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第二章: 古代の魔術と新たな盟友
しおりを挟むそれから数週間が過ぎた。イリスは古代の魔術の書物に没頭し、日々の修行に励んでいた。彼女の体は少しずつ魔力に順応し、以前よりも確実に強さを手に入れつつあった。だが、その道のりは決して簡単ではなく、過去のイリスが経験したどんな努力よりも困難なものだった。
「魂の力を引き出し、己を超越せよ」
その言葉に導かれ、彼女はさらに奥深くまで魔術の世界へと足を踏み入れていく。しかし、魔法を極めるというのは単に知識や訓練だけで成し遂げられるものではなかった。魔力を操るには、精神力や心の強さが必要だった。
イリスは書物に書かれた瞑想や精神集中の訓練も試みていたが、思うような成果が得られず、何度も挫折しかけた。それでも、彼女はアーサーへの復讐心と、自らを強くするという決意だけで乗り越えていた。
「私は……負けない……」
彼女は広げた手のひらに、集中するように意識を込める。ほんの一瞬、手の中に炎のような赤い光が瞬いたが、すぐに消えてしまった。まだ力は不安定だった。
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そんなある日、イリスは再び図書館に足を運んでいた。魔術に関する書物を読み漁る日々が続いていたが、ある本に目を留めた。それは非常に古びたもので、背表紙も擦り切れており、タイトルさえも読み取れない状態だった。
「これは……何か重要なものが隠されているかもしれない」
彼女はその本を手に取り、慎重にページをめくり始めた。ページは古く、まるで今にも崩れそうなほどだったが、そこに書かれていた内容は彼女の興味を引いた。
「古代の盟友の力」
その言葉が彼女の目に留まった。古代の強力な魔術師たちが、強大な存在――盟友――と契約を交わし、その力を借りることでさらなる力を手に入れていたという記述だった。
「盟友……」
イリスはその言葉を口にしながら、自分にその力が必要なのではないかと直感的に感じた。自分一人の力だけでは限界がある。もし、誰か強力な存在と力を合わせられたなら、もっと大きなことが成し遂げられるかもしれない。
---
その夜、イリスは本に書かれていた儀式を行うことを決意した。月が高く昇る静かな夜、彼女は館の裏庭にある広い草原に足を運んだ。手には古代の本があり、そこに書かれた指示に従って儀式の準備を進めていった。
「この儀式で……私は盟友を得ることができるのか?」
不安と期待が入り混じった心境で、彼女は大地に刻まれた魔法陣の中央に立った。両手を広げ、目を閉じて精神を集中させる。
「私の魂に応えし者よ……契約を交わし、共に力を分かち合おう」
彼女が唱えた言葉に呼応するように、地面から微かな光が立ち上がり、やがて強烈な光に変わった。風が吹き荒れ、大気が震える。イリスはその力に圧倒されそうになりながらも、しっかりと足元を踏みしめた。
そして、光の中からひとつの影が現れた。
「……誰だ?」
低く、威厳のある声が響き渡る。その声にイリスは驚きつつも、覚悟を決めて声を上げた。
「私はイリス・カリスタ。あなたと契約を望む者です」
光の中から現れたのは、人間の姿をした存在――だが、普通の人間とは違う圧倒的な力を感じさせる男だった。彼は漆黒のローブをまとい、銀色の髪が月光に照らされて輝いていた。その瞳は冷たく鋭いが、どこか深い知性を宿していた。
「契約を望むと言ったな……イリス・カリスタよ。だが、お前はまだその力に値する者か?」
男は鋭い瞳でイリスを見据えた。彼の存在そのものが、ただ者ではないことを物語っていた。だが、イリスは恐れることなく彼の視線を真っ直ぐに受け止めた。
「私は強くなりたい。二度と誰にも裏切られず、私自身の力で運命を切り開くために……あなたの力が必要なのです」
その言葉に、男は一瞬、微笑んだように見えた。
「面白い……その決意がどこまで本物か、試してやろう」
男はそう言い放つと、手を振り上げた。すると、周囲の風が急に激しさを増し、彼女に向かって襲いかかるように渦巻いた。イリスはその場に踏みとどまり、必死に耐えた。
「これが……試練?」
彼女は目を細め、風の中で立ち続けた。男は彼女の意志と力を試しているのだ。この試練に耐え抜かなければ、契約は成立しない。イリスは心の中で繰り返し叫んだ。
「私は負けない……絶対に!」
やがて、風は静まり、周囲は再び静寂に包まれた。イリスは息を整え、冷や汗を拭った。男は彼女をじっと見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「いいだろう。お前の決意は本物だ……その力、しかと受け取れ」
男はイリスの前に歩み寄り、手を差し出した。彼の手は冷たく、しかし強い力を感じさせた。イリスはその手を握り、力強く頷いた。
「契約は成立だ。これからは共に進むとしよう」
その瞬間、イリスの体に新たな力が満ちていくのを感じた。これまでに感じたことのない、圧倒的な力だった。彼女はこの瞬間、強力な盟友を得て、自らの力をさらに引き上げた。
「これで……私はもっと強くなれる……!」
イリスの瞳には、以前よりも一層強い光が宿っていた。アーサーへの復讐、その道のりはまだ始まったばかりだったが、彼女は確実に進んでいた。
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