上 下
50 / 115

45話 4人目の婚約者

しおりを挟む
傭兵国軍は風牙と風竜族とラフィの参戦により、その戦線を瓦解した

総司令官以下幹部達は捕虜となり連行される

竜王国軍3千に対し傭兵国4万2千の戦いは竜王国軍の勝利で終わった

しかし、その被害は両国とも甚大である

竜王国軍死者1300人

傭兵国軍死者24000人

捕虜17000人

傭兵国軍で生き延び自国の地を踏めた者は1000人しかいなかった



彼らは口々にこう語る

「竜王国は神龍に守られた国だ」と

「再び侵略すれば傭兵国は終わる」と

また、竜王国でも生き残った兵士は口々に語る

「神竜騎士が救ってくれた」と

「我々は過ちを犯してはならない」と

色々な想いが交錯する中、王都では歓喜の声が木霊していた・・・・・一人を除いて



「やっちまった~・・・・・・」



そう声を出すのは・・・・・俺です

自重し無くなった結果がこれだった

竜王国国民の間で俺は神竜騎士と呼ばれ始めた

これ以上余計なもんは要らないんだ

だが、そんな俺の願いは届かない

何故なら今、俺がいるのは謁見の間で王族以下全員が片膝をつき頭を下げ平伏している状況なのだ

・・・・・・何故こうなった



竜王国は王と風竜の長が同列の扱いなのだが、神竜騎士はその上に立つそうだ

更に、風竜族以下4種族を従え、友ではなく主と呼ばれ、救国をなした俺は竜王国にて神竜騎士に認定されてしまった

竜王国にて唯一、王の上に立つ者、それが神竜騎士である

尚、国のトップ以上の地位を置く国は神聖国、神樹国、竜王国に加え意外にも傭兵国にも何かしらある事が判明した

4つしかないうちの2つに認定されるとか、何かおかしいだろ!?

