8 / 11
フィーナ・アルファドル
第7話 開戦
しおりを挟む
「皆様、お忙しい中お集まり頂き誠にありがとうございます。本日は当店にようこそいらっしゃいました」
レノードが恭しく礼をするのは波の音が響く美しいレストラン…の地下にあるVIPルーム。
部屋は星空をイメージした美しい壁紙に大理石のテーブル。並べられた色とりどりのオードブルにワイングラスには香り高い上質なワイン。
VIPルームに集められたのはベークラ侯爵にレィフット王国からの使者数人とその護衛達。
レノードが一週間かけて口説き落とし、彼等は完全にレノードが自分達の味方だと思い込んでいた。
柔らかなソファに身を委ねて部屋を興味深く眺めている。
「地下室と聞きましたので薄暗いイメージがありましたが、あえて夜空をモチーフにするとはレノード様は芸術のセンスもありますなぁ」
「その壁の絵画も素晴らしい!壁を覆い尽くす程の大きさだが儚げで美しい」
「胸が踊りますなぁ、少年の頃は憧れました。地下の秘密基地にね」
無邪気にはしゃぐ姿はレノードには少しも愛らしく見えなかった。
フィーナに協力を頼んでから一週間、レノードは彼等に豪華な食事と上質な酒、そして甘い言葉をたっぷりと与えてきた。
そして引き出したのは苦々しい黒い陰謀。
リリアのテストにビーツをけしかけたのはベークラ侯爵とレィフットの審査員が手引きした計画だった。
ビーツが婚約破棄の件を忘れていたことを利用してベークラ侯爵がけしかけて審査員が立ち入り禁止だった校内に手引きした。
そしてうやむやにされたテストは不合格扱い。審査員は元々、テストの答案を酷い点数に改ざんしてリリアはもうテストを受けさせる価値もない愚かな女であったという報告をする予定だったのだ。
しかし、レノードの存在を知ってしまった。
リリアの親友の兄で、リリアを溺愛している独身の男。
それはとても使いやすそうな道具にでも見えたのだろう。
審査員はあろう事かレノードに、自分達に協力すればリリアを妻にする口実を作ってやると宣ってきた。
早い話が無理矢理にでも既成事実を作ってリリアをふしだらな女だという証拠を握らせてくれれば自分達が代わりに慰謝料を払いリリアと王太子との婚約を破棄させてやろうと。
レノードはキレた。
完全にキレた。
この人間の皮を被った汚物共には牢屋も勿体ない。
屑は屑入れに、きちんと処分しなければならないと。
この美しいVIPルームは、そのために作らせたダストシュートだ。
こいつらのためだけに作った屑入れだ。
「皆様、縁もたけなわ…本日はスペシャルゲストをお招きしております」
「ほう?誰かね?」
「それはそれは美しく、高貴な生まれの皆様に相応しい眩いお方です」
すっかり酒と美食に溺れた者達は女を用意したものと思ったか下品にも手を叩き口笛を吹いて急かした。
「では、お入りください」
レノード以外の全員が扉の方を向いたが、それはピクリとも動かず
開いたのは反対側の絵画。
壁いっぱいの額縁が開いた向こう側には…
「ご紹介致します、私の愛妹フィーナ・アルファドル…そして
レィフット王国王太子、アルフレッド殿下とその近衛兵団一同様でございます。皆様、大きな拍手でお迎えください!」
レノードが恭しく礼をするのは波の音が響く美しいレストラン…の地下にあるVIPルーム。
部屋は星空をイメージした美しい壁紙に大理石のテーブル。並べられた色とりどりのオードブルにワイングラスには香り高い上質なワイン。
VIPルームに集められたのはベークラ侯爵にレィフット王国からの使者数人とその護衛達。
レノードが一週間かけて口説き落とし、彼等は完全にレノードが自分達の味方だと思い込んでいた。
柔らかなソファに身を委ねて部屋を興味深く眺めている。
「地下室と聞きましたので薄暗いイメージがありましたが、あえて夜空をモチーフにするとはレノード様は芸術のセンスもありますなぁ」
「その壁の絵画も素晴らしい!壁を覆い尽くす程の大きさだが儚げで美しい」
「胸が踊りますなぁ、少年の頃は憧れました。地下の秘密基地にね」
無邪気にはしゃぐ姿はレノードには少しも愛らしく見えなかった。
フィーナに協力を頼んでから一週間、レノードは彼等に豪華な食事と上質な酒、そして甘い言葉をたっぷりと与えてきた。
そして引き出したのは苦々しい黒い陰謀。
リリアのテストにビーツをけしかけたのはベークラ侯爵とレィフットの審査員が手引きした計画だった。
ビーツが婚約破棄の件を忘れていたことを利用してベークラ侯爵がけしかけて審査員が立ち入り禁止だった校内に手引きした。
