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第六章 「運命の軌跡――隠された真実」
しおりを挟むクラリッサは、ルカとの会話を終えてから、心の中で葛藤を続けていた。彼を信じたいという気持ちと、彼がまだ何かを隠しているという疑念が拮抗していたからだ。それでも、彼女はルカを支えるために、彼の側にいることを決意した。
しかし、彼が言及した「予言」が彼自身にどのように関わっているのか、その真実を知るためには、もっと多くの情報が必要だと感じた。
「私は彼のために何ができるのかしら…」
クラリッサは一人で考え込みながら、王宮の書庫へと向かった。そこには、古くから伝わる王族に関する記録が保管されており、ルカが読んでいる書物の詳細を探すことができるかもしれないと思ったのだ。
---
王宮の書庫は、厳重な管理のもとで保管されていたが、クラリッサの家系は王族に近しい存在であったため、特別に許可を得ることができた。彼女は古びた木製の棚に並ぶ書物を一冊一冊調べ、ルカが話していた予言に関する記述を探し始めた。
その中で、彼女はついに一冊の古い巻物を見つけた。それは、古代からの王族にまつわる神秘的な予言や伝説をまとめたもので、ルカが言及していた内容が記されている可能性が高いと感じた。
クラリッサは慎重に巻物を開き、その内容を読み始めた。
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**「運命の予言」**
巻物には、古代から伝わる予言が細かく記されていた。その中でも特に目を引いたのは、次のような一節だった。
**「王の血を引く者に、二つの道が示される。ひとつは国を守る英雄の道、もうひとつは滅びを招く災いの道。選ばれし者は、自らの運命を決する時、真実を知ることとなるだろう」**
クラリッサはこの一節を読み、ルカが言っていた「運命」が何を意味しているのかを理解し始めた。彼はこの予言に縛られ、自分がどちらの道を選ぶべきかを悩んでいるのだろうか。もしそうであれば、彼が国を守る英雄としての道を選ぶことを願わずにはいられなかった。
しかし、同時に彼が滅びを招く災いの道を選んでしまう可能性もあることが、彼女を不安にさせた。
「ルカ…あなたが抱えているのは、こんなにも重い運命だったのね…」
クラリッサはその場に立ち尽くし、彼に何ができるのかを考えた。彼を支えるためには、彼の運命に対する理解と、彼がどちらの道を選ぶにしても、彼を支える覚悟が必要だと感じた。
---
その夜、クラリッサはルカに会いに行く決意を固めた。彼の真意を理解し、彼を支えるために、直接話し合う必要があると思ったからだ。
彼女がルカの部屋を訪れたとき、彼は机に向かって何かを書いていた。彼女の気配に気づくと、彼はゆっくりと顔を上げ、穏やかに微笑んだ。
「クラリッサ、こんな夜遅くにどうしたんだい?」
彼の優しい声に、クラリッサは少しだけ心が軽くなるのを感じた。しかし、彼に伝えるべきことがあると思い、彼女は深呼吸してから話し始めた。
「ルカ、私はあなたのためにできることを知りたくて、古い書物を調べてみたの。そして、あなたが抱えている予言の内容を知ったわ」
その言葉に、ルカの表情が一瞬硬くなった。しかし、すぐに落ち着きを取り戻し、静かに頷いた。
「そうか…君には隠しきれなかったようだね」
彼の声には、どこか諦めと覚悟が感じられた。クラリッサはその言葉に少し驚いたが、彼が全てを打ち明ける覚悟をしていることに気づいた。
「ルカ、あなたがどんな選択をしても、私はあなたを支えたいと思っているわ。だから、私に真実を教えてくれないかしら?」
クラリッサはその言葉に込められた誠実な思いを、ルカに伝えた。彼の運命に寄り添う覚悟ができていることを伝えたかったのだ。
ルカはしばらく沈黙した後、深いため息をついてから話し始めた。
「クラリッサ、僕が今まで君に隠してきたこと、それは僕自身の運命に関することなんだ。この国を守るために、僕は自分が何をすべきか、ずっと悩んでいた。でも、今はっきりと分かったよ」
クラリッサは緊張しながら彼の言葉を待った。彼がどんな選択をしたのか、それを聞く覚悟を決めていた。
「僕はこの国を守るために、英雄の道を選ぶ。滅びの道に進むことなく、国を守り抜く決意をしたんだ」
その言葉に、クラリッサは胸がいっぱいになった。彼が自分の運命に立ち向かう覚悟を持ち、正しい道を選んだことに、心からの安堵を感じた。
「ルカ…私はあなたを信じるわ。あなたがどんなに困難な道を進むことになっても、私はあなたと共に歩んでいくわ」
クラリッサはその言葉を涙ぐみながら伝えた。彼女の中で、ルカに対する疑念は完全に消え去り、ただ彼を支えたいという気持ちだけが残った。
ルカはそんなクラリッサを見つめ、優しく微笑んだ。そして、彼女の手をそっと握り締めた。
「ありがとう、クラリッサ。君がいてくれるからこそ、僕はこの道を進むことができるんだ」
その瞬間、二人の間にあったすべての疑念が消え去り、強い絆が生まれた。彼らは共に困難な道を歩む覚悟を固め、運命に立ち向かうことを決意したのだった。
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