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第6話 貴族学院

ヴィーナ

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【第1章:王子たちとの対立】

ミラは学院での生活を楽しんでいた。新しい友人たちと過ごす日々は充実しており、彼女は自分の周囲に集まる温かい仲間たちとの時間を大切にしていた。しかし、一つだけ問題があった。それは三人の王子、アルフォルス、ハロルド、アレスターとの微妙な関係だった。

ある日の授業後、友人たちと図書館で過ごしていたミラは、王子たちが現れるのを目にした。彼らは下位貴族の男子生徒たちを引き連れ、高慢な態度で彼らを馬鹿にしていた。大声で下位貴族を嘲笑する王子たちの言動に、ミラの友人たちは明らかに不快な表情を浮かべていた。

友人の一人が我慢できなくなり、ついに王子たちに向かって言い放った。「貴族でも人間としての品性が欠けているようでは困りますね」

王子たちは激怒し、友人たちに敵意を向けた。ミラは、友人たちを守るために冷静に対応しようと決心したが、内心では怒りが沸き上がっていた。「バカ王子たちにお灸を据えてやりたい……」

第2章:ヴィーナの登場

ある夜、ミラは王子たちの横暴に悩んでいた。彼女の力を使って王子たちを懲らしめることはできたが、それではもう普通の生活には戻れなくなる。「誰か、謎の正義の味方でも現れてくれないかしら?」

そんなミラに、彼女の中に宿るゼクスが語りかけた。「君が正義の味方になればいい」

「私が?」ミラは驚いた。

「仮面など不要だ。別人になればいい」

翌日、ミラは友人たちとお昼休みにベンチで談笑していた。そこにアルフォルス、ハロルド、アレスターが現れ、下位貴族たちを見下して「邪魔だ、どけ!」と命じた。

ミラは困った顔をしながらも黙っていたが、友人の一人が「ミラ様を困らせるのはおやめください」と言った。

「うるさい、下級が!」アルフォルスが手を上げかけた瞬間、背後から凛とした声が響いた。「おやめなさい」

王子たちが振り返ると、そこにはキリリとした褐色の肌に黒髪の美少女が立っていた。彼女の名は「ヴィーナ・キュア」。誰も見たことのないその美しい少女に、王子たちは一瞬見惚れた。

「俺たちを相手にそんな口を聞くとは、名と家名を名乗れ!」アレスターが叫んだ。

「ヴィーナ・キュアだ」と名乗ると、アレスターは拳を振り上げた。しかし、ヴィーナはその拳を軽々と払い、逆にアレスターを投げ飛ばした。王子は尻もちをつくという屈辱的な姿で地面に落ちた。

周囲の生徒たちは失笑し、次にハロルドが飛びかかったが、ヴィーナは簡単に彼の足を払って転倒させ、四つん這いにさせた。そして最後にアルフォルスが攻撃を仕掛けたが、ヴィーナは彼の手をねじりあげ、地面に押し付けた。

「王子というのは、すべての貴族たちの子弟の規範であるべきです。そして、ここにいる生徒たちは、将来あなた方を助ける人材です。そのことを考えて接するべきではありませんか?」

さらにヴィーナは三人を尻叩きにし、周りの生徒たちは爆笑に包まれた。ヴィーナはその場を立ち去り、王子たちはあまりの屈辱に顔を真っ赤にして退散していった。

第3章:正体不明のヴィーナ

その後、学院中がヴィーナ・キュアという謎の少女で持ちきりになった。生徒たちや王子たちは必死に彼女を探したが、誰も見つけることはできなかった。当然だった。なぜなら、ヴィーナはミラが変身した姿だからだ。

ゼクスから授かった変身能力を使って、ミラは別人として行動していたのだ。しかもヴィーナはミラとは全く違う容貌をしているため、誰もその正体に気づけない。

「変身能力って本当に便利ね。これなら誰にも気づかれない……」ミラは笑いながら呟いた。「仮面をつけていたら正体探しが始まるけど、素顔でさえ見破られないなんて」

ゼクスが答える。「もちろんだ。君は誰にでも変身できる」

「それって、悪用できそうで怖いわ……」

「だからこそ、君のような正義感のある者にこの力を与えたのだ」ゼクスは言った。

「ほめても何も出ないけどね」ミラは微笑みながら、これからも自分の力を使って、王子たちにお灸を据えていく決意を固めた。学院生活はまだ始まったばかりで、ミラには波乱の未来が待っているのだった。

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