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助ける
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俺は病院を出て家に着くまで待ちきれずに少し離れたスーパーの駐車場でボイスレコーダーの音声を聞いた。
そこにはやっぱり…という気持ちと、どうして…と怒りの気持ちが湧いてきた。
彼女は背中に大怪我はしていたが起き上がることもできたし、まだゆっくりだけど歩くこともできた。それなのに…ケアをするどころか、彼女を動けないように拘束して、行為をしているような声がする。音声だけではまだ不十分だ。あの両手首にあったアザは拘束具の跡なのかもしれない。
あのビデオに証拠の映像が残っているのを祈った。彼女を助けられる方法はそれしかない。音声証拠だけでは不十分だ。だって彼女の声は聞こえないのだから…
絶対に救ってみせる。
警察官だから使命感で?いや違う。彼女が…浜辺凛が好きだからだ。
あんな酷い目に遭ってもなお、俺に頼ろうとしない。でも本当は何度も助けを求めていたのかもしれない。それなのに俺は…仕事を言い訳に彼女に会いに行かなかった。だから彼女が俺を頼れないのは当たり前だ。
勤務中も彼女のことしか頭になかった。今頃彼女は…そう思うとご飯も喉に通らなかった。
夜勤明け、いつもなら自宅で寝てしまう重い体に喝を入れ彼女の病院に向かった。片道2時間の距離は流石に辛い。ブラックガムを噛み、それでも眠気が起きそうな時は、あのボイスレコーダーの音声を聞いた。
「またあんた?あんた暇なの?」
いつもの看護師に声をかけられた。
「すみません」
彼女の部屋は相変わらず暗かった。目を瞑って呼吸をしている彼女を見て胸が痛んだ。誰も見てないことを確認して隠してたカメラを回収し鞄に入れた。これで彼女を救えるかもしれない。
「浜辺さん、起きれる?」
ゆっくりと目が開いた。俺と目が合うとホッと顔が緩んだ気がした。
「ご飯は食べれてる?」
首を横に振った。やっぱり…ちゃんとしたご飯も与えてないのだろうか?
俺はもう一度、彼女の細い腕をさすった。早く連れ出してやりたい。そう思いながらも効力がない今の状態では何もできない。
「浜辺さん、近いうちにまた来るから」
面会時間終了のアラームがなって俺は病院を後にした。
今日は真っ直ぐ家に帰って、ゆっくりと映像を見ようと思った。
緊張からか手が震えそうになりながら、カメラからSDカードを取り出し、パソコンに繋げた。
俺が帰ってからの映像が映し出されていた。しばらくたった頃、2人の男性が入ってきた。
「浜辺さん今日も可愛がってあげるからね」
そう言って彼女の腕を拘束し始めた。ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべながら、足を持ち上げベッドの柵に足をかけ、その足を拘束具で止めていった。もう見なくてもわかる。喋れないし、動けない彼女は男たちに弄ばれていた。
「お前、可愛いんだからもう少し気持ちよさそうな顔しろよ。萎えるだろ」
「毎日可愛がってやってるのになぁ」
彼女は歩くことも、動くこともできないんだろう。おむつを履かされていた。そのおむつを投げ捨て、男たちは代わる代わる彼女の中に自身を入れて腰を動かしていた。少しでも嫌そうな顔をすると顔を叩かれたりしている。それでも拘束具で止められている腕を動かし、逃げ出したいのがわかる。目を瞑って2人の顔を見ようともしない。どんなに辛くて屈辱なんだろう。こんな病院があっていいのだろうか?
男たちは行為が終わると何事もなく彼女の部屋を出ていった。
入院している彼女が妊娠したら困るからか、避妊だけはしていたのは救いだろう。男たちが出てったあと彼女は1人で泣いていた。声も出せず…ただ、涙が頬を伝っていた。
そのあといつも見る看護師がやってきた。
「全く何回言ったらわかるの?トイレに1人で行けないんだからオムツぐらい履いててよ。めんどくさい」
それはあの男たちが捨てただけだ。彼女のせいではないのに…理不尽にいつも言われているのだろう。
彼女を助けたい。でもどうやって?早くしないとまたあの男たちに強要されるのだろう。阻止しなければ…
俺はカメラのデータとボイスレコーダー、パソコンをもって職場に戻った。
「上原どうした?忘れ物か?」
大野課長に声をかけられた。
「大野課長この映像、見てほしいです」
「事件か?」
「今すぐに助けたいんです」
大野課長と一緒に映像を見た。
「酷いな。どこの病院だ?」
「国立の山桜病院です」
「山桜病院?」
「はい」
「これはどうやって入手した?」
「彼女の病室につけました」
「この子は林の女じゃないのか?」
「俺が…好きになったんです」
「転院した場所が山桜だったのか…前から、そういうのがあるんじゃないかと噂にはあったが、証拠がなかった。踏み込むぞ、いいのか?」
「はい。彼女を助けたいんです。力を貸してください」
「わかった。証拠があるんだから、逃げれないだろう。それにしても可哀想だな。辛いだろうに」
「俺…どうしてあげたらいいか」
「ここには他にも入院患者がいるだろう。犠牲になっている人がいるかもしれない。署長に連絡するから、そういえばお前寝てないだろ?仮眠室で寝て待ってろよ」
考えたら、寝ずに4時間往復して運転した疲れも溜まっていた俺は、仮眠室で寝てしまった。どのくらいの時間が経ったのだろう。
「上原、起きれるか?」
大野課長に声をかけられた。
「すみません。寝ちゃいました」
