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27(ハヤカワ)
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「では、早速拝見しましょうかね…」
「ああ。見てくれ。左側から2005年。右に向かって2025年までの出来事を書いてみた」
「わあ…2005年あたりの文字数が多いねえ」
「何しろ、この年が、一番色々あったからな」
【2005年】
・10周年プロジェクトの開始
・社長、福利厚生の大幅な改善に着手
・社長、無駄な仕組みや謎ルールを徹底排除
・社長、怪しいコンサルを契約解除
・社長、無能な経営陣に厳しく追及開始 無駄金の禁止
・現場の士気が大きく高まる
【2006年】
・10周年プロジェクト大成功
・社長、太鼓持ち経営陣から退任に追い込まれる
・新社長に怪しいコンサル 直前、会長は病に倒れ引退(退任)
・ブランド創設メンバーは全員退職 当時のリーダー陣もほとんどが退職
・本部、会社にモノ申すタイプの店長を冷遇 営業時間の再延長による労働環境再悪化
・ユカ退職(結構追い詰められて)
・ハヤカワ、マニュアル作りを命令される
【2009年】
・ハヤカワ退職
「ほー。あれから社長頑張ったんだねー。それに未来委員会の動きも理想的だね」
「ああ、あの時の社長は、人格が変わったんじゃないかって噂されてた。鬼気迫る感じというか、一度絶望を知って、必死に希望を掴もうとしている感じというか…凄みが増していた…でも現場はみんな喜んでいたよ。私達にも三十代、四十代、五十代以降の未来が見えるって」
「へー?」
「これはユカが…まあこれからのユカ自身が作るんだけど、ユカそのものの事や、その他の何人かの社員をモデルケースにして、5年区切りのライフプラン…人生設計をイメージしたプレゼンをしたんだよ」
この話は、しておきたい。
「ふむふむ」
「プレゼンも見事なモノだったように覚えているけど、ユカのライフプランイメージは、節目である三十歳から、全店長と全スタッフの教育チームを発足。そこから三十五歳までに、結婚出産…これはユカ自身が望んでいた形だったからで、他にも同じようなケースで結婚はするけど子供は持たないケース、結婚しないケース、なんかもプレゼンしてたよ。ただどんな道筋を通っても、三十歳でこんな感じ、三十五歳でこんな感じ、それぞれこう輝ける。四十歳の時、四十五歳の時…カムバック出来るような仕組みや、家族の都合に合わせて柔軟に働ける…みたいなストーリーとかもあって、あらゆるパターンを網羅しているような感じだった」
ユカはじっくり、話を理解…記憶しようと手帳にメモをする。
「なるほどー。とにかく三十歳以降も、どんな形であれ、私達がずっと活躍したい姿、活躍出来る姿を書いたんだね。流石あたしだ」
「そう。それで、社長はそれを叶えるために、会社の仕組みをどんどん変えていったって感じだ。見事に未来委員会としての機能が働いていたと思ったよ」
「なるほどねー」
俺は、水を一口、間を空けて。
「正直な所、その全社に向けたユカのプレゼンで一番しびれたのが、最後に言った言葉だった。言っても店長から本部スタッフまで…150人はいる貸会議室での話なのに、何故かマイクをおいて、自分の声だけで…大きな声でこう言ったんだ。ただ、それは元々は予定には無かった事で、何を言い出すのか社長と俺はヒヤヒヤしたぞ」
「あたし…何て言ったの?暴言とかじゃないよね…」
もう一度、水を一口。
「ユカは最後に、こう言ったんだ」
【あたしは…私は洋服が好きだ。ずっと好きな洋服に関わる仕事をしていたい。でも自分が三十歳になってからの生活が成りたつかどうかの不安。人生設計が組めない不安。スキルに対しての不安。自分は特別な存在だと思っていたけど、普通の人間だと思い知らされている不安。自分だけで何かやろうと言えるほどの自信も力もない。今、この瞬間だけキラキラしていればいいなんて誰が言ったの。私は『好きを仕事にするべきか?』が毎日揺れ動いているよ。】
