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第3章 延長戦は何回までですか?
食べて話して
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胃袋を海鮮で満たし、いざ江島神社の石段を登ろうかと思ったが、結局二人とも根性がなく、参道に戻ってきてしまった。お土産屋さんを覗くのも結構楽しい。一通り満足したところで、車に戻る。
「次は由比ヶ浜に行く?」
「そうだね!そのあと鎌倉も散歩したい。」
「いいね!そうしよう。」
右手に海岸線を、左手に江ノ島電鉄を眺めなら、車を走らせる。海というと夏のイメージが強いが、春になりかけのこの季節もいい。冬の寒さが和らぎ、海も心なしか穏やかに見える。
由比ヶ浜に到着して、写真を撮る。夏と違って人のいないビーチはどこか寂しそうなのに、春の日差しの優しさが心を温めてくれるような気がした。それが伝わる一枚が取れるように、構図や感度を変えてみる。五十嵐くんがただ見ているだけになってしまっていたので、持ってきた予備のカメラを渡すと、嬉しそうに撮っていた。
波の音にたまにシャッター音。たまに遠慮がちにカメラについて質問して来る五十嵐くん。全てが心地いい。
一通り撮り終わって、海岸近くのショップを覗く。可愛いアクセサリー屋さんが多くて、ついつい欲しくなってしまう。結局買わないけれど。
今度は鎌倉へ向かう。ちょうど小腹がすいてきたので、大仏へ行く途中に食べ歩き。個人的にはタコせんべいが美味しかった。
レトロなお店も多く、写真を撮りたくなってしまう。思った以上に時間をかけて、大仏に着いた。
「久しぶりに見たけど、大きいなあ。」
と上を見上げて、五十嵐くんが言う。
「そうだね。あんまり見る機会ないもんね。」
と頷く。
「この後どうする?帰り渋滞に巻き込まれないうちに、東京の方へ向かう?」
と五十嵐くん。
「そうか、渋滞とかあるのかー。」
そこまで考えていなかった。この擬似デートも終わってしまうと考えると少し寂しい。
「そうだね。今のうちに横浜まで行っちゃえばマシになるかもだけど。夕飯まで付き合ってくれる?」
不安そうに彼が言う。
「別にいいよ!せっかくだし、何か食べよう。」
そう私が言うと、彼は嬉しそうに笑った。
車に戻ってまたしばらくドライブする。
「撮れた写真で気に入ったのがあったら、データ送るから言ってね。」
五十嵐くんに話しかけてみる。
「ありがとう。でも、俺朝霞さんみたいに上手く撮れないし。」
謙遜して彼が言う。
「そんなことないよ。この前に神社の写真だって、構図とか面白かったし。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、朝霞さんの不意打ちショットは自分でも良く撮れたと思ってるよ。」
笑いながら彼が言う。
「変な顔してたからやめてよー。」
「そんなことない。普通に可愛かったよ。」
可愛いと言われたことに、顔が赤くなる。
「そんなことないし!」
照れた顔を見られないように、窓の外に視線を向ける。
「朝霞さんは人の写真撮らないの?」
不意打ちの質問にびっくりしてしまう。
「うーん、人の写真は苦手なんだよね。」
なんとか取り繕って答える。
「朝霞さん、きっとうまいと思うけど……。」
本当は人の写真を撮ることができない。そんなこと言える訳なく、会話が途切れてしまった。
「次は由比ヶ浜に行く?」
「そうだね!そのあと鎌倉も散歩したい。」
「いいね!そうしよう。」
右手に海岸線を、左手に江ノ島電鉄を眺めなら、車を走らせる。海というと夏のイメージが強いが、春になりかけのこの季節もいい。冬の寒さが和らぎ、海も心なしか穏やかに見える。
由比ヶ浜に到着して、写真を撮る。夏と違って人のいないビーチはどこか寂しそうなのに、春の日差しの優しさが心を温めてくれるような気がした。それが伝わる一枚が取れるように、構図や感度を変えてみる。五十嵐くんがただ見ているだけになってしまっていたので、持ってきた予備のカメラを渡すと、嬉しそうに撮っていた。
波の音にたまにシャッター音。たまに遠慮がちにカメラについて質問して来る五十嵐くん。全てが心地いい。
一通り撮り終わって、海岸近くのショップを覗く。可愛いアクセサリー屋さんが多くて、ついつい欲しくなってしまう。結局買わないけれど。
今度は鎌倉へ向かう。ちょうど小腹がすいてきたので、大仏へ行く途中に食べ歩き。個人的にはタコせんべいが美味しかった。
レトロなお店も多く、写真を撮りたくなってしまう。思った以上に時間をかけて、大仏に着いた。
「久しぶりに見たけど、大きいなあ。」
と上を見上げて、五十嵐くんが言う。
「そうだね。あんまり見る機会ないもんね。」
と頷く。
「この後どうする?帰り渋滞に巻き込まれないうちに、東京の方へ向かう?」
と五十嵐くん。
「そうか、渋滞とかあるのかー。」
そこまで考えていなかった。この擬似デートも終わってしまうと考えると少し寂しい。
「そうだね。今のうちに横浜まで行っちゃえばマシになるかもだけど。夕飯まで付き合ってくれる?」
不安そうに彼が言う。
「別にいいよ!せっかくだし、何か食べよう。」
そう私が言うと、彼は嬉しそうに笑った。
車に戻ってまたしばらくドライブする。
「撮れた写真で気に入ったのがあったら、データ送るから言ってね。」
五十嵐くんに話しかけてみる。
「ありがとう。でも、俺朝霞さんみたいに上手く撮れないし。」
謙遜して彼が言う。
「そんなことないよ。この前に神社の写真だって、構図とか面白かったし。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、朝霞さんの不意打ちショットは自分でも良く撮れたと思ってるよ。」
笑いながら彼が言う。
「変な顔してたからやめてよー。」
「そんなことない。普通に可愛かったよ。」
可愛いと言われたことに、顔が赤くなる。
「そんなことないし!」
照れた顔を見られないように、窓の外に視線を向ける。
「朝霞さんは人の写真撮らないの?」
不意打ちの質問にびっくりしてしまう。
「うーん、人の写真は苦手なんだよね。」
なんとか取り繕って答える。
「朝霞さん、きっとうまいと思うけど……。」
本当は人の写真を撮ることができない。そんなこと言える訳なく、会話が途切れてしまった。
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