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「愛してるわ、賢一、隆」
2人の男から身体のあちこちを愛撫されて愛を感じる。満たされていくのが暖かくて心地良かった、このままずっと私を愛し続けて欲しいと言った途端にアラームが鳴り始めた。意識が現実へと引き戻されていく、朝だ。
「母さん、未唯は?」
「おはよう好江、未唯はもう帰って来ないわよ」
このところ毎朝決まったルーティンの会話である、彼女に精神的な疾患があるからと心療内科医から説明されて、母は迷うことなく返事ができるようになった
「あら、そうなの。まあいいか」
この投げやりな言い方は、固執することさえも放棄してしまった表れでもある。
事故を起こした後、しばらくして好江は未唯と暮らしていた部屋を引き払い、実家での生活をしている。近所からヒト殺しと冷たい視線と実際の罵声を浴びせられた。一時期は週刊誌だかワイドショーの取材陣がうろついていたこともあった。見知らぬ人から(たぶんユーチューバー)無言でカメラを向けられて撮影されたこともある。
「もう限界よ…」。好江の体内のいくつかのギアが壊れ、全体がうまく動かなくなっていった。
そんな騒がしい環境から離脱するには、実家で引きこもり生活をして、ほとぼりが冷めるのを待つのが最適解であると佐々木弁護士から薦められた。
娘・未唯の親権譲渡は成されていなかったが、実質的には父親側へ移行している。現に父・山ノ井昌明の生活圏で過ごすことが大半であった。残り少なくなった小学校も学区替えをした、母親のスキャンダルをネタにしたイジメから未唯を守るためである。こうして未唯も父に守られ、血の繋がりは無いながらも、優しい継母と友達のような関係で楽しく毎日を過ごしている。
月に一回は顔を見せに来ていたが、未唯の足が遠のくのも致し方ない。こんな状況下の産みの母に会っても何も得るものはないからである。
◾️◾️ ヒモが解ける
「もう一緒に居られないや、じゃあねぇ」
そんな軽い感じで武井隆は好江との関係を解消した。不幸中のさいわいといえることだ。
武井隆に取って働かなくなり、自由に会えなくなった好江は、金蔓でも性欲処理としても価値を失った。そしてそれにより彼のDVと束縛から好江は解放された。
その2人の関係精算は凄惨な物となるのは後々の話し。
◾️◾️ 判決
道交法の自動車運転過失致死と判決され、交通刑務所へ収監される、刑期は1年間。あくまで脇見運転の過失として裁量をされた、佐々木弁護士の働きである。
「ご遺族の城東賢一さんとの事故前の面識はないのですよね?重要な事なので再度確認させて下さい、宮城さん」
「ありません」。好江の気の抜けた返事である。
「城東さんも好江さんのことは知らないと主張されているから、間違いないと思いますが大丈夫ですね?」
「はい」
「今回の交通事故案件とは関係ない話ですが、もしも2人の間に何らかの関係があれば、単純な交通事故ではなく刑事事件になり得ますから重大なことですよ」
「はい、間違いないです」
佐々木は弁護を受けているのは交通事故事案だけだが、おかしな噂話を耳にして正義心から気に掛かり、城東と宮城の2人に確認をしたのである。どこからも告発も訴訟も出て来てないので、検察も動いてはない。
《賢一と好江、2人は不倫関係にあった》
当事者が両名共に関係を否定しているのだから、佐々木弁護士にそれ以上の追求をする道理も経費もない。
宮城好江の手続きは滞りなく行われ収監された。そして1年の月日はあっという間に過ぎ、無情にも人々の関心は薄れて事故現場に花が添えられることも無くなった。それは出所して来た好江にとって好都合な忘却であった。
静かな生活を送るつもりである好江を、呪われた運命が放っておかなかったのである。
2人の男から身体のあちこちを愛撫されて愛を感じる。満たされていくのが暖かくて心地良かった、このままずっと私を愛し続けて欲しいと言った途端にアラームが鳴り始めた。意識が現実へと引き戻されていく、朝だ。
「母さん、未唯は?」
「おはよう好江、未唯はもう帰って来ないわよ」
このところ毎朝決まったルーティンの会話である、彼女に精神的な疾患があるからと心療内科医から説明されて、母は迷うことなく返事ができるようになった
「あら、そうなの。まあいいか」
この投げやりな言い方は、固執することさえも放棄してしまった表れでもある。
事故を起こした後、しばらくして好江は未唯と暮らしていた部屋を引き払い、実家での生活をしている。近所からヒト殺しと冷たい視線と実際の罵声を浴びせられた。一時期は週刊誌だかワイドショーの取材陣がうろついていたこともあった。見知らぬ人から(たぶんユーチューバー)無言でカメラを向けられて撮影されたこともある。
「もう限界よ…」。好江の体内のいくつかのギアが壊れ、全体がうまく動かなくなっていった。
そんな騒がしい環境から離脱するには、実家で引きこもり生活をして、ほとぼりが冷めるのを待つのが最適解であると佐々木弁護士から薦められた。
娘・未唯の親権譲渡は成されていなかったが、実質的には父親側へ移行している。現に父・山ノ井昌明の生活圏で過ごすことが大半であった。残り少なくなった小学校も学区替えをした、母親のスキャンダルをネタにしたイジメから未唯を守るためである。こうして未唯も父に守られ、血の繋がりは無いながらも、優しい継母と友達のような関係で楽しく毎日を過ごしている。
月に一回は顔を見せに来ていたが、未唯の足が遠のくのも致し方ない。こんな状況下の産みの母に会っても何も得るものはないからである。
◾️◾️ ヒモが解ける
「もう一緒に居られないや、じゃあねぇ」
そんな軽い感じで武井隆は好江との関係を解消した。不幸中のさいわいといえることだ。
武井隆に取って働かなくなり、自由に会えなくなった好江は、金蔓でも性欲処理としても価値を失った。そしてそれにより彼のDVと束縛から好江は解放された。
その2人の関係精算は凄惨な物となるのは後々の話し。
◾️◾️ 判決
道交法の自動車運転過失致死と判決され、交通刑務所へ収監される、刑期は1年間。あくまで脇見運転の過失として裁量をされた、佐々木弁護士の働きである。
「ご遺族の城東賢一さんとの事故前の面識はないのですよね?重要な事なので再度確認させて下さい、宮城さん」
「ありません」。好江の気の抜けた返事である。
「城東さんも好江さんのことは知らないと主張されているから、間違いないと思いますが大丈夫ですね?」
「はい」
「今回の交通事故案件とは関係ない話ですが、もしも2人の間に何らかの関係があれば、単純な交通事故ではなく刑事事件になり得ますから重大なことですよ」
「はい、間違いないです」
佐々木は弁護を受けているのは交通事故事案だけだが、おかしな噂話を耳にして正義心から気に掛かり、城東と宮城の2人に確認をしたのである。どこからも告発も訴訟も出て来てないので、検察も動いてはない。
《賢一と好江、2人は不倫関係にあった》
当事者が両名共に関係を否定しているのだから、佐々木弁護士にそれ以上の追求をする道理も経費もない。
宮城好江の手続きは滞りなく行われ収監された。そして1年の月日はあっという間に過ぎ、無情にも人々の関心は薄れて事故現場に花が添えられることも無くなった。それは出所して来た好江にとって好都合な忘却であった。
静かな生活を送るつもりである好江を、呪われた運命が放っておかなかったのである。
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