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第2章 共同戦線
手札の切り方
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五十嵐くんは計画をスタートさせたようだ。
女子の間ではもう噂になっていた。
「五十嵐くん、彼女できたんだってね。」
「どんな子なんだろう?」
「五十嵐くんと釣り合う子なんているのかしら?」
「あー、羨ましい!」
そんな会話が聞こえてきた。
ごめんなさい、その彼女は私が中の人をやっている幻影です。
今日も五十嵐くんにお願いされて、あーちゃんとして「風邪を引いて辛いから、スポーツドリンクとゼリーを買ってきて欲しい」と電話をかけた。
試験の為なのに進まない勉強会を抜けるために、彼女が風邪を引いたのでお見舞いに行くという言い訳を使ったらしい。
最近、五十嵐くんの契約の利用目的が、最初のクリスマス前の無理矢理恋人を作ろうと言う雰囲気から逃げるためだけでなく、何となく行きたくなかったり、帰りたくなったりしたイベントのときの言い訳にも広がっている。
契約の利用範囲を十分に吟味していなかったから、別に文句はない。むしろそんな使い方もあったのかと感心してしまう。
一方私がその契約を使ったのは、高木くんの誘いを断った時だけだった。
『ごめんなさい。実は前から気になっていた人と付き合うことになりまして、高木くんの誘いには答えられません。』
十分に吟味して文章を作った。
このメールに対する返信はまだ来ない。
しかし、誘いのメールが来なくなったので、少しの罪悪感はありつつも心は軽くなった。
このまま契約を使わずに終わってもいいかと思っていたときのことだった。
「そういえばさー、みんなはクリスマスどうするの?」
11月も終わりに近づいて来た時、女子の中で誰かがその話題を挙げた。
彼氏と過ごすだとか、友達とパーティするだとかそんな話があちこちから聞こえてくる。
私は自分に話が回って来ないように、出来るだけ影を薄くしたつもりだったのだが……。
「葵ちゃんはどうするの?何か予定があるの?」
唐突に話を振られてしまった。どう答えようか考えていると、
「もし暇だったら、クリスマスパーティ来ない?みんな、葵ちゃんがきたら喜ぶよ!」
最悪な提案をされてしまった。他人に気を使いながら、自分の距離を死守しなければならないパーティという空間は大嫌いだ。
「実は用事があって……。」
嫌だという思いから、咄嗟に口を開いてしまった。これでは何か意味深な予定があるようだ。
「えっ、用事って?もしかして葵ちゃん、彼氏できたの?」
案の定、こういう展開になってしまった。女子は恋愛事情が大好物だ。
もう開き直って、あのカードを使おう。
「実はちょっと前から、バイト先のお客さんと付き合うことになって……。」
少し照れくさそうな顔をしながら、餌をばら撒く。
「そうなんだ!ねえねえ、どんな人?向こうから告白されたの?」
友人たちは楽しそうに捲し立ててくる。
「面白くて優しい人かな?向こうから告白されたの。」
設定になかったことも含め、自然に答えられたと思う。
そうして私は打算的に逃げの手札を切ったのだった。
女子の間ではもう噂になっていた。
「五十嵐くん、彼女できたんだってね。」
「どんな子なんだろう?」
「五十嵐くんと釣り合う子なんているのかしら?」
「あー、羨ましい!」
そんな会話が聞こえてきた。
ごめんなさい、その彼女は私が中の人をやっている幻影です。
今日も五十嵐くんにお願いされて、あーちゃんとして「風邪を引いて辛いから、スポーツドリンクとゼリーを買ってきて欲しい」と電話をかけた。
試験の為なのに進まない勉強会を抜けるために、彼女が風邪を引いたのでお見舞いに行くという言い訳を使ったらしい。
最近、五十嵐くんの契約の利用目的が、最初のクリスマス前の無理矢理恋人を作ろうと言う雰囲気から逃げるためだけでなく、何となく行きたくなかったり、帰りたくなったりしたイベントのときの言い訳にも広がっている。
契約の利用範囲を十分に吟味していなかったから、別に文句はない。むしろそんな使い方もあったのかと感心してしまう。
一方私がその契約を使ったのは、高木くんの誘いを断った時だけだった。
『ごめんなさい。実は前から気になっていた人と付き合うことになりまして、高木くんの誘いには答えられません。』
十分に吟味して文章を作った。
このメールに対する返信はまだ来ない。
しかし、誘いのメールが来なくなったので、少しの罪悪感はありつつも心は軽くなった。
このまま契約を使わずに終わってもいいかと思っていたときのことだった。
「そういえばさー、みんなはクリスマスどうするの?」
11月も終わりに近づいて来た時、女子の中で誰かがその話題を挙げた。
彼氏と過ごすだとか、友達とパーティするだとかそんな話があちこちから聞こえてくる。
私は自分に話が回って来ないように、出来るだけ影を薄くしたつもりだったのだが……。
「葵ちゃんはどうするの?何か予定があるの?」
唐突に話を振られてしまった。どう答えようか考えていると、
「もし暇だったら、クリスマスパーティ来ない?みんな、葵ちゃんがきたら喜ぶよ!」
最悪な提案をされてしまった。他人に気を使いながら、自分の距離を死守しなければならないパーティという空間は大嫌いだ。
「実は用事があって……。」
嫌だという思いから、咄嗟に口を開いてしまった。これでは何か意味深な予定があるようだ。
「えっ、用事って?もしかして葵ちゃん、彼氏できたの?」
案の定、こういう展開になってしまった。女子は恋愛事情が大好物だ。
もう開き直って、あのカードを使おう。
「実はちょっと前から、バイト先のお客さんと付き合うことになって……。」
少し照れくさそうな顔をしながら、餌をばら撒く。
「そうなんだ!ねえねえ、どんな人?向こうから告白されたの?」
友人たちは楽しそうに捲し立ててくる。
「面白くて優しい人かな?向こうから告白されたの。」
設定になかったことも含め、自然に答えられたと思う。
そうして私は打算的に逃げの手札を切ったのだった。
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