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プロローグ

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青い海が広がるヴォークス領の港町バウリオ。その海の向こうに、黒い帆を掲げた一隻の船が現れた。船首には巨大な宝石が輝き、その姿はどこか凶々しさを漂わせていた。その名は「エメラルド」。悪名高い海賊船であり、どんなに固い警戒を敷いても、その姿を捕らえた者はいないと言われている。

「お頭、あの商会の船を見つけました!」

船上で、元騎士たちの一人が興奮気味に叫んだ。彼の指差す先には、商会の船が悠々と航行しているのが見える。エメラルド号のクルーたちは、その瞬間、全員が一斉に動き始めた。鋭い剣が鞘から抜かれ、攻撃の準備が整えられる。

「ヤロウ共、行くぞ!あの船を全て奪い取れ!書類も忘れるなよ!」

船の頭、エメラルドが号令をかけた。彼女の声には迷いがなく、船員たちはその命令に従って迅速に動き出した。彼女の緑色の目がキラリと光り、全てを見通すかのような鋭い視線を船の方に向ける。

「おう!」と元騎士たちは声を揃えて叫び、その後、船が商会の船へと迫っていく。元々は伯爵に仕えていた騎士たちだったが、今ではエメラルドを新たなリーダーとして慕い、彼女の指揮のもと、海賊として活動していた。彼らはただの略奪者ではなく、特定の商会の船を狙い、その中でも密輸行為に手を染めている船だけを標的にしていた。

その商会――実は、ヴォークス伯爵が背後で操っている組織であり、伯爵自身も密輸行為に関与していたのだ。しかし、伯爵はその事実を知られていないと思い込んでいた。

「奪い取れ!全てだ!」

エメラルドの号令が響き渡り、元騎士たちは商会の船へと飛び移った。彼らは船上の乗組員を次々と制圧し、貨物や書類を奪い取っていく。その中には、伯爵が密輸の指揮を執っている証拠も含まれていた。

「お頭、これでやりましたね!」

「ふん、まだ終わりじゃない。もっと証拠が必要だ」

エメラルドの声には冷徹な意志が込められていた。彼女はただの略奪者ではなく、正義のために戦う者としての誇りを胸に秘めていた。海賊の仮面の裏に隠された真実、それはまだ誰も知らない。

バウリオの静かな夜、海の彼方で繰り広げられるエメラルドの戦いは、やがて港町全体を巻き込む大きな波紋を引き起こすことになる。



青い海と白い砂浜が広がるバウリオの港町。リリスは、その美しい風景に心を奪われ、無邪気な笑顔を浮かべて砂浜を駆け回っていた。普段は見慣れない広大な海に、リリスは夢中になっていたのだ。彼女の後を追うように、マリーが必死に呼びかける。

「お嬢様、危ないです!走ると転んでしまいますよ!」マリーの心配をよそに、リリスは楽しそうに走り続けた。

しかし、次の瞬間、リリスは砂浜につまずいて、ばたんと転んでしまった。砂に埋もれた姿が一瞬見えなくなり、マリーは驚いて駆け寄ろうとしたが、リリスは満面の笑顔で転がり始めた。その笑顔は、まるで何事もなかったかのように輝いていた。笑い声が聞こえてこないのが不思議なくらいだ。

「お嬢様…」 その事実にマリーは思わず表情を曇らせ、彼女が楽しそうに笑っているのに、なぜか少し切ない気持ちになった。そのとき、後頭部にぽんと軽く何かが当たった。

「マリー、お嬢様の前でそんな顔をしない!」クラリスがリリスに駆け寄りながら、マリーをたしなめた。「お嬢様、ドレスが汚れますから、少し落ち着いてくださいね。」クラリスは優しく言いながら、リリスを助け起こした。

リリスは笑顔を浮かべたまま、クラリスの手を握り返した。その姿に、クラリスも微笑みを返しながら、リリスの無邪気さに心を癒されるのを感じた。

その後、三人は市場へと足を運んだ。市場は港町ならではの活気に満ちており、リリスの目は輝くような珍しい魚介類に釘付けになった。特にリリスが目を奪われたのは、とても大きなエビだった。リリスはそのエビを指さして、何か言いたげな表情を見せた。

クラリスがそれに気づいて、少し困ったように言った。「お嬢様、そのエビはエビフライには向いていないんですよ…」リリスの顔が一瞬「えええ?」という表情に変わる。

「でも、大丈夫です。お嬢様にはもっと美味しいエビフライをお作りしますから、そんなに絶望しないでくださいね」と、クラリスが優しく続けた。

リリスは一瞬戸惑ったが、クラリスの言葉に安心したように微笑みを浮かべた。その様子を見ていたマリーは、クラリスがリリスと普通に意志疎通していることに感心しつつも、自分もいつかそんな風にできるのかと不安に感じていた。

やがて、三人は市場を後にして、再び砂浜に戻った。リリスは海の風景に心を奪われながら、再び砂浜を走り回り、波打ち際で楽しそうに遊んでいた。その姿を見守るマリーとクラリスも、自然と微笑みを浮かべていた。

その時、リリスが遠くに見える船に目を奪われた。彼女は無意識にその船へと近づいていき、マリーとクラリスは少し慌てて後を追ったが、リリスが何かを見つけたことに気づいて、彼女の行動を見守ることにした。

そして、リリスは、その船との運命的な出会いを果たすことになるのだった…。
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