本気で神様~ズの関与を疑いたくなってきた

神聖国は神聖騎士、竜王国は神竜騎士、神樹国は精霊王と言うらしい

傭兵国にはその制度はあるが過去に一度も誕生してないので誰も知らないとの事だ



そんな話を聞いていたのだが、落ち着かないので何処かの部屋で全員座って話をしようと提案すると「慈悲に感謝を」とか言われる始末である

そして、もう一つの懸念が王女である

もの凄く熱い視線が注がれているのは、きっと気のせいじゃないと思う

確実にフラグが立ってしまったのだろう・・・・・・・・・婚約者フラグが

疲れ切ってはいるが事態は解決してはいないので別室にて話をする



次は腐竜共と謎の魔物の討伐と汚染区域の浄化についてだ

話を聞くと腐竜に関してはどうにかなると思われたので現状維持

謎の魔物と汚染区域についてだが、とある懸念が俺の中にあった

汚染区域が広がり始めたのは今から10年前

元々、汚染区域はあったのだが竜と共に在りし国なので、実害が然程なければ共存しようと監視だけしていたそうだ



だが、突如として汚染区域が一夜で3倍になってしまった

事態を重く見た王は軍を派遣するが当時は帝国とも争っており大軍は送れなかったそうだ

それが今の汚染拡大に拍車をかけた

拡大を食い止めようと奮戦するも、徐々に広がり国力はじりじりと低下

傭兵国で傭兵を雇い入れるも国庫が一度尽き欠け雇用を断念

断念したのが2年前で1年前に傭兵国は王が代替わりした事も分かった



傭兵国は武力と知力によって王が決められる大会があるそうで、5~10年の間隔で行われる

開きがあるのは国民の総意が必要であり最短でも5年間退位する事は無いし、現国王も大会に参加できるので再度王位に就くこともある

敵総司令官は前王の息子であると言っており、調べて裏付けもとれたので事実と判断

王位簒奪の為に、国の意向を無視して派兵を決めたと吐露したそうだ

雇用できなくなった時点で目を付けられていたのだと王は自らの失態に退位すると言ったが止めた



王であれ人である

失敗は誰にでもあるので今後同じ失敗をしなければ良いだけの話だ

王はこの言葉を受け入れるも臣下に是非を問うが退位は認められなかった

そもそも竜王国現王は8年前に即位した

前王は自ら汚染区域と帝国戦との前線指揮に辺り、病に倒れた前王が存命中に現王が即位し後を継いだそうだ

それから1年後に帝国から戦争終結に向けての書状が届けられ、竜王国から奪った領土返還と賠償金を支払い、相互不可侵条約を締結して今に至る

それから今日に至るまで、汚染区域の拡大阻止と鎮静化に向けて動いていたが、何の成果も得られず未だ少しづつ拡大している



ここまで話を聞いた俺は”10年前から急激に〟と言う言葉に、ここ最近の事件を当てはめていた

スタンビートも転生して10年以上経ってから

灰色のワイバーンに神界で聞いた神喰いの力の拡散

間違いなく世界に散らばった神喰いの悪意のみの力が浸食し始めたのだろう

恐らく、謎の魔物もその一つだと何処か確信できた



しかし、ここで問題が2つある

一つはアンデット系ではあるが何の魔物かわからない事

もう一つは明らかに今までと力の使い方が違うのでどの程度の強さかだ



偵察しようにも汚染区域は侵入した途端に浸食されてしまう

地上が無理なら空は?と聞くが浸食速度は落ちるがやはり浸食され、発見前に命を落とすそうだ

既に風竜達が実行して命を落としたらしい

完全に手詰まりである

何か策を考えるべく今日は一度お開きにしようという所で王女が手を上げる

何か妙案が?と思うが次の発言で俺の感じた予感が現実となった



「妙案も出ないので、私の議題を取り上げて欲しいです」



「シャラナよ。その議題は重要かね?」



「はい、お父様。私の今後と竜王国の未来についてです」



「竜王国の未来か。で、その議題とは?」



「私と神竜騎士様の結婚です!」



静寂が辺りを包む

俺の心中は「いきなり何を言ってくれちゃってるの!?」だ

臣下達は唖然茫然し、王は口を開けたまま放心し、王妃は「あらあらまぁまぁ」と言い、王子は「素晴らしい提案だ妹よ!」と歓喜している

ある意味カオスである

だが、そんな中で王は娘に対し問う



「一つだけ確認だ。お前は国の為にそう言っているのか?それとも・・・・」



「無粋ですお父様。国の為もあるのは認めますが、一番は私が結婚したいからです。他は二の次です。国の為と言っても米粒程度。他は米粒以下です」



「ふ、ふははは!そうかそうか!米粒程度か!なら文句は言わん好きにしろ!」



そう言うと笑顔になる王女

王妃は「幸せになるのですよ」と言い、王は「今は婚約だけだぞ」と戒め、王子は「何処に惹かれたんだい?」と一家団欒になったが



「ちょぉぉぉぉっとまてぇぇぇぇぇ!!」



この声にこちらへと向き直る

窓からは俺の大声を聞いたのか「主様!どうされました!?」と風牙が血相変えてやってきたりした

王は「何か問題であるのかな?」と王ではなく父親になっており俺に新たな問題が浮上した



俺は現在超必死である

婚約者3人の瞳の光が無くなった笑顔を思い浮かべると身震いするほどだ

何が何でも潰さなければ!と画策するも全て失敗に終わる

ここからの話は事の顛末と、俺の死亡フラグ?への道だ



