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第一楽章 prelude
決意とカードとメッセージと
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あー! 感情の起伏が激しい!!
うだうだ悩んだり、イライラしたり。
こういうのほんと嫌だな。
とはいえ何をどうしていいのか解らないよ。
そういう時ってやっぱり_
人の意見が聞きたくならない?
なるよね? たとえそれが根拠のない話でも、
自分にとって都合がよければ信じたくなるよね?
嘘でもノブユキと付き合えるって言ってほしい。
意識的なのか無意識なのか、
占いで有名な月見里やまなしさんを私は見ていた。
駄目だ、彼女だけは駄目。
彼女の評判は私も聞いている。
それだけ確実に当ててくる。
それで否定的な言葉なんて出てきたら、
私は立ち直れない。
「なに?」
駄目、駄目だってば。
なのに彼女から目が離せない。
「場所を変えましょう?」
そういうと彼女は先に歩いて行ってしまう。
彼女は私が付いてくることを、
確認もせずに歩き出す。
おそらく私が付いてくることは_
解っているのだろう。
そして、本当は私が何に悩んでいて、
何を言いたいのかも……
解っているのだろう。
ちなみに特化コースは理論の学科授業を除けば、
各自の実技時間が多い。
私の職業柄……というのは表向きの理由だけど、
私達は特化コースにいる。
少し薄暗い階段を二人で黙って登る。
きっと屋上に向かうのだろう。
少し重い音を立てて屋上の扉が開く。
途端にさわやかな風と明るい光が私達を包む。
あたりに誰かが居ることも確認せず、
こちらに振り替える月見里やまなしさん_
それは死の宣告にも思えた。
「結論から言うと未来を視ることはできても_
それを貴方に伝えることはしないわ」
ああ……この人は未来を見ることができるんだ。
先回りして答えが返ってくる。
それが彼女の占いのやり方なんだ。
「例えば貴方が今日家に帰ったら死ぬと言ったら_
貴方は家に帰るかしら?」
(月見里やまなしさんを信じるならば)答えはNoだ。
「そう、つまり貴方に未来を教えた時点で、
未来は変わる可能性があるの」
未来は確定ではないって事だよね?
それってノブユキと付き合える未来も_
あるってことだよね?
「だから私はレールが変わることに関しては_
観ない・告げない・聞かない事にしているの。」
言ってる意味は解る。
例えば私がオーディション通過できるか_
視てもらったとして、
通過できると言われれば努力を怠けて_
結果駄目になるかも知れないし、
できないと言われたら努力することを_
辞めてしまうかもしれない。
それでも月見里やまなしさんの占いは評判がある。
つまり……何か別の「みかた」なら_
してもらえるということだ。
「どうしても……
というのならそのリボンを代金としてもらうわ」
月見里さんは私の左手首を指差して、
意地悪く笑った。
あの表情……このリボンが、
ただのリボンでないことを知っている?
いや……仮にも私も歌姫と呼ばれる存在だもの、
私の身に着けているものは、
それだけで価値があるという事だろうか?
「じゃあサイン一枚で助言なら……します」
悪くない取引だと思う。
というより考えてみればこの状況すらも_
彼女には視えているのだ。
つまり最初から教えてくれるし、
その気がなければ私に声をかけなければいいのだ。
サイン一枚素早く書きあげると_
彼女は針を取りだす。
「これに自分の血を」
私は迷わず指に刺した。
後で思い返せばそれが_
罠である可能性もあったのよね。
もちろんそんなことはなかったのだけれど。
月見里さんは受け取った針で宙に何かを書くと、
現れる光るタロット? たくさんの枚数がある……
それこそ空を覆い尽くさん限りの……
「好きな枚数選んで」
彼女の目は真剣だった。
このカードの向こうに私の求めるものがある……
この途方もない枚数の中から_
選ばなければいけない?
「ちなみに私には何枚あるか、
何が書いてあるかはわからないわ_
それは今の貴方による、
貴方のためだけのカードなの」
ああ……それが答えなんだ。
私は目を閉じる。
私の求めるもの、望んでいること……
貴方にしてあげられること……
そしてゆっくりと目を開ける。
あれだけあったカードは一枚になっていた。
だから私はカードを視るのを辞める。
「本当に視なくてよかったの?」
月見里さんは解っているのだろうけど、
一応聞いたのだろう。
「じゃあ助言を一つ。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず_
という言葉があってね……」
だから私は笑って言えたんだ。
「未来のことは教えないんじゃなかったの?」
ちょっと意地悪だったかな?
「これは助言だから、
結果は視えていても応援するのはまた別でしょ?」
ちょっと言い回しが気になったけど、
だ……大丈夫だよね?