「仕方がない夜勤明けだったんだから、それよりも署長が呼んでるから行こう」大野課長と共に甲田署長に会いに行った。
そこにはやっぱり…という気持ちと、どうして…と怒りの気持ちが湧いてきた。
彼女は背中に大怪我はしていたが起き上がることもできたし、まだゆっくりだけど歩くこともできた。それなのに…ケアをするどころか、彼女を動けないように拘束して、行為をしているような声がする。音声だけではまだ不十分だ。あの両手首にあったアザは拘束具の跡なのかもしれない。
あのビデオに証拠の映像が残っているのを祈った。彼女を助けられる方法はそれしかない。音声証拠だけでは不十分だ。だって彼女の声は聞こえないのだから…
絶対に救ってみせる。
警察官だから使命感で?いや違う。彼女が…浜辺凛が好きだからだ。
あんな酷い目に遭ってもなお、俺に頼ろうとしない。でも本当は何度も助けを求めていたのかもしれない。それなのに俺は…仕事を言い訳に彼女に会いに行かなかった。だから彼女が俺を頼れないのは当たり前だ。
勤務中も彼女のことしか頭になかった。今頃彼女は…そう思うとご飯も喉に通らなかった。
夜勤明け、いつもなら自宅で寝てしまう重い体に喝を入れ彼女の病院に向かった。片道2時間の距離は流石に辛い。ブラックガムを噛み、それでも眠気が起きそうな時は、あのボイスレコーダーの音声を聞いた。
「またあんた?あんた暇なの?」
いつもの看護師に声をかけられた。
「すみません」
彼女の部屋は相変わらず暗かった。目を瞑って呼吸をしている彼女を見て胸が痛んだ。誰も見てないことを確認して隠してたカメラを回収し鞄に入れた。これで彼女を救えるかもしれない。
「浜辺さん、起きれる?」
ゆっくりと目が開いた。俺と目が合うとホッと顔が緩んだ気がした。
「ご飯は食べれてる?」
首を横に振った。やっぱり…ちゃんとしたご飯も与えてないのだろうか?
俺はもう一度、彼女の細い腕をさすった。早く連れ出してやりたい。そう思いながらも効力がない今の状態では何もできない。
「浜辺さん、近いうちにまた来るから」
面会時間終了のアラームがなって俺は病院を後にした。
今日は真っ直ぐ家に帰って、ゆっくりと映像を見ようと思った。
緊張からか手が震えそうになりながら、カメラからSDカードを取り出し、パソコンに繋げた。
俺が帰ってからの映像が映し出されていた。しばらくたった頃、2人の男性が入ってきた。
「浜辺さん今日も可愛がってあげるからね」
そう言って彼女の腕を拘束し始めた。ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべながら、足を持ち上げベッドの柵に足をかけ、その足を拘束具で止めていった。もう見なくてもわかる。喋れないし、動けない彼女は男たちに弄ばれていた。
「お前、可愛いんだからもう少し気持ちよさそうな顔しろよ。萎えるだろ」
「毎日可愛がってやってるのになぁ」
彼女は歩くことも、動くこともできないんだろう。おむつを履かされていた。そのおむつを投げ捨て、男たちは代わる代わる彼女の中に自身を入れて腰を動かしていた。少しでも嫌そうな顔をすると顔を叩かれたりしている。それでも拘束具で止められている腕を動かし、逃げ出したいのがわかる。目を瞑って2人の顔を見ようともしない。どんなに辛くて屈辱なんだろう。こんな病院があっていいのだろうか?
男たちは行為が終わると何事もなく彼女の部屋を出ていった。
入院している彼女が妊娠したら困るからか、避妊だけはしていたのは救いだろう。男たちが出てったあと彼女は1人で泣いていた。声も出せず…ただ、涙が頬を伝っていた。
そのあといつも見る看護師がやってきた。
「全く何回言ったらわかるの?トイレに1人で行けないんだからオムツぐらい履いててよ。めんどくさい」
それはあの男たちが捨てただけだ。彼女のせいではないのに…理不尽にいつも言われているのだろう。
彼女を助けたい。でもどうやって?早くしないとまたあの男たちに強要されるのだろう。阻止しなければ…
俺はカメラのデータとボイスレコーダー、パソコンをもって職場に戻った。
「上原どうした?忘れ物か?」
大野課長に声をかけられた。
「大野課長この映像、見てほしいです」
「事件か?」
「今すぐに助けたいんです」
大野課長と一緒に映像を見た。
「酷いな。どこの病院だ?」
「国立の山桜病院です」
「山桜病院?」
「はい」
「これはどうやって入手した?」
「彼女の病室につけました」
「この子は林の女じゃないのか?」
「俺が…好きになったんです」
「転院した場所が山桜だったのか…前から、そういうのがあるんじゃないかと噂にはあったが、証拠がなかった。踏み込むぞ、いいのか?」
「はい。彼女を助けたいんです。力を貸してください」
「わかった。証拠があるんだから、逃げれないだろう。それにしても可哀想だな。辛いだろうに」
「俺…どうしてあげたらいいか」
「ここには他にも入院患者がいるだろう。犠牲になっている人がいるかもしれない。署長に連絡するから、そういえばお前寝てないだろ?仮眠室で寝て待ってろよ」
考えたら、寝ずに4時間往復して運転した疲れも溜まっていた俺は、仮眠室で寝てしまった。どのくらいの時間が経ったのだろう。
「上原、起きれるか?」
大野課長に声をかけられた。
「すみません。寝ちゃいました」
「仕方がない夜勤明けだったんだから、それよりも署長が呼んでるから行こう」大野課長と共に甲田署長に会いに行った。
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