情報屋オメガは計算高く運命と番う

003．情報屋オメガの悪事

　高等部一年の時に学園の寮に入寮した僕。
　もちろん愛用のパソコンも持ち込む訳で。
　そうしてネットを繋ぐのは学園で提供する回線。
　ってことで……ひょっとしたら、と、ワルイコトを考えちゃったわけよ。ちょちょいってね。
　
　そしてできちゃったんだな。うかつな理事の一人のＩＤとパスワードで。学園のシステムへのアクセスが。

　だからさぁ。類推できるようなパスワードの設定はやめましょうって国の偉い人も言っているでしょう？
　たまたま知ってしまったんだよね。その理事が愛してやまない孫が、僕の同級生だってことを。そうして、ごにょごにょ──。あんまり詳しく言わないでおくけれど、幾つか試しているうちに、あっさりパスワードがわかってしまったんだ。

　学園のシステムも問題だった。
　だって、パスワードの入力を何回かしく・・ったらロックさせるような機能になっていなかったのだもの。

　理事だからさ、定期考査のテスト問題が入っているフォルダにはアクセスする権限はなかったけれど、個人情報である、生徒や職員名簿へのアクセスは可能だった。生徒には開示されていない、計画段階の学園主催のイベント情報などへもアクセス出来てしまった。

　僕自身はその情報を見たからって、特に悪用するつもりもなかったけれど、一般生徒が窺い知れない情報を知っているという優越感は満たされた。

　でもまあ、悪事というものは長続き出来ないもので──。

　高等部二年生になったある日、学園の機密事項のうち、それなりに楽しめる学園の防犯カメラ映像へのアクセスをしていたんだ。

　生徒の実態ってのは楽しいね。キミたち、その場所に防犯カメラが設置されているなんて知らなかったでしょ？　最近人気の転校生君。とんだビッチじゃん。昨日同じ場所で生徒会の副会長とちゅうしていたよね？　でも、今日のお相手は無口な書記ですか、ソウデスカ。

　ガチャリ。寮の玄関のドアが開かれた音がする。
　にわかに部屋の中が騒がしくなったので、僕が慌てて立ち上がってパソコンルーム兼寝室の入り口を見たら……。

　そこに立っていたのは、美魔女って言葉が当てはまる超絶美人だった。くるりと巻かれたミディアムロングの巻き髪は艶のある茶髪。顔にはほんのり色がついた眼鏡。あ、これって、最近開発された、かけるだけでチークが要らない眼鏡ってやつだ。その眼鏡の奥には理知的な切れ長の二重。メガネがずり落ちるなんてことなさそうなすっきり整った鼻梁。身体のラインがわかるパンツスタイルのスーツには、真っ赤なヒールパンプス。って、寮の部屋は土足厳禁なんですけど？　ちゃんと玄関で靴を脱いでくださいよ。

　超絶美人の勝ち気に上がる口角が開く。

「君、不正アクセスしていたでしょう？」

　うん、確かにしておりましたよ。不正アクセス。現行犯逮捕ですか？