うだうだ悩んだり、イライラしたり。
こういうのほんと嫌だな。
とはいえ何をどうしていいのか解らないよ。
そういう時ってやっぱり_
人の意見が聞きたくならない?
なるよね? たとえそれが根拠のない話でも、
自分にとって都合がよければ信じたくなるよね?
嘘でもノブユキと付き合えるって言ってほしい。
意識的なのか無意識なのか、
占いで有名な月見里やまなしさんを私は見ていた。
駄目だ、彼女だけは駄目。
彼女の評判は私も聞いている。
それだけ確実に当ててくる。
それで否定的な言葉なんて出てきたら、
私は立ち直れない。
「なに?」
駄目、駄目だってば。
なのに彼女から目が離せない。
「場所を変えましょう?」
そういうと彼女は先に歩いて行ってしまう。
彼女は私が付いてくることを、
確認もせずに歩き出す。
おそらく私が付いてくることは_
解っているのだろう。
そして、本当は私が何に悩んでいて、
何を言いたいのかも……
解っているのだろう。
ちなみに特化コースは理論の学科授業を除けば、
各自の実技時間が多い。
私の職業柄……というのは表向きの理由だけど、
私達は特化コースにいる。
少し薄暗い階段を二人で黙って登る。
きっと屋上に向かうのだろう。
少し重い音を立てて屋上の扉が開く。
途端にさわやかな風と明るい光が私達を包む。
あたりに誰かが居ることも確認せず、
こちらに振り替える月見里やまなしさん_
それは死の宣告にも思えた。
「結論から言うと未来を視ることはできても_
それを貴方に伝えることはしないわ」
ああ……この人は未来を見ることができるんだ。
先回りして答えが返ってくる。
それが彼女の占いのやり方なんだ。
「例えば貴方が今日家に帰ったら死ぬと言ったら_
貴方は家に帰るかしら?」
(月見里やまなしさんを信じるならば)答えはNoだ。
「そう、つまり貴方に未来を教えた時点で、
未来は変わる可能性があるの」
未来は確定ではないって事だよね?
それってノブユキと付き合える未来も_
あるってことだよね?
「だから私はレールが変わることに関しては_
観ない・告げない・聞かない事にしているの。」
言ってる意味は解る。
例えば私がオーディション通過できるか_
視てもらったとして、
通過できると言われれば努力を怠けて_
結果駄目になるかも知れないし、
できないと言われたら努力することを_
辞めてしまうかもしれない。
それでも月見里やまなしさんの占いは評判がある。
つまり……何か別の「みかた」なら_
してもらえるということだ。
「どうしても……
というのならそのリボンを代金としてもらうわ」
月見里さんは私の左手首を指差して、
意地悪く笑った。
あの表情……このリボンが、
ただのリボンでないことを知っている?
いや……仮にも私も歌姫と呼ばれる存在だもの、
私の身に着けているものは、
それだけで価値があるという事だろうか?
「じゃあサイン一枚で助言なら……します」
悪くない取引だと思う。
というより考えてみればこの状況すらも_
彼女には視えているのだ。
つまり最初から教えてくれるし、
その気がなければ私に声をかけなければいいのだ。
サイン一枚素早く書きあげると_
彼女は針を取りだす。
「これに自分の血を」
私は迷わず指に刺した。
後で思い返せばそれが_
罠である可能性もあったのよね。
もちろんそんなことはなかったのだけれど。
月見里さんは受け取った針で宙に何かを書くと、
現れる光るタロット? たくさんの枚数がある……
それこそ空を覆い尽くさん限りの……
「好きな枚数選んで」
彼女の目は真剣だった。
このカードの向こうに私の求めるものがある……
この途方もない枚数の中から_
選ばなければいけない?
「ちなみに私には何枚あるか、
何が書いてあるかはわからないわ_
それは今の貴方による、
貴方のためだけのカードなの」
ああ……それが答えなんだ。
私は目を閉じる。
私の求めるもの、望んでいること……
貴方にしてあげられること……
そしてゆっくりと目を開ける。
あれだけあったカードは一枚になっていた。
だから私はカードを視るのを辞める。
「本当に視なくてよかったの?」
月見里さんは解っているのだろうけど、
一応聞いたのだろう。
「じゃあ助言を一つ。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず_
という言葉があってね……」
だから私は笑って言えたんだ。
「未来のことは教えないんじゃなかったの?」
ちょっと意地悪だったかな?
「これは助言だから、
結果は視えていても応援するのはまた別でしょ?」
ちょっと言い回しが気になったけど、
だ……大丈夫だよね?
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