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第2章

第50話 尽きない楽しみ

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「どうですか、ありましたか~」
「うんあったあった、とりあえずリストのは全部そろったよ」
「良かった。アキラ君には感謝ですね」
「だね~」

 僕たちの今いる場所は電車に乗ってきたゲームの専門のショップ。
 あの後アキラ君からメールで、オフラインで全てプレイできなおかつボリュームたっぷりという条件でおすすめゲームをリストとしてまとめてもらい、それを送ってもらったのでその物色に来ていた。
 どうやらアキラ君、かなりやっている方らしい。おすすめのコメントも力が入っていたし。

 僕はそんなに詳しくないので、結局ネットの評判見て適当に買っていこうかと思っていたが、こうして専門家が見つかった。渡りに船というやつかな。
 モニターと本体、さらには携帯機の方も買ったので、これで向こうでもゆっくり遊べるな。

 よく名作ゲームについて記憶を消してもう一度やりたいなんていうけれど……僕たちは実際にそういったことだって可能だ。
 楽しみは尽きることは無い。今までも、そしてずっとこれからもだ。

「後はなんか、買いたいものあります?」
「もういいかな~」

 一通り買い物は終わったし、そろそろ切り上げよう。
 カゴに入ったアクション、RPG、シュミレーション、シューティングなど色々なジャンルのニ十本ほどのゲームソフトを見ながら、自然とニンマリと笑みを浮かべたのを感じた。

「ありがとうございました~」

 会計を終えて、外に出る僕たち。もう少しかかるかと思っていたが、意外と早く買い物は完了した。
 とりあえずもうこちらで購入するようなものはないはずなので、これからどうするか……ホテルに戻るにはちょっと中途半端な時間だし……

「レンちゃん、まだ時間あるし、近くのゲームセンター行ってみない? 私一回行ってみたかったんだよね」
「賛成です。行きましょう」
「じゃあ早速!」

 そんなセシルさんの言葉で次の目的地は決まった。僕も久々に堪能してみたいと思ってので異論はない。
 買ったゲームはしまい、僕たちはショップからすぐ近くのゲームセンターに訪れた。


「ふ~ん、これが……」
「はい、お金崩してきましたよ」
「ありがと。ねえ、これってあのフィギュアを下に落っことせばいいんだよね」
「そうですよ。でもこれ結構コツがいるんですよ」

 入ってセシルさんが初めに興味を見せたのは、クレーンゲーム。それも橋渡しと呼ばれる、クレーンをうまい具合に引っ掛けてバランスを崩し、二本の棒の上に置かれた商品を落とすタイプのやつだ。
 クレーンゲームの中でも実力が顕著に表れるタイプなのだが、当然初めてであろうセシルさんは果たしてうまくいくのだろうか。僕も……これ成功したことはない。

「とにかくやってみる。まずは百円から」
「そのボタンで右に動いて、それで上ですから」
「わかるよ~それくらい」
「そうそう端っこを引っかけるように……あっ行き過ぎじゃないですか?」
「どうかな~」

 サイドからクレーンを眺めながら詰め寄る。僕が見た感じ、これではクレーンがわずかにかからない。
 だけどもうクレーンは軽快な音と共に、下に動き始めている。まあ一回目だからしょうがないか……

「あれ? あっ、あっ!」
「いい感じ、ねっ言ったでしょ」
「はい……」

 そんな僕の見立てとは裏腹に、クレーンの右側のアームはギリギリの絶妙なところで箱のはじを押し込むようにして、穴の側に持ってきた。
 斜めに傾いて収まっているこの状態はかなり順調だ。これならいけるかも……

「よし、もう一度」
「おおっ、もうちょい上で……そこ! いいんじゃないですか?」
「うんうん、手応えあった!」

 再び降りてくるクレーン。後はもうバランスを崩してやるだけなのだが……

「あっ、ああ~!」
「く~惜しいっ! もう一回!」

 残念ながら、今度は少し動いただけで落ちるまでには行かなかった。だけどこれなら……

「よしっ、よしよしっ!」
「これなら……おおっ!」

 三回目、見事に商品はコトンという軽い音と共に落下した。この瞬間は生では初めて見る……

「面白いね~これ!」
「しかし多少は動いていたみたいですけど、それでも三回ですか……実は何回も練習してたとかじゃないですか?」
「いや、これが初めてだよ。少しやり方を調べたりはしたけどね」
「それでもこれは凄いですよ」
「隣のもやってみよ。レンちゃん、それ袋に入れといて」
「あ、待ってください」



「おお……いける、やった~」

「ここで……いい感じ、オッケ~!」

 それからというものの、セシルさんは子供のようにクレーンゲームを満喫した。しかしすごい、何せ今とったフィギュアより大きなものも含めて、全部五百円一枚で仕留めているのだ。
 僕も見ているが、魔術などによるインチキの様子はない。もしかしたらここのゲームセンターが割と良心的な設定、配置をしているのかもしれないがそれでもここまではないだろう。単純にセシルさんの腕前によるものであるのは疑いようもない。
 こんな才能もあったなんて意外だな……

「くっ……いけ、いけ……よし!」
「あっ! レンちゃんも取れたじゃん」
「なんとか一個はいけました……」

 その中で僕も何とか一つゲット、十五回くらいかかってしまったけど……
 それでも、自分で落せたのは初めてだから嬉しいことには違いない。


「そろそろやめようか……」
「ですね……」

 そうして四体のフィギュアとぬいぐるみを三つ取ったところでクレーンゲームのエリアからは離れた。さすがに店員さんのおっかない視線をチラチラ感じるようになってきたし、ちらほらと見に来る人もいる。
 あれだけ取っていれば、そういうプロな人間だと思われても仕方ない。僕たちだって目立ちたくはないので、動画なんかに撮られてしまう前に、ここからはさっさとトンズラだ。

「次はあれ! プリクラってやつ」
「う~ん、ああいうのちょっと苦手……」
「え~私一人で撮ってもしょうがないし、一緒にやってよ」
「いいですよ、せっかくですしね」
「やった!」


「……」
「ん~レンちゃん、なんかぎこちないな~ほとんど真顔じゃない?」
「そうかも……」
「じゃあ、もう一回! 空いてるしね」

 でも確かにちょっと変かな。証明写真じゃないんだから、次はもうちょっと……

「よし、フレームはこれで~これくっつけて……これでどう?」
「……いいんじゃないですか?」
「はい、印刷っと……お~出てきた出てきた。かわいい~」

 そんな編集も終わり、ファンシーなプリクラのシートが排出される。それを見たセシルさんはとても上機嫌だ。
 やっぱり女子にとってこういうのはとても楽しいものなのだろう。僕はいまいちよくわからないけど……


「ああ面白かった~」
「今日はまた一段と楽しそうでしたね」
「うん、とっても!」

 そうして時も過ぎ、日が沈んだころ僕らはホテルへの帰路へとついた。もうすぐこちらに滞在する時間も終わりだ。
 まあ……いつでもってわけにはいかないがまた来れるから、そんなにしんみりするようなことでもないんだけどね。

「そういえば今日とったやつ全部持って帰るんですか?」
「それでもいいけど……アキラ君に見せて気に入ったのあったら、あげてもいいかなって」
「いいですね」

 今日はだいぶお世話になったわけだし賛成だ。好みのものがあるかはわからないけど。

「一応……あさって帰る予定だけど、明日はどうする?」
「明日は……たまには二人別々に行動しません?」
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