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新婚旅行2

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三枝さんの車はチャイルドシートが用意してあった。小さい子どもでもいるんだろうか?と思っていたらレンタカーだよ。と教えてくれた。ホテルでスーツケースを預けてから私達は三枝さんの自宅へと向かった。

着いた場所は上を見上げるほどの高層のコンドミニアムだった。その大きさに驚いていたのに周りも同じような建物がいっぱいで迷子になりそうだ…リッチとセキュリティがいいから…とここに決めたらしい。

高所恐怖症の私にはかなり怖い26階の自宅に案内され奥様に出迎えられた。奥様は現地で結婚した方だけど先生が日本人ということもあり、日本語は上手だった。お子様はいないから望夢に会えて嬉しいと言ってくれた。

長距離移動は疲れただろうから少しのんびりしてから観光に行こうと言ってくれた。先生と奥様は朝食を食べてくるから…と外出している間、私達はゲストルームで少しだけ休ませてもらった。
私達が朝早く来たから家で食べないの?と聞くと基本、自炊をする人が少なくてほぼ外食の家も少なくないそうだ。
亘くんが住んでた家は前回帰った時に片付けてしまったのでないけど、ここからあまり遠くないコンドミニアムに住んでたみたいだ。

望夢は飛行機であまり寝れず疲れたのか少しぐずったけど寝てしまった。

「詩織はどこ行きたい?」

「やっぱりマーライオンみたい」と言うと、やっぱりそこだよな。まぁ…有名だけど…本当は夜景が綺麗な所とかあるけど、詩織は高い所、苦手だからな。と笑われてしまった。

日本から持ってきた観光ガイドを広げ、どういう順番にしようかと話していたら先生達が帰ってきた。

望夢が起きたら行こうと言われ、4人でどの順番で行こうか?と話をしてる間に目を覚ました。

まずはマーライオンパークに行こうと地下鉄に乗って向かった。シンガポールは地下鉄やバスがたくさん走っていて不便なくあちこち行ける。自家用車は税金がかなり高く持っている人が少ないと聞いた。国土が狭いからみたい。

マーライオンパークはやはり観光客が多かったけど、シンガポールのシンボルを見れて私は満足だったけど望夢は全く興味なし…その後、お昼だからと行ったフードコートの方が大喜びされてしまった…

三枝さん達と別れてホテルに戻った。
望夢は亘くんに抱っこされながら、もう夢の中にいた。慣れない場所でもたくさん遊んで、たくさん食べて幸せそうに微笑みながら寝ている姿に2人で顔を見合わせた。

明日は動物園、明後日は水族館と望夢に日本とは違う自然を感じて欲しいから。
それでも亘くんに抱きしめられて眠れるこの瞬間がやっぱり幸せだと感じながら目を閉じた。




昨日早く寝たせいか早くから目が覚めた。望夢は朝から元気で一安心。旅行で熱が出るかもと少し心配だった。流石お医者さんの亘くんは目が覚めた望夢を必ず診察してくれる。過保護かな?と言いながらも…でもなんだかとても幸せそうだった。

ホテルで朝食を取ってからタクシーに乗って動物園にやってきた。右も左もわからない私は亘くんの案内で行きたい動物も見れたし、トラムという乗り物に乗って移動したり、美味しいランチも食べれて満足していたが、もしかして誰かと来たことがあったんじゃないか…と少し気になってしまった。そりゃ私と離れて過ごしてるうちにそういう人ができてもおかしくはない。見た目もかっこいいし…お医者さんだし…じゃなきゃこんなに案内なんてできないんじゃないかって、そんな考えごとをしていたらつまづいて派手に転んでしまった。
「いたっ」

「詩織、どうした?」望夢のベビーカーを押して前を歩いていた亘くんが戻ってきて手を差し伸べて起こしてくれた。

「どこが痛い?どこ打った」

「ごめんね。大丈夫だから。望夢もありがとう。いい子いい子してくれるの」
子供にまで心配されて、なんだか情けなくなった。涙が出そうになって近くに見えたトイレに駆け込んだ。

亘くんにそういう人がいたっていいじゃない。私が亘くんから逃げたんだから。今は結婚してくれたし、左手の結婚指輪を指でなぞってみる。亘くんは本当に私でよかったんだろうか?望夢がいるから責任で一緒にいてくれてるのかもしれない。本当はこのままシンガポールにいたかったんじゃないか…どんどん自己嫌悪に落ちていく気がした。手のひらが痛くて目を向けると赤く擦りむけて、ところどころ出血していた。膝も痛くてスカートをめくると膝からも血が出ていた。
手を洗って、膝もティッシュで拭いて絆創膏を貼った。鏡を見ると涙で濡れていた顔を洗った。情けなくてまた涙が溢れてきた。せっかくの新婚旅行だったのに…なんでこんな気持ち…

いつまでもこんな所にいても仕方がない。もう一度顔を洗ってトイレを出た。
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