そしてうやむやにされたテストは不合格扱い。審査員は元々、テストの答案を酷い点数に改ざんしてリリアはもうテストを受けさせる価値もない愚かな女であったという報告をする予定だったのだ。
しかし、レノードの存在を知ってしまった。
リリアの親友の兄で、リリアを溺愛している独身の男。
それはとても使いやすそうな道具にでも見えたのだろう。
審査員はあろう事かレノードに、自分達に協力すればリリアを妻にする口実を作ってやると宣ってきた。
早い話が無理矢理にでも既成事実を作ってリリアをふしだらな女だという証拠を握らせてくれれば自分達が代わりに慰謝料を払いリリアと王太子との婚約を破棄させてやろうと。
レノードはキレた。
完全にキレた。
この人間の皮を被った汚物共には牢屋も勿体ない。
屑は屑入れに、きちんと処分しなければならないと。
この美しいVIPルームは、そのために作らせたダストシュートだ。
こいつらのためだけに作った屑入れだ。
「皆様、縁もたけなわ…本日はスペシャルゲストをお招きしております」
「ほう?誰かね?」
「それはそれは美しく、高貴な生まれの皆様に相応しい眩いお方です」
すっかり酒と美食に溺れた者達は女を用意したものと思ったか下品にも手を叩き口笛を吹いて急かした。
「では、お入りください」
レノード以外の全員が扉の方を向いたが、それはピクリとも動かず
開いたのは反対側の絵画。
壁いっぱいの額縁が開いた向こう側には…
「ご紹介致します、私の愛妹フィーナ・アルファドル…そして
レィフット王国王太子、アルフレッド殿下とその近衛兵団一同様でございます。皆様、大きな拍手でお迎えください!」
89
お気に入りに追加
2,351
あなたにおすすめの小説
婚約破棄は計画的に。
秋月一花
恋愛
「アイリーン、貴様との婚約を――」
「破棄するのですね、かしこまりました。喜んで同意致します」
私、アイリーンは転生者だ。愛読していた恋愛小説の悪役令嬢として転生した。とはいえ、悪役令嬢らしい活躍はしていない。していないけど、原作の強制力か、パーティー会場で婚約破棄を宣言されそうになった。
……正直こっちから願い下げだから、婚約破棄、喜んで同意致します!
公爵令嬢と短気な王子様
ひろたひかる
恋愛
「貴様が彼女を迫害していたことはわかっている!」婚約者である王子から糾弾されている公爵令嬢サンドラ。けれど私、彼女とは初対面ですわ?★★★断罪イベントっぽいですが、乙女ゲー、婚約破棄物ではありません。一応恋愛カテゴリですが、コメディ色強いです。「小説家になろう」にも同内容で投稿しています。
婚約破棄の『めでたしめでたし』物語
サイトウさん
恋愛
必ず『その後は、国は栄え、2人は平和に暮らしました。めでたし、めでたし』で終わる乙女ゲームの世界に転生した主人公。
この物語は本当に『めでたしめでたし』で終わるのか!?
プロローグ、前編、中篇、後編の4話構成です。
貴族社会の恋愛話の為、恋愛要素は薄めです。ご期待している方はご注意下さい。
私の通り名をお忘れ?婚約者破棄なんて死にたいの?
naturalsoft
恋愛
初めまして。
私はシオン・マーダー公爵令嬢です。この国の第4王子の婚約者でもあります。
そして私の趣味は礼儀を知らぬクズどもを血祭りにする事なのです♪
この国をより良い国にする為に、この手を赤く染めましょう!
そう、虐殺姫(マーダープリンセス)の名の下に!
そんな事も分からないから婚約破棄になるんです。仕方無いですよね?
ノ木瀬 優
恋愛
事あるごとに人前で私を追及するリチャード殿下。
「私は何もしておりません! 信じてください!」
婚約者を信じられなかった者の末路は……
婚約破棄イベントが壊れた!
秋月一花
恋愛
学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。
――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!
……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない!
「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」
おかしい、おかしい。絶対におかしい!
国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん!
2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる