聖女追放～傍若無人聖女の陰謀～

第2章：フィスカーの策略

カリーナが聖女としての地位に慣れ始め、毎日人々に癒しと助けを提供する中、フィスカーは流刑を避けるための策を練っていた。彼女の顔には決意がみなぎっており、何としてでも自分の地位を奪い返すという執念が彼女を突き動かしていた。

「私が流刑だなんて、冗談じゃないわ！」フィスカーは鏡に映る自分に向かって唾を吐くように叫んだ。彼女は、この屈辱的な判決が自分に下されたのは、すべてカリーナのせいだと信じて疑わなかった。聖女という地位は、本来彼女が持つべきものだと考えていたからである。

そこで彼女は、自分が流刑される前にカリーナに罪を着せ、彼女の代わりに流刑地へ送るための陰謀を企てることにした。フィスカーは手下である数名の貴族や官僚たちを密かに呼び集め、計画を練り始めた。

「お前たち、準備はできているわね？」彼女は冷たい視線で部下たちを見下ろしながら問いかけた。

「はい、フィスカー様。準備は整っています。」忠実な部下の一人がそう答えると、フィスカーは満足げにうなずいた。

「よろしい。まずは偽の証拠を作り上げ、カリーナが国家に対して反逆を企てているという噂を広めるのよ。」彼女は微笑みを浮かべながら、詳細な指示を出した。その計画には、多くの偽の書類や証拠、そして証人までも用意されていた。フィスカーは自分の影響力を使って、宮廷内でカリーナを追い落とすための策略を一つ一つ練り上げていった。

数日後、宮廷内でカリーナが国家に反逆しようとしているという噂が広まり始めた。最初は一部の者たちだけがその噂を耳にしていたが、次第にそれは王族や高官たちの耳にも届くようになり、王国中に広がっていった。人々は驚き、動揺し、カリーナが本当に裏切り者なのか疑問を抱き始めた。

「まさか、カリーナ様がそんなことを……」
「いや、あのような優しい方がそんなことをするはずがない……だが、証拠があると聞く。」

噂に戸惑いながらも、次第に人々はその話を信じるようになっていった。フィスカーの計画は見事に成功し、彼女の陰謀が着々と進行していたのである。

その頃、カリーナは何も知らずに、日々の務めに励んでいた。彼女は周囲からの視線が変わり始めていることには気づいていたが、それが自分に向けられた疑惑の目だとは思いも寄らなかった。聖女としての使命を全うすることに集中していたため、陰謀の兆しに気付くことができなかったのである。

やがて、王宮からの召喚状が彼女に届けられた。その文面には、彼女に対して重大な嫌疑がかかっていること、王の前で釈明を行うように命じられていることが記されていた。カリーナは驚きと不安に包まれたが、それでも真実があれば無実が証明されると信じ、王宮へと向かった。

王の前に立つカリーナは、冷たい視線を浴びながらも毅然とした態度で釈明に臨んだ。しかし、フィスカーが巧妙に仕組んだ証拠や偽証により、次第に彼女の立場は不利なものとなっていった。

「カリーナ・ラーダ、お前は国家に反逆し、我が王国を危険に陥れようとしたことについて、何か弁解があるか？」
王は厳しい目でカリーナを見つめ、冷たく問いかけた。

「陛下、私は無実です。私が王国を裏切るなど、そんなことは絶対にありません……！」カリーナは必死に訴えかけたが、王の目には疑念が深まるばかりだった。周囲の者たちも、次々と偽の証言を行い、カリーナを追い詰めることに加担していた。

最終的に、王はカリーナに対して判決を下すことを決意した。

「カリーナ・ラーダ、お前の罪状は重大であり、これを許すことはできぬ。よって、汝を聖女の地位から剥奪し、流刑地へ送ることとする。」

カリーナはその場で膝をつき、涙を流しながら、神に祈りを捧げた。自分がなぜこのような仕打ちを受けるのか理解できず、ただ神に助けを求めるしかなかった。だが、周囲の冷たい視線と、彼女を連行する兵士たちの手が彼女を拘束し、流刑地へと向かう道が開かれた。

一方で、フィスカーはその様子を陰から見つめ、満足げな微笑みを浮かべていた。「これで、ようやくあの女の代わりに私が聖女の地位を取り戻すことができる……」

こうして、カリーナはフィスカーの謀略により、無実の罪で流刑地へと送られることになった。しかし、彼女の心はまだ折れてはいなかった。流刑地へ向かう途中、カリーナは誓いを立てた。

「私は決して諦めない。神様、どうかこの試練に耐え、真実が明らかになる日が来るようにお導きください……」

カリーナの信仰と決意は、まだ消えることなく彼女の胸に宿っていた。