「何か問題でも?じゃないでしょう!どこの馬ともわからんのに!」



「どこの馬ともわからん相手に神竜騎士など認めんよ」



「うぐっ!そ、それとこれとは別問題だ!父親なら相手の素性が分からないと安心できないでしょう!?」



「君は変な所で抜けているな。グラフィエル・フィン・クロノアス君」



フルネームを言われた瞬間に一気に警戒度を最大まで引き上げる



「フルネームを名乗った覚えは無いんですが」



「そう警戒しないでくれ。風竜様方から聞いたんだよ」



「風ぅ牙ぁぁぁ・・・」



「あ、主様!我は主様に懸念を持たれぬようにと」



「はぁぁぁ・・・で、どこまで聞いたんですか?」



「神聖国教皇とランシェス王国の王族と懇意なことまでは」



「もっと具体的に!」



「婚約者が3人おり、その3人が国の重要人物だと聞いてるよ」



「・・・・・・他には?」



「どちらかの国の貴族なのも知ってるよ。ああ、国を2つ救ったのも知ってる」



「全部竜達からですか?」



「変な所で鋭いな君は。我が国にも冒険者ギルドはある。運営には口を出さないが情報はこちらにも来る」



「ほとんど知ってんじゃねぇか!」



「問い合わせたのは君が砦に行ってる時だよ」



「最悪だ・・・・。ほぼもろバレじゃねぇか。どっちの国の所属かわからないって言っておきながら既に知ってるんでしょう?」



「流石はSSと言ったところかな?それとも竜の主かな?ランシェス王国が君の国だね?」



「正解。はぁぁ・・」



「で、うちの娘は貰ってくれるんだろうね?成人して直ぐに式で構わないから」



「・・・・どこまで知っている?」



「?・・何の話だ?君は今13だろう?娘が成人する時に君は17のはずだ。何かおかしなことでもあるのかね?」



「あ~なんでもないです。どうやら本気で知らないようだし」



「で、どうなんだい?」



「・・・・・わかった!わかりました!娘さんと婚約させて頂きます!でも条件があります」



「で、その条件とは?」



「国の利益に関しては利用しようとしたら潰します。シャラナ王女に関しては「ラナって呼んで下さい」・・・・・ラナに関しては神竜騎士様って呼ばないで欲しいのと料理の腕位ですかね」



「じゃあグラフィエル様で」



「近しい者はラフィと呼ぶからそれで。後は料理の腕だけど」



「それに関しては問題ないですよ。母である私がきっちりと教えましたので。国に来て初めて食べた食事ですが、実は娘が作ったんですよ」



「はい?」



「練習がてら作らせてみました。娘は初めて会った時から恋をしてたみたいなので。お口に合ったでしょう?」



「・・・・・普通に美味かった」



「なら問題ないですね。あ、婚約発表はどうしましょう?やはり事態を収拾してから早急に」



「え~、それに関しては色々あるので神聖国へ話の出来る人が来てもらわないとどうにもなりませんね」



「では、私が赴きましょう。王は暫く動けませんしね。ついでに子供二人も連れて観光でもしましょう」



「汚染対策の話がどうしてこうなった・・・・・」



「主様、お気を確かに」



「風牙は話した側だよなぁ?後でたぁっぷりOSIOKIしてやる!」



「あ、主様!話したのは全ての竜ですぞ!」



「部下の失敗は上司が被らないと(にっこり)」



「平に~、平にご容赦を~」



こんな感じで俺は敗北し、4人目の婚約者が誕生した

尚、風牙には当然、OSIOKIを敢行した
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜
ファンタジー
 単身赴任中の派遣SE、遊佐尚斗は、ある日目が覚めると森の中に。  直感と感覚で現実世界での人生が終わり異世界に転生したことを知ると、元々異世界ものと呼ばれるジャンルが好きだった尚斗は、それで知り得たことを元に異世界もの定番のチートがあること、若返りしていることが分かり、今度こそ悔いの無いようこの異世界で第二の人生を歩むことを決意。  転生した世界には、尚斗の他にも既に転生、転移、召喚されている人がおり、この世界では総じて『漂流者』と呼ばれていた。  流れ着いたばかりの尚斗は運良くこの世界の人達に受け入れられて、異世界もので憧れていた冒険者としてやっていくことを決める。  そこで3人の獣人の姫達─シータ、マール、アーネと出会い、冒険者パーティーを組む事になったが、何故か事を起こす度周りに異性が増えていき…。  本人の意志とは無関係で勝手にハーレムメンバーとして増えていく異性達(現在31.5人)とあれやこれやありながら冒険者として異世界を過ごしていく日常(稀にエッチとシリアス含む)を綴るお話です。 ※横書きベースで書いているので、縦読みにするとおかしな部分もあるかと思いますがご容赦を。 ※纏めて書いたものを話数分割しているので、違和感を覚える部分もあるかと思いますがご容赦を(一話4000〜6000文字程度)。 ※基本的にのんびりまったり進行です(会話率6割程度)。 ※小説家になろう様に同タイトルで投稿しています。

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

処理中です...