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第3章 延長戦は何回までですか?
一人にならないで
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五十嵐くんの話は予想していたけど、それ以上に重かった。人の死が関わっていると分かると、何を言えばいいか分からなくなってしまう。
“いつか大丈夫になる”なんて軽口は叩けない。彼の恐怖だって彼とお母さんとの思い出の一つで、克服していいものなのかも分からない。
ズレた言い方になってしまうが、暗所恐怖症は本能的なもので、弱いと恥じるものではないと曖昧なことを言うことしかできなかった。
それでも五十嵐くんは、
「そう言ってくれるのは、朝霞さんくらいだ。今まで付き合っていた女の子は俺が暗所恐怖症だと分かると、避けて自然消滅してしまうことが多かったんだ。きっと強い男の方がよかったんだろうな。」
と苦笑いしながら、言った。
その苦笑いに胸が苦しくなる。五十嵐くんはルックスもいいし、優しいしモテるだろう。彼が暗所恐怖症だったところで、彼の価値がそんなに下がるとは思わない。いつか彼の恐怖も受け止めてくれるような人が現れてほしいと切に願う。
「こんなんだから、彼女ができないし、作れないんだよね。」
と彼が自虐した。
そんな風に思わないで欲しい。彼に彼自身のことを好きになって欲しい。彼に一人でいて欲しくない。そんなよく分からない気持ちが芽生え始めた。
「提案があります。」
その気持ちがよく分からないまま、私の口は勝手に話し出した。
「中の人契約を延長しませんか?」
これは恐らく五十嵐くんに孤独になって欲しくないという、私のエゴから出た言葉だ。このエゴを悟られないようにしなければならない。
私の言葉を聞いた五十嵐くんは案の定、開いた口が塞がらないといった様子だ。必死で話しながら、言い訳を考える。
「五十嵐くんが嫌だったら、断ってくれて大丈夫だから!ただ、“こーくん”と別れるのもなかなか難しいし、これから年度末にかけて忙しくなるから、余計な付き合いは断りたいから、その理由も欲しいし!」
言っているうちに恥ずかしさが増して、顔が熱くなる。
「お互い好きな人ができたら、契約終了にして、それまでは契約延長ってことにしない?」
早口で言い終える。彼の顔を見るのが怖い。
きっと彼は呆れているだろう。
「いいよ。契約、延長しようか。」
優しい声が聞こえてきて、ふと顔を上げる。さっき暗所恐怖症について告白していた時の強張りは、もう彼の表情に残っていなかった。
「本気で言っているの?面倒くさいと思わないの?」
びっくりして聞き返してしまう。
「自分で言っておいて、何言ってるの?朝霞さんから、そんな提案されるなんて思わなかったから正直驚いた。でも、嬉しいよ。だから、お互いに好きな人ができるまで延長しよう。」
嬉しいと言われて、どぎまぎしてしまいそうになる。
「よ、よろしくお願いします。」
動揺を隠して、なんとか取り繕って言う。
「こちらこそよろしくお願いします。」
五十嵐くんが笑って言った。
“いつか大丈夫になる”なんて軽口は叩けない。彼の恐怖だって彼とお母さんとの思い出の一つで、克服していいものなのかも分からない。
ズレた言い方になってしまうが、暗所恐怖症は本能的なもので、弱いと恥じるものではないと曖昧なことを言うことしかできなかった。
それでも五十嵐くんは、
「そう言ってくれるのは、朝霞さんくらいだ。今まで付き合っていた女の子は俺が暗所恐怖症だと分かると、避けて自然消滅してしまうことが多かったんだ。きっと強い男の方がよかったんだろうな。」
と苦笑いしながら、言った。
その苦笑いに胸が苦しくなる。五十嵐くんはルックスもいいし、優しいしモテるだろう。彼が暗所恐怖症だったところで、彼の価値がそんなに下がるとは思わない。いつか彼の恐怖も受け止めてくれるような人が現れてほしいと切に願う。
「こんなんだから、彼女ができないし、作れないんだよね。」
と彼が自虐した。
そんな風に思わないで欲しい。彼に彼自身のことを好きになって欲しい。彼に一人でいて欲しくない。そんなよく分からない気持ちが芽生え始めた。
「提案があります。」
その気持ちがよく分からないまま、私の口は勝手に話し出した。
「中の人契約を延長しませんか?」
これは恐らく五十嵐くんに孤独になって欲しくないという、私のエゴから出た言葉だ。このエゴを悟られないようにしなければならない。
私の言葉を聞いた五十嵐くんは案の定、開いた口が塞がらないといった様子だ。必死で話しながら、言い訳を考える。
「五十嵐くんが嫌だったら、断ってくれて大丈夫だから!ただ、“こーくん”と別れるのもなかなか難しいし、これから年度末にかけて忙しくなるから、余計な付き合いは断りたいから、その理由も欲しいし!」
言っているうちに恥ずかしさが増して、顔が熱くなる。
「お互い好きな人ができたら、契約終了にして、それまでは契約延長ってことにしない?」
早口で言い終える。彼の顔を見るのが怖い。
きっと彼は呆れているだろう。
「いいよ。契約、延長しようか。」
優しい声が聞こえてきて、ふと顔を上げる。さっき暗所恐怖症について告白していた時の強張りは、もう彼の表情に残っていなかった。
「本気で言っているの?面倒くさいと思わないの?」
びっくりして聞き返してしまう。
「自分で言っておいて、何言ってるの?朝霞さんから、そんな提案されるなんて思わなかったから正直驚いた。でも、嬉しいよ。だから、お互いに好きな人ができるまで延長しよう。」
嬉しいと言われて、どぎまぎしてしまいそうになる。
「よ、よろしくお願いします。」
動揺を隠して、なんとか取り繕って言う。
「こちらこそよろしくお願いします。」
五十嵐くんが笑って言った。
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