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大賀の回想
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「見紅よ~。ちゃんと布団敷いて寝てるかあ? 不精して風邪ひくなよ~」
真夜中。雪の山道。
大賀は慎重に、ゆっくり、ゆっくり、運転した。
嫁さんに呼びかけながら。
そして、これまでのことを回想した。
見紅はオレと結婚して、オレの親と同居するために、勤めていた会社を辞めたんだよなあ。
なのにオレは、親父から逃げた。家も出た。
で、金になるって理由だけで、運送屋になった。
見紅は怒ったなあ。
━━ こんなくらしじゃあ 寂しいよっ!
わたし、ひとりぐらしと変わらないじゃん!
お義父さんと切れたコトは、やむを得なかったと思うよ。おーちゃん、いっぱい がまんして、限界までがんばったもんね。
でもさ、夜の仕事はやめてほしいよ!
……だよなあ。 見紅は寂しんぼうだからなあ。
夜の山道は雪に阻まれ、最悪の状況になっていた。
崖側にガードレールはあるものの、トラックの支えにはならない。
万が一運転をあやまれば、まっさかさまである。
大賀は ほんとのところ、怖くて泣きたくて、たまらなかった。
だから声に出して話し続けた。愛妻に呼びかけたり、自分に言い聞かせたりし続けた。
「 いいか、よく聞け大賀。
おまえが運んでいる機材は、トンネル工事をする人が使うんだ。
山ん中に、広くて まっすぐな道路ができるんだよ。人間は、すげえなあ。
そしたら、こんな危険な山道、誰も通らなくて よくなるんだ。
ああ、そうだよ!
オレの仕事が役に立つんだ。未来の日本をつくるんだ!
そしたら、なあ、見紅。
この山越えてさ、温泉に行こうぜ!」
真夜中。雪の山道。
大賀は慎重に、ゆっくり、ゆっくり、運転した。
嫁さんに呼びかけながら。
そして、これまでのことを回想した。
見紅はオレと結婚して、オレの親と同居するために、勤めていた会社を辞めたんだよなあ。
なのにオレは、親父から逃げた。家も出た。
で、金になるって理由だけで、運送屋になった。
見紅は怒ったなあ。
━━ こんなくらしじゃあ 寂しいよっ!
わたし、ひとりぐらしと変わらないじゃん!
お義父さんと切れたコトは、やむを得なかったと思うよ。おーちゃん、いっぱい がまんして、限界までがんばったもんね。
でもさ、夜の仕事はやめてほしいよ!
……だよなあ。 見紅は寂しんぼうだからなあ。
夜の山道は雪に阻まれ、最悪の状況になっていた。
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万が一運転をあやまれば、まっさかさまである。
大賀は ほんとのところ、怖くて泣きたくて、たまらなかった。
だから声に出して話し続けた。愛妻に呼びかけたり、自分に言い聞かせたりし続けた。
「 いいか、よく聞け大賀。
おまえが運んでいる機材は、トンネル工事をする人が使うんだ。
山ん中に、広くて まっすぐな道路ができるんだよ。人間は、すげえなあ。
そしたら、こんな危険な山道、誰も通らなくて よくなるんだ。
ああ、そうだよ!
オレの仕事が役に立つんだ。未来の日本をつくるんだ!
そしたら、なあ、見紅。
この山越えてさ、温泉に行こうぜ!」
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