時の織り糸

コジマサトシ

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14(ハヤカワ)

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「社長…俺は正直、このブランド、会社のやり方を、真摯に20年続けていけば、もっと優れた企業になると思っています。何も突飛な事や、変に特別な事をしなくても良い。ただひたすらに磨き続ければ良い。それが唯一無二になり、絶対の強みになる。そう思っています。ただ…。」

 何か言いたそうなユカを社長は右手と笑顔で制し、「ハヤカワさん。続けて」と。

「俺たちが恐れなければいけないのは、自社の力が高まらない事でも、単純な近隣店舗や競合他社の台頭でもなくて…実は見えていない内側の要因と、もっと大きな外からの要因だと思っています。しかも…それは想像した事も無かった事…そんな」

 社長もユカも黙って聞いている。
 俺は、続ける。

「もしかすると、世界的に経済が破綻するかも知れない。世界規模のアパレル企業が、日本の市場を荒らし回るかも知れない。店が全壊、崩壊するような天災が起きるかも知れない。今はインターネットで洋服を買うなんてとんでもない…とか言う人も多いけど、ついにはそれが当たり前になって、店舗や販売員なんて、意味が無くなるかも知れない。日本自体がもっともっと貧困化するかも知れない。もしかすると、世界規模で感染症が…」
「ストップ!ストップ!」

 ユカが声を張り上げた。

「そんな話の規模にしちゃったら…それは明日地球が崩壊したら…みたいなレベルと同じだよ…もっと楽しい未来委員会にしようよ…それに…ハヤカワ?」

「そうか!そういう事か!」と、俺は無意識に叫んでいた。

 そうか。そうだ。

「社長。ちょっと時間を下さい。また別の時間で打合せをお願いします。失礼します!」
「ちょっと!ハヤカワ!」

 ユカの言葉は聞こえているが、そのまま俺は、社長室を去る。
 ユカも社長に一礼して部屋を出るのを、一応は背中で感じながら。

 社長の表情は、確認しなかった。
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