルド長がいて、彼が一番偉いけれど、腕っぷしで勝てないから言うことを聞いている、みたいなところがある。実力社会なんだ」
とにかく強者の言うことを聞いておけ、と言うことらしい。ここでは冒険者ランクが絶対にして唯一の、序列を決めるものなのだとか。
「――ところで、アルベルトから聞いたんだけど、魔術が使えるって本当? ……って、オヴントーラのご令嬢なら使えるか」
「……もう、オヴントーラではないので、その呼び方はやめてくださいまし」
わたしがそう言うと、丸眼鏡の彼――マルシは、苦笑いを浮かべた。
「ごめんごめん、気を付ける。……実はさ、ギルドの倉庫に術具がしまい込まれてるんだけど、修理できたりしないかな?」
「見てみないとなんとも……簡単なものなら直せると思いますけれど」
術具とは、魔術の知識や魔力がない人間でも、魔術の恩恵を受けられるように作った道具だ。
本来、魔術を使うにはいろいろと知識が必要なのだが、術具があれば仕掛け一つで魔術のような現象を起こすことができる。
知識としていろいろ勉強してきたので、ゼンマイをひねれば明かりをともすランプや、ボタン一つで火を起こすコンロなど。
日常使いされるものなら扱える。
けれど、冒険者御用達の武器類は自信がない。初心者用のものや、簡単な作りなら話は別だが、有名鍛冶師の一点品、みたいなものは流石に無理だ。
「それでもいいから、見るだけ見て、直せそうなら直してほしい」
ギルド長からせっつかれてるんだけど僕には全然わからなくて、とマルシは困ったように笑う。
「出会ってすぐでこんな話しちゃって悪いんだけど、報酬は……そうだね、とりあえず一週間分の宿でどう? ご飯が二食付く宿。……あー、お貴族様だと、二食じゃ足りないかな?」
むしろ、これから路頭に迷うはずだったのだ。一週間でもあればありがたい。今後の方針を決める余裕があるのはうれしい話だ。
「今更わがままは言えませんわ。食べれるだけありがたいですもの。倉庫とやらに案内してくださる?」
今後の仕事につながらないかしら、と思いながら、わたしはマルシの後についていくのだった。
最初のうちは転移酔いで頭がぼーっとしていて気が付かなかったのだが、よく見れば、机の上に載っていた。しかも、食事中の人がいる場所だ。慌てて降り、周りを観察してみれば、どうやら食堂かなにかであることが分かる。
少し埃っぽく、丸机は木製、椅子は酒樽の使い古し。公爵令嬢として生きていれば、一生縁がなかったであろう、俗っぽい庶民の店だ。
わたしが乗ってしまった場所で食事をしていたのであろう、丸眼鏡をかけた男性は、驚きつつも眉をひそめていたが、わたしと一緒に転移してきた青年を見るなり、表情をぱっと明るくさせた。
『アル!』
なんだか生きていることを喜んでいる様子ではあるが……。
困りながらも、わたしは周りの声に耳を傾けた。ざわざわとしている声は、一人として聞き取れない。声が小さいからではなく、使用言語が違うのだ。
エンティパイア帝国では、東西南北それから帝中都で計五種の言葉を使用している。
将来王妃になるのであればすべての言語を理解せねばと五つすべて覚えているが、周りの言葉はそのどれにも当てはまらない。
周囲の衣装も違うし、ちらと壁に貼られたメニューを盗み見てもよくわからない文字で書かれている。
ここは本当にエンティパイアではない。 先ほどまでは死の恐怖におびえていたが、今度は別の不安が湧き上がってくる。言葉も習慣も全く分からない地で、果たしてわたしは生きていけるのだろうか?
