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第三章:逆襲の幕開け

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アルティスは王都へ戻る準備を進めていた。カイルの助けを得て、錬金術や古代魔法を習得した今の彼女は、かつての無力な令嬢ではない。自分を追放し、陥れた者たちに報いを与えるため、彼女は動き出す。


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王都への潜入

アルティスは錬金術で作られた変装用の道具を身につけ、身分を隠して王都に潜入した。古びた旅人の服をまとい、かつて華やかな衣装で歩いた王都の街を足早に進む。その街並みは何一つ変わらないが、人々の視線は彼女を追うことはない。今の彼女は、ただの名もなき村人だ。

王都に着くと、彼女はすぐに情報収集を始めた。フローラとリオネルが婚約発表後も順調に支持を集めていること、しかしその裏では、王家と貴族たちの腐敗が深刻化していることを知る。

「やはり……奴らは民を犠牲にしてでも権力を守るつもりなのね。」

アルティスは冷たい笑みを浮かべ、まずはフローラの裏を暴くため、彼女が関与していると噂される贈収賄の証拠を探ることにした。


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フローラの秘密

フローラの贈収賄の証拠を探すため、アルティスは彼女の屋敷に潜入する計画を立てた。カイルから渡された「透明の霧」を使い、彼女は屋敷の防衛をすり抜ける。霧をまとった彼女の姿は、人々の目には映らない。

屋敷の書斎に忍び込むと、大量の帳簿や書類が並べられていた。その中に、フローラが王家に送られる税金の一部を横領し、私腹を肥やしていた証拠があった。さらに驚くべきことに、リオネルがそれを黙認していたことを示す手紙も見つかる。

「これさえあれば……奴らの化けの皮を剥ぐことができる。」

アルティスは書類を慎重に持ち出し、証拠を確保した。だが、彼女が屋敷を後にしようとしたその時、フローラと側近たちが廊下を歩いている声が聞こえた。

「最近、妙な動きがあると聞いたけれど……気のせいかしら?」

アルティスは息を潜め、影に隠れる。幸いにも見つかることはなく、その場を離れることができた。


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民衆の力を得る

証拠を手に入れたアルティスは、それを使って民衆の支持を集める計画を立てた。彼女は変装したまま、王都の市場や酒場で密かに情報を広め始める。

「フローラとリオネルが民から搾取している証拠があるらしい。近々、それが公になるそうだ。」

噂は瞬く間に広まり、民衆の間に不満が募る。王家や貴族への不信感が高まり、彼女が動きやすい状況が整っていく。

さらに、アルティスはかつての友人でありながら、彼女を見捨てた貴族の一部にも接触し、彼らに証拠を見せて協力を求めた。

「これを公開すれば、あなたたちの立場も危うくなる。でも私に協力すれば、腐敗を暴く英雄になれるわ。」

アルティスの言葉に、彼らは動揺したが、結局彼女の提案を受け入れることを決めた。こうして、アルティスは民衆と一部の貴族たちを味方に引き入れることに成功する。


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決戦の舞台:王城の裁判

ついに決戦の日が訪れた。アルティスは変装を解き、堂々と王城の門を叩いた。

「アルティス・ローゼリア、無実を証明するために戻りました。」

その声は城中に響き渡り、王やリオネル、フローラが驚きの表情で彼女を迎えることとなる。

王城での裁判が始まり、アルティスは集めた証拠を次々と提示した。フローラとリオネルの贈収賄の証拠、税金の横領、さらに彼女を陥れるために仕組まれた偽装書類――それら全てが白日の下に晒された。

「リオネル殿下、これでも私を追放した正当性を主張するおつもりですか?」

アルティスの言葉に、リオネルは青ざめた顔で答えられない。フローラは取り乱し、その場で罪を認める形となった。


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栄光と拒絶

民衆や貴族たちの支持を受け、アルティスの無実は晴れた。王は彼女に謝罪し、公爵家の地位を回復させることを提案する。

だが、アルティスは冷ややかに微笑むだけだった。

「もう遅いのです、陛下。私には公爵家も、地位も必要ありません。私は新しい道を歩むと決めました。」

リオネルが何かを言おうとするが、彼女はそれを無視し、振り返ることなく王城を去った。


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新たな一歩

王都を後にしたアルティスは、辺境の村へと戻った。そこには、彼女を受け入れてくれた人々、そしてカイルが待っていた。

「おかえり、アルティス。どうだった?」

カイルの問いに、彼女は晴れやかな笑みで答えた。

「ええ、全て終わったわ。そして私は、自由を手に入れた。」

アルティスは村での新たな生活を再び始め、復讐ではなく、未来を築くために生きることを決意する。彼女の物語はここで一区切りとなるが、その瞳にはまだ新たな可能性が宿っていた。

「これからは、私の力を誰かのために使いたい。それが、私の選んだ道だから。」

アルティスの逆襲劇は幕を閉じ、新たな未来へと進む物語が始まった。

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