「ってさ」
「ああ。見てくれ。左側から2005年。右に向かって2025年までの出来事を書いてみた」
「わあ…2005年あたりの文字数が多いねえ」
「何しろ、この年が、一番色々あったからな」
【2005年】
・10周年プロジェクトの開始
・社長、福利厚生の大幅な改善に着手
・社長、無駄な仕組みや謎ルールを徹底排除
・社長、怪しいコンサルを契約解除
・社長、無能な経営陣に厳しく追及開始 無駄金の禁止
・現場の士気が大きく高まる
【2006年】
・10周年プロジェクト大成功
・社長、太鼓持ち経営陣から退任に追い込まれる
・新社長に怪しいコンサル 直前、会長は病に倒れ引退(退任)
・ブランド創設メンバーは全員退職 当時のリーダー陣もほとんどが退職
・本部、会社にモノ申すタイプの店長を冷遇 営業時間の再延長による労働環境再悪化
・ユカ退職(結構追い詰められて)
・ハヤカワ、マニュアル作りを命令される
【2009年】
・ハヤカワ退職
「ほー。あれから社長頑張ったんだねー。それに未来委員会の動きも理想的だね」
「ああ、あの時の社長は、人格が変わったんじゃないかって噂されてた。鬼気迫る感じというか、一度絶望を知って、必死に希望を掴もうとしている感じというか…凄みが増していた…でも現場はみんな喜んでいたよ。私達にも三十代、四十代、五十代以降の未来が見えるって」
「へー?」
「これはユカが…まあこれからのユカ自身が作るんだけど、ユカそのものの事や、その他の何人かの社員をモデルケースにして、5年区切りのライフプラン…人生設計をイメージしたプレゼンをしたんだよ」
この話は、しておきたい。
「ふむふむ」
「プレゼンも見事なモノだったように覚えているけど、ユカのライフプランイメージは、節目である三十歳から、全店長と全スタッフの教育チームを発足。そこから三十五歳までに、結婚出産…これはユカ自身が望んでいた形だったからで、他にも同じようなケースで結婚はするけど子供は持たないケース、結婚しないケース、なんかもプレゼンしてたよ。ただどんな道筋を通っても、三十歳でこんな感じ、三十五歳でこんな感じ、それぞれこう輝ける。四十歳の時、四十五歳の時…カムバック出来るような仕組みや、家族の都合に合わせて柔軟に働ける…みたいなストーリーとかもあって、あらゆるパターンを網羅しているような感じだった」
ユカはじっくり、話を理解…記憶しようと手帳にメモをする。
「なるほどー。とにかく三十歳以降も、どんな形であれ、私達がずっと活躍したい姿、活躍出来る姿を書いたんだね。流石あたしだ」
「そう。それで、社長はそれを叶えるために、会社の仕組みをどんどん変えていったって感じだ。見事に未来委員会としての機能が働いていたと思ったよ」
「なるほどねー」
俺は、水を一口、間を空けて。
「正直な所、その全社に向けたユカのプレゼンで一番しびれたのが、最後に言った言葉だった。言っても店長から本部スタッフまで…150人はいる貸会議室での話なのに、何故かマイクをおいて、自分の声だけで…大きな声でこう言ったんだ。ただ、それは元々は予定には無かった事で、何を言い出すのか社長と俺はヒヤヒヤしたぞ」
「あたし…何て言ったの?暴言とかじゃないよね…」
もう一度、水を一口。
「ユカは最後に、こう言ったんだ」
【あたしは…私は洋服が好きだ。ずっと好きな洋服に関わる仕事をしていたい。でも自分が三十歳になってからの生活が成りたつかどうかの不安。人生設計が組めない不安。スキルに対しての不安。自分は特別な存在だと思っていたけど、普通の人間だと思い知らされている不安。自分だけで何かやろうと言えるほどの自信も力もない。今、この瞬間だけキラキラしていればいいなんて誰が言ったの。私は『好きを仕事にするべきか?』が毎日揺れ動いているよ。】
「ってさ」
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