女海賊グレイスの大冒険

第三章：海の追撃

ドローム侯爵の財産をすべて奪い去り、グレイスと彼女の海賊団は「ブラック・シー・サーペント号」で再び海へと戻った。風を受け、船は順調に進んでいたが、グレイスの頭の中には次なる標的がちらついていた。

「姉御、今回も上出来でしたね。あの侯爵の面白い顔ったら、忘れられませんよ。」
フランが楽しそうに笑いながら、船長室に入ってきた。

「まったくだね。だが、あいつらが黙っているとも思えないよ。きっと何かしらの手を打ってくるだろう。」

グレイスはワインのグラスを傾けながら、冷静に言葉を発した。彼女は成功に酔うことなく、次の動きを常に考えていた。侯爵や他の貴族たちは財産を失っただけでなく、名誉にも大きな傷を負っている。そのため、報復の手が伸びてくるのは時間の問題だった。

「それでも、私たちは海の上だ。簡単には捕まらないよ。まあ、少しばかり慎重に動こうじゃないか。」

「姉御がそう言うなら、大丈夫ですね。」

フランは信頼しきった様子で頷いたが、グレイスは船の速度を上げるよう命じた。追っ手が来るとしたら、それに備えておくに越したことはない。


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その数時間後、彼女の警戒心は現実のものとなった。船員の一人が上空を見上げ、叫び声を上げた。

「船だ！後ろから軍艦が近づいてくる！」

グレイスは急いでデッキに上がり、遠くの水平線を見た。大きな帆をはためかせた軍艦が、確かに彼らを追いかけているのが確認できた。すぐに、その軍艦が王国のものであることに気づく。

「やっぱり来たか……。だが、こっちも準備はできてるさ。」

グレイスは冷静だった。彼女の海賊団はこれまで何度も危険な追跡を逃れてきた経験がある。軍艦を振り切るための策もいくつか用意されている。

「全員、戦闘準備！無理に戦う気はないけど、追いつかれそうならこちらも容赦しないよ！」

船員たちは一斉に動き始め、船の速度をさらに上げるため、風向きを利用しながら帆を調整した。しかし、軍艦も容易には引き下がらず、次第に距離が縮まっていく。

「やれやれ、しつこいもんだね……。」

グレイスはデッキの端に立ち、冷静に状況を見つめていた。軍艦が接近する中、彼女はふと笑みを浮かべた。

「彼らがここまで本気なら、こっちも少し遊んでやろうじゃないか。」

彼女はすぐさま、船員たちに新しい指示を出した。

「帆を下ろして、風を使わずに進む。相手を油断させるんだ。そして、奴らが近づいてきたところで、反転してぶつける！」

船員たちは彼女の指示に従い、ブラック・シー・サーペント号の帆を一気に下ろした。風を失った船は、急に速度を落とし、まるで逃げ場がないかのように見えた。軍艦の乗組員たちは、これで勝利を確信し、接近を続けた。

「今だ！全速力で反転！」

グレイスの号令とともに、ブラック・シー・サーペント号は突然帆を広げ、風を一気に受けて反転した。慌てる軍艦の船員たちが対応しきれない間に、海賊船は猛スピードで突撃を開始した。

「姉御、ぶつかりますぜ！」

「いいさ、そのまま突っ込め！」

海賊船は軍艦の船体に激突し、衝撃音が海面に響き渡った。瞬く間に海賊たちは軍艦に乗り込み、戦闘が始まった。グレイスは敵兵を次々に倒しながら、軍艦の甲板へと進んでいく。


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戦いが終わるころには、軍艦は制圧され、グレイスの勝利が確定していた。軍艦の指揮官は降伏し、海賊たちは軍艦から貴重な物資を奪い取った。

「全員、素早く片付けろ。ここに長居は無用だ。」

グレイスは戦利品をまとめながら、次の指示を出した。彼女にとって、戦いそのものよりも、次の冒険が待ち遠しかった。海はまだまだ広く、彼女の野望も尽きることはない。

「姉御、次はどこに向かいます？」

フランが興奮気味に尋ねる。

「そうだね、今度はもっと面白い場所に行こうか。まだ奪ってないものが、たくさん残ってるからね。」

グレイスは満足そうに笑い、次の目標に思いを巡らせながら、船を進めた。