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第13話新年度

意外な新入生

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「アリシア・フォン・ヴァルト男爵家令嬢ですね。」セシリアが手元のメモを見ながら報告する。

ミラとセシリアは学院のカフェテリアでお茶を飲みながら、アリシアのことについて話し合っていた。

「アリシア様の経歴はどうなっているの?」ミラが興味深げに尋ねる。

セシリアはメモを見ながら答えた。「彼女はフォン・ヴァルト男爵家の令嬢で、成績は常にトップクラス。特に数学と科学に秀でており、幼い頃からその天才ぶりを発揮していたそうです。」

「なるほど、学業面での優秀さは疑いないわけね。」
ミラはうなずいた。

「さらに、彼女は数多くの奨学金を受け取り、そのおかげでさまざまな特別教育を受けることができたようです。それが彼女の飛び抜けた知識と能力につながっているのでしょう。」
セシリアが続ける。

「そうなのね。それで、彼女の家族はどんな感じなの?」
ミラが尋ねた。

「フォン・ヴァルト男爵家は比較的小さな家柄ですが、非常に尊敬されている家系です。アリシアの父親は地域の治安維持に貢献し、母親は慈善活動に積極的に参加しているそうです。」
セシリアが答えた。

「つまり、アリシア自身も非常に高い倫理観を持っていると考えていいのかしら?」 
ミラは感心した様子で言った。

「ええ、そう思います。彼女の成績や経歴だけでなく、その人柄も素晴らしいものです。」
セシリアが微笑んで言った。


カフェテリアでのミラとセシリアの談笑はすぐに別な話題に移っていた。ミラはアリシアを特別視しているわけでもなく、セシリアの最大の関心事はミラなので、当然の流れだった。

「それで、ミラ様、今度の演奏会の準備はどうですか?」セシリアが話題を変える。

「ええ、順調よ。今回は少し挑戦的な曲を選んでみたの。」
ミラが微笑みながら答えた。

「さすがミラ様。私も楽しみにしていますわ。」
セシリアが目を輝かせる。

「ありがとう、セシリア。あなたの応援がいつも私の励みになるわ。」ミラが感謝の気持ちを込めて答えた。

その時、セシリアの後ろで小さな頭がチラチラ動いているのに気づいた。
「アリアちゃん?」
貴族学院の制服を着たアリアがいた。

「ミラ様、ごきげんよう」

「アリアちゃん、その制服…」

「貴族学院に入学した」

「え?アリアちゃんは何歳かしら?」

「10歳」

「ええええええ!?」
セシリアが驚きの声をあげる。もちろんミラも驚いる。

「すごいわ。難関で有名な貴族学院の試験に合格したの?」

「最年少合格だと言われた」

その時、トダダダダダとキャナルが駆け込んできた。「アリア、勝手に動き回ってはいけないって言ったでしょ。迷子になったらどうなると思うの?」

「姉様が心配しすぎて泣く。私は、特に困らない」

「アリア~」

「キャナル様、あなたがた姉妹だったの?」
ミラは、意外な事実に驚く。


「はい、この子は妹です」

「シスコンの姉」

「余計なこと言わなくていいの」

「ミラ様、セシリア様、意見してほしい。姉はシスコンが過ぎる」

「キャナル様は、アリアちゃんのことが心配なのよ」ミラが諭すように優しく話しかける。キャナルは、うんうんと頷く。

「度が過ぎる。入試のときも心配だと言ってついてきた」

「アリア~そんなことは暴露しなくていいの」

「姉が妹を心配するのは、当たり前なの」キャナルがアリアに諭すように話しかける。

「トイレまで付いてくるのが当たり前?」

ミラもセシリアも流石に過保護ではと思う。

「迷子になったら、大変でしょ?」

「自宅でトイレに行くのにどうやったら迷子になるのか教えて欲しい」

ミラもセシリアも学院での話だと思っていたが、自宅での出来事だと知りさらに驚く。

ミラとセシリアは笑いながら、姉妹のやり取りを見守っていた。

「キャナル様、気持ちはわかるけど、過保護すぎるのではないかしら。アリアちゃんはこんなにも聡明なのですもの、迷子の心配は要らないと思いますわよ」
ミラが優しく諭す。

「確かに迷子にはならないかもしれません。ですが、アリアはこんなに可愛いのです。誘拐されたらどうするのですか?」
キャナルは真剣な表情で答える。

「自宅のトイレで誘拐される可能性は、限りなくゼロだと思う」
アリアが不思議そうに答える。

「トイレでの話じゃありません!」キャナルは少し恥ずかしそうに反論する。

「誘拐される可能性は、この学院の生徒なら等しくあると思う。むしろ、姉様が一番危ない」アリアが冷静に答える。

「どうして?」キャナルが不思議そうに尋ねる。

「私に何かあったなんて聞かされたら、簡単に騙される」
アリアがきっぱりと言う。

図星すぎてキャナルは反論できない。

「だから、シスコンを卒業して欲しい。でないと私が心配」
アリアがさらに続ける。

ミラは感心しながら心の中で思う。この子、本当に10歳なの?

キャナルは肩を落としながらも、「わかりました。少しずつ心配しすぎないように気をつけます」
と答えた。

「それがいいわ。アリアちゃんも自立心が強いですもの、キャナル様が心配しすぎると逆効果ですよ」
ミラが微笑んで言った。

アリアも満足そうにうなずき、キャナルに微笑みかけた。「ありがとう、姉様。私は大丈夫。信じて欲しい」

キャナルはアリアの言葉に感動し、しっかりと彼女を抱きしめた。「わかったわ、アリア。でも、いつでも助けが必要な時は言ってね。」

ミラとセシリアも微笑みながら、その光景を見守っていた。

「それにミラ様には私の秘密を話しても大丈夫だと思う」   
アリアがさらりと言う。

「そ、そ、そ、それは絶対だめーっ!」 
キャナルは今までになく慌てて、動揺している。

「もごもご」
アリアはキャナルに口を完全にふさがれている。

「それは、絶対です。ミラ様は信用できても、誰がどこで聞いているかわからないのよ。盗聴されてるかもしれないし…」キャナルは興奮気味、ち息を切らしながら力説する。

ミラは笑いながら、
「キャナル様、大丈夫ですよ。私は何も聞いていませんから」
と安心させるように言った。

セシリアも微笑んで、「無理に話さなくても大丈夫ですわ」
と続けた。

アリアはキャナルの手を外しながら、
「わかった。でも、ミラ様にはいつか話したい」
少し不満そうに言った。

キャナルは再びアリアを抱きしめながら、「でも今はまだその時じゃないわ」
優しく諭す。

ミラとセシリアはその光景を見
見守りながら、ほっとした表情を浮かべていた。

「わかった」
アリアは小さく呟いた。

キャナルは安心したように微笑んで、「ありがとう、アリア。心配しているのよ」
アリアの頭を優しく撫でた。

ミラは二人のやり取りを見ながら、「家族の絆は素晴らしいですね」と微笑んだ。

セシリアも頷く、
「そうですわね。キャナル様とアリアちゃんの関係、とても素敵です」

アリアは少し恥ずかしそうにしながらも、「ありがとう、ミラ様、セシリア様」と礼を言った。

キャナルはそんなアリアを見つめながら、「これからも一緒に頑張りましょうね、アリア」




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