「――オ嬢さん」
妙にイントネーションのおかしい帝中都エンティ語に、私は振り返った。
先ほどの丸眼鏡の男性だ。わたしは思わず彼の手を取った。
「貴方! エンティ語が分かるの!? ここはどこ? エンティパイアじゃないのよね?」
思わずまくしたててしまったが、丸眼鏡の彼は聞き取れたようだ。理解に時間を要したようで、すぐには返事が返ってこなかったが。
「仕事デ、たまにグルトンへ、行クから」
「グルトン!」
グルトンと言えば、エンティパイア帝国の東のほうにある、エンティパイア三大美食国の一つにあげられる、小さな国だ。
なるほど、帝中都エンティ語のイントネーションがおかしいのは、東エンティ語のなまりが尾を引いているのかもしれない。
言われてみれば、東方から帝中都に出稼ぎに来る使用人が、帝中都エンティ語に慣れないうちに出る発音に似ていた。
わたしが帝中都エンティ語で謝罪したから、合わせてくれているのだろうか。
「東エンティ語のが分かるのかしら?」
「! ああ。そちらのほうが助かるよ」
東エンティ語ならば、おかしなところもなく、流暢に話すようだ。
「わたし、フィオディーナと申すものですわ。お先に名前をうかがってもよくて?」
「フィオディーナって……まさか」
すでに公表されていた婚約者だったからか、彼は驚いた表情を浮かべる。公爵令嬢がこんなところにいるなんて、思いもしなかったのだろう。
「もう、オヴントーラの名は語れませんわ。口調も崩してよくってよ。わたし、ただの平民になったのだから」
そう言えば、婚約破棄や家名はく奪を察してくれたようだ。ぎこちなくも、もうそれ以上は触れてこない。
「え、ええと……。僕はマルシ。君が助けてくれたのはアルベルト。ここはランスベルヒ島。エンティパイアの領地ではないよ」
その言葉を聞いて、少しだけ安心する。とりあえず、エンティパイアの外に、生きたままたどり着くことができたようだ。
「ランスベルヒはどこの国にも属さない、冒険者たちの島だ。独特のルールをもって秩序が保たれてて、法律らしい法律も、王様も貴族もいない。一応、ギルド長がいて、彼が一番偉いけれど、腕っぷしで勝てないから言うことを聞いている、みたいなところがある。実力社会なんだ」
とにかく強者の言うことを聞いておけ、と言うことらしい。ここでは冒険者ランクが絶対にして唯一の、序列を決めるものなのだとか。
「――ところで、アルベルトから聞いたんだけど、魔術が使えるって本当? ……って、オヴントーラのご令嬢なら使えるか」
「……もう、オヴントーラではないので、その呼び方はやめてくださいまし」
わたしがそう言うと、丸眼鏡の彼――マルシは、苦笑いを浮かべた。
「ごめんごめん、気を付ける。……実はさ、ギルドの倉庫に術具がしまい込まれてるんだけど、修理できたりしないかな?」
「見てみないとなんとも……簡単なものなら直せると思いますけれど」
術具とは、魔術の知識や魔力がない人間でも、魔術の恩恵を受けられるように作った道具だ。
本来、魔術を使うにはいろいろと知識が必要なのだが、術具があれば仕掛け一つで魔術のような現象を起こすことができる。
知識としていろいろ勉強してきたので、ゼンマイをひねれば明かりをともすランプや、ボタン一つで火を起こすコンロなど。
日常使いされるものなら扱える。
けれど、冒険者御用達の武器類は自信がない。初心者用のものや、簡単な作りなら話は別だが、有名鍛冶師の一点品、みたいなものは流石に無理だ。
「それでもいいから、見るだけ見て、直せそうなら直してほしい」
ギルド長からせっつかれてるんだけど僕には全然わからなくて、とマルシは困ったように笑う。
「出会ってすぐでこんな話しちゃって悪いんだけど、報酬は……そうだね、とりあえず一週間分の宿でどう? ご飯が二食付く宿。……あー、お貴族様だと、二食じゃ足りないかな?」
むしろ、これから路頭に迷うはずだったのだ。一週間でもあればありがたい。今後の方針を決める余裕があるのはうれしい話だ。
「今更わがままは言えませんわ。食べれるだけありがたいですもの。倉庫とやらに案内してくださる?」
今後の仕事につながらないかしら、と思いながら、わたしはマルシの後についていくのだった。
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