みるく日記2021

みるく♪

文字の大きさ
上 下
36 / 79

保護者が働きかけて教師の負担を軽減できた事例②

しおりを挟む
Aさんは驚きました。教師側に主導権がないなんて、初めて知ったからです。
もちろん保護者側にも主導権は ありません。
なのにPTA主催の行事とは、どういうことでしょう?

Aさんは多くの保護者から、この行事を無くしてほしいと聞いていました。
そして今、先生方の間でも、同じ要望が出ていることを知りました。
なのに、無くせないのは なぜでしょう?

さらにAさんが疑問に思ったことは、ケガをした先生の治療費についてです。
労災の扱いにならないのです。
保護者や子どもがケガをした場合と同じ扱いとなり、PTAが加入している保険を使います。
この行事は 各人の自由参加(という たてまえ)であり、勤務中の事故ではないからです。
けれど 我が子が慕う先生は、スポーツの会に 自ら望んで参加するタイプでは ないのです。

Aさんは 先生の おかげで親子の関係が良くなり 対話が増えていました。
ですから先生のことは、子どもから よく聞いていたのです。

先生は運動が大の苦手。音楽を聴きながら 裁縫や編み物をすることが大好き。
しかし、教師になった初年度から ずっと、どの学校でも 未経験の運動部顧問を命じられ、
いつも生徒に申し訳ないと感じていること。

お見舞いの いとまを告げる前に、Aさんは軽い雑談を装おって、先生に質問しました。
「1日を自由に過ごせる日があったら、先生は何をして過ごしたいですか?」
すると先生は 夢みるような顔で答えました。
「そうですね。ああ。そんな日が あるのなら。
天気が良ければ 布団を干したいですね。そして家中を掃除したいです」
Aさんは胸が痛くなりました。
布団を干したいとか、掃除したいとか。そんなことは、自分の奥さんが愚痴をこぼしながら 日常的に やっていることだったからです。

Aさんは決心しました。
ダメもとだろうと、謎の行事を無くせるよう、保護者側から働きかけてみようと。
どこの組織に主導権があるかもわからない、謎の行事です。
かなり厄介な 大仕事になるだろうと、覚悟もしました。

そうして まずはPTA会長に協力を求めました。
PTA会長といっても、Aさんの子どもの頃からの友達です。快諾を得ました。
二人で校長先生の自宅を訪問し、保護者側の要望を伝えました。

「スポーツ大会の主旨が素晴らしいことは、承知しています。
しかし今回は、先生が大ケガをされました。このような不幸は、保護者にも子どもたちにも、起こり得ることです。
さらに申し上げますと、我々保護者にとっては貴重な休日です。子どもたちにとっても、貴重な休日です。
私たちは できることなら、学校から離れて、家族で出かけたりしたいのです。
先生方にも家庭が おありでしょう。
それでもなお、先生方は、この行事を今後も続けたいと お考えですか?」

すると、どうでしょう。
この一件、いともあっさりと 解決したのです。

校長先生は ポンと膝をたたき、このように おっしゃいました。
「お話は よくわかりました!
保護者の皆さんが こんなにも強く望まれているのですから、私どもに異存は ありません。
教育委員会に報告します。
来年度から、この行事は無くします」

※※※

なんというか……
保護者の力って、大きいですね。
全国の女生徒に強制されていた ブルマーの件にしても、
Aさんの子が通っていた学校の件にしても……。
しおりを挟む

処理中です...