婚約破棄、そして私の再生

第1幕

第1幕 第1章: 幸せな日々

春の柔らかな日差しが東京の街を包み込む中、真奈美はオフィスの窓際で微笑んでいた。出版社での編集者としての日々は忙しくも充実しており、新しい本の企画や著者との打ち合わせに追われる毎日。しかし、そんな彼女の心を最も満たしていたのは、婚約者の拓也との穏やかな時間だった。

真奈美と拓也は大学時代に出会った。共通の友人を通じて知り合った二人は、すぐに意気投合し、自然と距離を縮めていった。拓也の誠実さと優しさに惹かれ、二人は付き合い始めてから数年が経った。周囲からも「理想のカップル」と評されるほど、彼らの関係は順調だった。

ある土曜日の午後、真奈美は拓也と一緒にカフェでランチを楽しんでいた。窓から差し込む春の光が二人を優しく照らし、店内には穏やかな音楽が流れている。

「真奈美、最近のプロジェクトはどう？」拓也が興味深そうに尋ねる。

「順調よ。新しい作家とのコラボが決まって、これから楽しみ！」真奈美は目を輝かせて答えた。

「それは素晴らしいね。君のセンス、本当に尊敬してるよ。」拓也の言葉に真奈美は嬉しそうに微笑んだ。二人の会話は自然と弾み、時間を忘れるほどだった。

その日の夕方、真奈美は家に帰ると、拓也からのサプライズプレゼントが待っていた。美しいダイヤの指輪と共に、拓也からのプロポーズの手紙だった。

「真奈美、君と過ごす時間が僕にとって何よりも大切だ。これからもずっと一緒に歩んでいきたい。結婚してください。」

真奈美は涙を浮かべながら手紙を読み、心からの「はい」を拓也に伝えた。二人は抱き合い、これから始まる新しい人生への期待に胸を膨らませた。

結婚準備も順調に進み、友人や家族からの祝福も絶えなかった。玲子や友人たちとのパーティーでは、笑い声が絶えず、真奈美の幸せな姿が輝いて見えた。

「本当に幸せだね、真奈美。」玲子が優しく言葉をかける。

「うん、拓也と一緒ならどんなことも乗り越えられる気がする。」真奈美は心からの笑顔を見せた。

しかし、そんな幸せな日々の裏で、真奈美は徐々に拓也の変化に気づき始めていた。仕事の忙しさを理由に、二人の時間が減少し、拓也の連絡も少なくなっていく。真奈美はその変化を気に留めつつも、忙しさを理解しようと努めていた。

ある晩、真奈美が帰宅すると、拓也が疲れた表情でソファに座っていた。

「今日は遅くなってごめんね。ミーティングが長引いてしまって。」

真奈美は優しく微笑みながら拓也の肩に手を置いた。「大丈夫よ。ゆっくり休んで。」

だが、その夜から、二人の間には微妙な距離が生まれ始めていた。真奈美は心の奥で、何かが変わりつつあることを感じ取っていた。しかし、まだ具体的な理由や原因は掴めず、不安と期待が交錯する日々が続いていた。


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