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フキンで――(審議)

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 猫が喋った。

 クロちゃんが喋った。

 しかし、普通の猫が喋るはずがない。

 クロちゃんが特別な猫という可能性も十分にあるけど……。いや、違う。そうじゃない。私に天啓が舞い降りた!

「ふっ、分かったわ。かんっぜんに理解したわ! ――私の猫愛ラブがついに人と猫の境目を突破! とうとうお猫様との意思疎通すら可能になったのね!」

『んなわけあるか』

「なるほど、そう簡単に肯定するわけにはいかないと? 中々秘匿性が高い出来事みたいね?」

『こいつ無敵か?』

「猫を想う私の心があれば、どんな困難も突破できるからね。その意味では無敵と言えるでしょう」

『こいつ無敵かぁ……』

 私の無敵さに恐れおののいたのか頭を垂れるクロちゃんだった。

「あなたの声って他の人にも聞こえるの?」

『他の連中には『にゃー』とでも聞こえるんじゃないか?』

「ふ、やはり前世から積み重ねた私の猫徳によって新たなる力に目覚めたようね……お猫様を称えよ、さすれば力が授けられん……」

『あー、もうそれでいいや』

 私の猫愛に驚いたのか感嘆のため息をつくクロちゃんだった。

『とにかく、あまり『力』を使いすぎるな。見ているこっちがヒヤヒヤしちまうぜ』

「はぁい」

 よく分からないけど、クロちゃんが使うなと言うなら使わないでおきましょう。今日も店長さんの鋼の腕から救い出してくれたことだし。

 しかし、なんか口が悪いわねクロちゃん? これは私の性格の悪さがクロちゃんの言葉を悪変換してしまっている感じ?

『元々だ、元々。ったく、お前のその自虐はどうにかならないのか?』

 自虐って。私がいつ自虐したというのだろう? 私ほど自信に溢れる人間はそうはいないと思うのだけど。

『はいはい』

 ひょい、と身軽な動きでクロちゃんが作業台に上る。

『まぁいい。シャーロット・ライナ。お前には『力』がある――』

「あ、ダメよ。作業台は土足禁止」

 ひょい、とクロちゃんを抱えて床に降ろす私。すかさず作業台をお掃除だ。作業台は常に綺麗にしておけと師匠に注意されたし。フキンで拭き拭き拭きーんっと。

「あれ? そういえば何か言いかけた?」

『……もーいいや。お前はテキトーに生きていれば。そうすりゃテキトーに物事も進むだろ』

 なぜか呆れられてしまう私だった。






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