53 / 54
番外編 かわいい人.11
しおりを挟む「し、しぬ……っ!」
空がうっすらと明らんできたころ。
許容値を超える快楽にティフォは息もたえだえになっていた。
『さすがに死なれたら困る……』
アキラは心底名残惜しそうにしながらも、ぬぽっとペニスを引き抜いた。
『あ、じゃあ、俺に入れるのは?』
いいことを思いついたとばかりに触手の上で腰を揺らすアキラに、ティフォは断固として拒否をした。
「ダメです! 今はまだ絶対にしません! アキラの体はまだまだ成長途中なので、無理はさせられませんからね!」
『ちぇ。分かったよ。あー早く育たないかな』
アキラのそのあまりにもしょんぼりとした姿に、ティフォは触手一本動かせないと思うくらいへとへとになりながらも、甘やかしてしまうのだった。
「……えっと、その、……口でなら、いい、よ? だって、そ、そのままじゃ苦しいでしょ?」
あとは何がどうなったのか、ティフォは覚えていなかった。
口内も性感帯に育てられていたティフォが、喉奥を突くアキラのペニスに気持ちよくなってしまい、意識を手放してしまったからだ。
◇◇◇
目が覚めたティフォは、まずはきれいに整えられた体をみて、年甲斐もなくあられもない夢をみたもんだと思った。
しかし隣で眠るアキラと、腹のなかに感じる卵、それから途切れ途切れの昨夜の記憶を思いだし、恥ずかしさにもだえながら目を閉じた。
そうやっていくら現実逃避をしていても、理性が白旗を振って撤退した昨夜の事実は変わらない。
まさかこの年でまた卵を産む日が来るとは……。
ティフォには確実に受精した確信があるだけに、お腹を撫でながら、ジェイクはともかく他の子どもたちにどう報告しようかと頭を悩ませた。
ティフォはアキラを起こさないようにベッドを降りて、外へ出た。
体が重い。
一日無理をすると二週間は回復しないようになったのはいつからだったか。昨夜のアレは、いったい何日引きずるのだろう。出産と育児には何よりも体力が必要なのに。
これからは適度に運動をしようと決意して見上げた空は、底なしに明るかった。
太陽はとっくに昼の顔をして、今日も南の島を照らしてやるぞと空高く浮かんでいる。
ティフォに気付いた犬が、触手にじゃれながら隣を歩く。
ティフォは白い砂浜をまっすぐに歩いた。
目の前には遠浅の青く透き通った海が広がり、白い細かな泡を立てて波が押し寄せては引いていく。
この海のどこかに、ムームが眠っている。
ティフォはムームの最期を思い出し、目を閉じた。
まぶたの裏で、太陽の光を弾く海面の瞬きがちらちらと浮かんでは消えていく。
アキラの人生が一遍の曇りもなく幸せに満ちたものでありますように。
ティフォは心のなかでそう願った。
どれくらいそうしていたのか、犬が急にワンと一つ吠えて走りだした。
ティフォが顔を上げると、あわてたように走るアキラが遠くに見える。
『あんなに愛しあった朝に起きて隣にいないとか、あんまりだ!』
それなりの距離を走ったあとでも息をきらせることなく、頬を膨らませているかわいいアキラ。
ティフォはその眩しいほどの若さに目を細めた。
「うん。アキラより長生きするために、健康に気をつけようかと思って。ちょっとしウォーキング、かな?」
『や、もちろん元気に長生きしてもらわなきゃ困るけどさ。今度は俺が看取ってやるつもりだぜ? もう一人にしないって約束したからな』
「ありがと。でもやっぱりアキラに寂しい思いはさせられないもん。アキラが心配で死ぬに死ねない気がする。
でもそうだな。今度は、アキラのあとを追いかけて逝くことを許して欲しい、かな」
『ははは。一緒にぽっくり逝けるように、頑張ってみようか』
「ふふふ。せーので、ぽっくり?」
『そうそう。俺たちくらい愛しあってれば、なんか頑張ればいけそうじゃない?』
「あ、あ、あい……んんっ、そ、ソウダネ?」
『え? さんざん淫らなことをしておいて、これくらいで赤面しちゃうの? 誤魔化すのが下手すぎてかわいいな。愛しあってるでしよ、俺たち!』
「うう。だってムームはそんなこというタイプじゃなかったじゃん。免疫がないんだよ!」
『若者はこれくらい挨拶感覚で普通にいうんだぜ。大丈夫おじいちゃん。俺にときめきすぎて心臓止まってない? ちゃんと息してる?』
「もう! もうっ! いじわるっ!」
『ははは! ごめんごめん。かわいくって、ついね。うんと優しくする。
でもティフォってば、俺にいじめられるのも好きだからなぁ。好きな人に求められれば、応えたいしなぁ』
にやにやと笑うアキラに、ティフォはムキになって主張した。
「ち、違いますっ! いじめられるのが好きなわけじゃないもん! アキラが好きなだけだもん!」
『だもんって……っ! 年を重ねるたびにかわいさが増してない? ねぇ、今からベッドに戻って、もう一回子作りエッチしよ?』
「本当に死んじゃう……っ!」
『あはは! それは困るなぁ。
でも、たとえ死んでもさ、何度でも生まれかわってまた出会いたいな。何も覚えてなくても、ティフォがどんな姿形でも、どれだけ年が離れていても、性別や種族を超えて、きっと好きになるよ』
「うん。私も。きっと、絶対に好きになる」
二人は寄り添い、触手と手をつないで静かに海を眺めた。
そこにたしかな永遠を感じながら。
3
お気に入りに追加
625
あなたにおすすめの小説
【R18】翡翠の鎖
環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。
※R18描写あり→*
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
臆病者のエトセトラ
渡辺 佐倉
BL
非王道学園、美形見た目×親衛隊員平凡です
サイトで2017年1月に書いたやつです。
ケータイ小説的王道学園の脇役CPの話です。
受けがややオタクの平凡設定です。
ネタバレ注意になりますが、受けキャラに影が薄いという設定はありません。勝手に個人が思い込んでるだけです。周りからの評価はごく平均的な人間というのが受けです。
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
デリバる天国
うしお
BL
この世の中、なんでも家から注文できて、手軽に家まで届けてもらえる。
食事に衣服、娯楽に医療、エトセトラ、エトセトラ。
ダメなものをあげる方が楽なくらい、世界は便利に満ちている。
チェンジはNG、キャストはおまかせ、指名料ゼロの安心価格。
その代わりやってみたいあれこれを、必ず叶えるミラクルサービス。
男同士専門のデリバリーヘルス『デリバリ天国』。
そこで働くキャストな男のお話。
※なんちゃってデリヘルなお話です。
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
公開凌辱される話まとめ
たみしげ
BL
BLすけべ小説です。
・性奴隷を飼う街
元敵兵を性奴隷として飼っている街の話です。
・玩具でアナルを焦らされる話
猫じゃらし型の玩具を開発済アナルに挿れられて啼かされる話です。
悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜
ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……?
※残酷な描写あり
⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。
ムーンライトノベルズ からの転載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる