2 / 32
ブロローグ
魔女の呪い
しおりを挟む
草壁の腕の中の真魚がリィーナの肘に擦り傷があるのに気がついた。
「リィーナさん、怪我してます」
「これは馬車が横転したときについたんのです。でもリリアが庇ってくれたのでこの程度ですんだんです。リリア、本当にありがとう」
「…と言うことはリリアさん。鎧を脱いでください」
真魚の唐突な言葉に驚く。
「え?」
正確には真魚の意図はわかっている。
それを見抜かれていたことに驚いたのだ。
「庇った時に怪我したでしょう?」
「えええっ?!リリア、本当なの?」
「ほんのかすり傷です」
「とにかく鎧を脱いでください」
「で、でも」
チラッと草壁の方を向いて戸惑いを見せる。
「壁うしろむいてろ!」
察したお雪が強く命令する。
「え?」
「壁さん、後ろを向いてください」
真魚も察した。
「ああっ、すまん」
草壁もようやく気がついたらしい。
リリアも草壁の視線がなくなったことで鎧を脱ぎ始めた。
鎧の下は薄着で下着だけと言っていい。
彼女の両腕上腕と背中は内出血のために紫色に変色していた。
「酷い。こんなになってたなんてごめんなさい。ごめんなさい。リリア」
リィーナの目から涙が溢れだしてる。
「リィーナ様、かすり傷です。お気になさらないでください」
「かすり傷なもんですか大怪我ですわ。私のためにこんな大怪我をさせてしまって」
「従者が主のために身を呈するのは当たり前です」
「リィーナありがとう。ありがとう。そしてごめんなさい」
草壁にだきかかえられている真魚は、後ろを向いてる草壁の背中越しに二人を見ていた真魚の大きな黒い瞳がオレンジ色に輝く。
リリアの上腕と背中に大きく拡がっていた紫色の変色部分が消えていく。
同時にリィーナの肘の擦り傷も消えていた。
「治癒魔法…ですね。真魚様。ありがとうございます。」
それが真魚の魔法であることはリリアにもリィーナにもすぐわかった。
「痛かったでしょう?」
視線をリリアに向ける。
「いえ。たいしたことありません。」
治癒魔法をかけた真魚にはわかっているリリアは骨折までしていただがかすり傷しかしてない顔をして激痛に耐えていたのだ。
治療が終わり帝都オーガンに向かう。
御者がいなくなった馬車の御者をリリアと草壁が勤めることになった。
馬車の中にはリィーナと真魚が並んで座り対面にお雪が座る。
リィーナは冒険者に会うのは初めてで真魚とお雪を質問責めにしていた。
リィーナはある疑問を真魚はぶつけた。
「また不躾なことを聞いてしまいますが真魚様は治癒魔法をお使いになられるのにご自分の足は治療できないのですか」
リィーナは言ってしまってから後悔した。
治せるなら治してるはず…治せないのに違いないのに…
「怪我や病気なら治せるのですがこれは魔女の呪いなの…治癒魔法では治せないのです…」
「呪い…何て恐ろしい」
馬車内を気まづい重い空気に包まれる。
「でも悪いことばかりじゃないのよね。むしろ、らっきーな事の方が多い」
「え?」
「移動はいつもお姫様抱っこ。うらやましい?」
「はい。うらやましいです」
「相手が壁じゃなきゃ。うらやましいかも」
「えええっ?お雪さん。壁さんイケメンじゃないですか」
「あいつは人格に問題がある」
「そうかなぁ~」
「あいつは、朴念仁だ。人間的感情が欠落してる。」
「確かに感情表現が乏しいけど」
「あれは、リアルに壁だ」
「そっか、壁なのか」
「うん、壁だ」
「壁ってことは」
「壁だ」
「壁だったら仕方がないね」
「壁だからしょうがない」
二人の会話の意味がわからず首を傾げるリィーナ。
「あ、リィーナさん、気にしないで。壁のことなんてどうでもいいのよ」
「はい」
「それにリリアと御者してるけど、最初から一言も発してない。リリアが気まずく思ってるんじゃないか?」
「そうなの?」
「はい、草壁様は無口で無愛想なので気になりません」
「ほら、リリアもこう言っているし」
「でも、さすがにこの沈黙はまずいわね」
「あの、草壁様、何か話してください」
「なにかとは、なんだ?」
「こんなやつなんだよ!」
草壁の問いにリリアが答える前にお雪が怒ったように言った。
「えっと、天気の話とか」
「今日は晴れている」
「あ、はい。ありがとうございます」
「他にはないのか」
「う~ん」
「リィーナ様!私から話します。お二人は帝都オーガンのご出身なんですね」
リリアが話題をふった。
「違う」
「え?」
草壁が即答する。
「ち、違いましたか……すみません」
「遠くからきた。」
「は、はい、遠いところからありがとうございます」
「うん、遠かった」
「壁、もうちょっと話を膨らませなさい」
「むりだ」
「無理でも何でも頑張れ」
「無理」
「そうだ、お雪さんはどこの生まれですか」
「壁と真魚とお同じ国だけど知り合ったのは、こっちにきてからだね」
「そうなんですか」
「私の生まれたところ真冬になると雪に閉ざされるような山奥の雪国だったわ」
「へぇーそんな所があるんだ」
「うん、今度案内してあげるよ」
「本当ですか?楽しみです。」
「私も行きたいです」
「リリアは帝都オーガンに行ったことがあるだろう?」
「はい、ありますが、私は冒険者の方にご一緒させていただいただけです」
「ああ、なるほど。じゃあ、帝都オーガンに着いたら私が案内してあげよう」
「いいですね。ぜひお願いします」
お雪がリリアに帝都オーガンを案内することを約束していると御者台から声が聞こえてきた。
「帝都オーガンが見えてきました」
真魚と草壁が馬車を降りると城門の前に人が並んでいるのが見える。
その列に並んで順番を待つことにしたのだが、お雪とリリアが乗ってきた馬車が先に門番に呼ばれ中に入っていく。
「おい、お前たち、身分証を出せ」
「え?私たち持ってないです」
「はぁ?!冒険者なのにないのか?ギルドカードでいいぞ」
「はい」
「よし、通って良いぞ」
「リィーナさん、怪我してます」
「これは馬車が横転したときについたんのです。でもリリアが庇ってくれたのでこの程度ですんだんです。リリア、本当にありがとう」
「…と言うことはリリアさん。鎧を脱いでください」
真魚の唐突な言葉に驚く。
「え?」
正確には真魚の意図はわかっている。
それを見抜かれていたことに驚いたのだ。
「庇った時に怪我したでしょう?」
「えええっ?!リリア、本当なの?」
「ほんのかすり傷です」
「とにかく鎧を脱いでください」
「で、でも」
チラッと草壁の方を向いて戸惑いを見せる。
「壁うしろむいてろ!」
察したお雪が強く命令する。
「え?」
「壁さん、後ろを向いてください」
真魚も察した。
「ああっ、すまん」
草壁もようやく気がついたらしい。
リリアも草壁の視線がなくなったことで鎧を脱ぎ始めた。
鎧の下は薄着で下着だけと言っていい。
彼女の両腕上腕と背中は内出血のために紫色に変色していた。
「酷い。こんなになってたなんてごめんなさい。ごめんなさい。リリア」
リィーナの目から涙が溢れだしてる。
「リィーナ様、かすり傷です。お気になさらないでください」
「かすり傷なもんですか大怪我ですわ。私のためにこんな大怪我をさせてしまって」
「従者が主のために身を呈するのは当たり前です」
「リィーナありがとう。ありがとう。そしてごめんなさい」
草壁にだきかかえられている真魚は、後ろを向いてる草壁の背中越しに二人を見ていた真魚の大きな黒い瞳がオレンジ色に輝く。
リリアの上腕と背中に大きく拡がっていた紫色の変色部分が消えていく。
同時にリィーナの肘の擦り傷も消えていた。
「治癒魔法…ですね。真魚様。ありがとうございます。」
それが真魚の魔法であることはリリアにもリィーナにもすぐわかった。
「痛かったでしょう?」
視線をリリアに向ける。
「いえ。たいしたことありません。」
