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どったんばったん大騒ぎ

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「ジェイク様!!」
エレンが保健室に飛び込んだのは放課後のこと
たまたま訓練所を通りかかった教師がに一人で倒れているジェイクを見つけて慌てて運んで来たらしい。
ぐったりと横になったジェイクは苦しげに唸っている。
汗をびっしょりとかいて熱に浮かされているようだ。
「何故このような…今朝はいつもとお変わりなかったのに」
ジェイクが訓練所で倒れていて、保健室で寝ていると聞いてエレンが思い浮かべたのは魔力切れだ。
魔法を打ちすぎると貧血のような症状を起こして倒れることもある。
しかし、魔力切れなら酷くてもポーションを飲むか少し眠れば回復する。
エレンの記憶で、このような症状になる魔力切れは知らない。
「残念ながら、ここでは薬も機材も足りません。先程、王室に使いの者を走らせましたのですぐに迎えが来るかと」
ジェイクの汗を丁寧に拭き取りながら保険医が言うと、窓の外が騒がしくなった。
慌てて窓を開けると校庭に青い鱗の美しいリヴァイアサンが降り立っていた。
生徒達は怯え、逃げ惑っている。
エレンは慌てて窓から飛び出した。
淑女として有るまじき行為だが何人かの生徒がリヴァイアサンに向かって魔法を放とうとしているのが見えたのだ。
「おやめください!その方は第二王子、フィリップ様の使い魔です!攻撃すれば王子の所有物を傷付けたと罪に問われますよ!!」
声を張り上げるとなんとか攻撃の手を下ろしてくれた。
全力で走り大声を出したため流石に息が切れた。
「おお、ジェイクのつがいではないか。感謝する、騒がせてすまぬな」
「お久しぶりです、ルシエル様。すぐにジェイク様をお連れ致します」
リヴァイアサン、ルシエルの背中にジェイクを寝かせて支えながらエレンも乗る。
ルシエルが飛び立つと風の抵抗も揺れも全くなく快適だ。
「学園には後程、私から説明致しますのでご安心ください」
「世話をかけるな。フィリップの奴が考え無しに誰でもいいから迎えに行けと言いおってな…若い連中が戦準備を始めるものだから慌てて人化の術を使う暇もなかった」
ルシエルは伝説のリヴァイアサン、強い魔力を持っているため人の姿に化ける事も出来るのだが十分程時間がかかる。
つまり、十分を惜しまなければならない程フィリップ王子の使い魔達が怒り狂っていたという事だ。

王宮に通されたエレンは保健室のベッドの3倍はフカフカなベッドに寝かされたジェイクの側についていた。
未だに苦しげで、目を覚まさない。
ちなみにルシエルはもう一度使い魔達を押さえてくると精霊界に戻った。
メイド達が寝巻きに着替えさせて汗を拭ってくれたが、全く汗が止まらない。
肌は熱い。火照っているというより内側から血液が燃えているようだ。
「ジェイク様…」

普段、王宮の中はとても静かだ。
メイドの一人一人にいたるまでマナーが行き届き無駄な音が最低限に抑えられているため、たくさんの使用人がいるが足音もほとんど聞こえない。
しかし、今、王宮の廊下がドタバタぎゃあぎゃあととても騒がしい。
バンッと喧しく扉が開かれた。

「ジェイク!大丈夫か?熱?風邪?お前の好きなプリンとゼリー買ってきたからな!あとホットレモンとココアいれるから…あ、エレンちゃんこんにちは」
「エレンちゃん、お疲れ様~とりあえず、ジェイクを悪く言ってそうな生徒の名前三人くらい教えて?教師でもいいんだけど…証拠は適当に見つけるから安心してね~ちょっと吊るだけだし大丈夫大丈夫」

第一王子レオンハルトと、第二王子フィリップである

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