治癒魔法をかけた真魚にはわかっているリリアは骨折までしていただがかすり傷しかしてない顔をして激痛に耐えていたのだ。
治療が終わり帝都オーガンに向かう。
御者がいなくなった馬車の御者をリリアと草壁が勤めることになった。
馬車の中にはリィーナと真魚が並んで座り対面にお雪が座る。
リィーナは冒険者に会うのは初めてで真魚とお雪を質問責めにしていた。
リィーナはある疑問を真魚はぶつけた。
「また不躾なことを聞いてしまいますが真魚様は治癒魔法をお使いになられるのにご自分の足は治療できないのですか」
リィーナは言ってしまってから後悔した。
治せるなら治してるはず…治せないのに違いないのに…
「怪我や病気なら治せるのですがこれは魔女の呪いなの…治癒魔法では治せないのです…」
「呪い…何て恐ろしい」
馬車内を気まづい重い空気に包まれる。
「でも悪いことばかりじゃないのよね。むしろ、らっきーな事の方が多い」
「え?」
「移動はいつもお姫様抱っこ。うらやましい?」
「はい。うらやましいです」
「相手が壁じゃなきゃ。うらやましいかも」
「えええっ?お雪さん。壁さんイケメンじゃないですか」
「あいつは人格に問題がある」
「そうかなぁ~」
「あいつは、朴念仁だ。人間的感情が欠落してる。」
「確かに感情表現が乏しいけど」
「あれは、リアルに壁だ」
「そっか、壁なのか」
「うん、壁だ」
「壁ってことは」
「壁だ」
「壁だったら仕方がないね」
「壁だからしょうがない」
二人の会話の意味がわからず首を傾げるリィーナ。
「あ、リィーナさん、気にしないで。壁のことなんてどうでもいいのよ」
「はい」
「それにリリアと御者してるけど、最初から一言も発してない。リリアが気まずく思ってるんじゃないか?」
「そうなの?」
「はい、草壁様は無口で無愛想なので気になりません」
「ほら、リリアもこう言っているし」
「でも、さすがにこの沈黙はまずいわね」
「あの、草壁様、何か話してください」
「なにかとは、なんだ?」
「こんなやつなんだよ!」
草壁の問いにリリアが答える前にお雪が怒ったように言った。
「えっと、天気の話とか」
「今日は晴れている」
「あ、はい。ありがとうございます」
「他にはないのか」
「う~ん」
「リィーナ様!私から話します。お二人は帝都オーガンのご出身なんですね」
リリアが話題をふった。
「違う」
「え?」
草壁が即答する。
「ち、違いましたか……すみません」
「遠くからきた。」
「は、はい、遠いところからありがとうございます」
「うん、遠かった」
「壁、もうちょっと話を膨らませなさい」
「むりだ」
「無理でも何でも頑張れ」
「無理」
「そうだ、お雪さんはどこの生まれですか」
「壁と真魚とお同じ国だけど知り合ったのは、こっちにきてからだね」
「そうなんですか」
「私の生まれたところ真冬になると雪に閉ざされるような山奥の雪国だったわ」
「へぇーそんな所があるんだ」
「うん、今度案内してあげるよ」
「本当ですか?楽しみです。」
「私も行きたいです」
「リリアは帝都オーガンに行ったことがあるだろう?」
「はい、ありますが、私は冒険者の方にご一緒させていただいただけです」
「ああ、なるほど。じゃあ、帝都オーガンに着いたら私が案内してあげよう」
「いいですね。ぜひお願いします」
お雪がリリアに帝都オーガンを案内することを約束していると御者台から声が聞こえてきた。
「帝都オーガンが見えてきました」
真魚と草壁が馬車を降りると城門の前に人が並んでいるのが見える。
その列に並んで順番を待つことにしたのだが、お雪とリリアが乗ってきた馬車が先に門番に呼ばれ中に入っていく。
「おい、お前たち、身分証を出せ」
「え?私たち持ってないです」
「はぁ?!冒険者なのにないのか?ギルドカードでいいぞ」
「はい」
「よし、通って良いぞ」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる