神さま…幸せになりたい…

面影

「わんわん」
「わんわんっ」
「わんわん持ってきたんだ、一緒に遊ぼうか」

望夢が高林先生に犬のぬいぐるみを持ってきて渡していた。望夢は保育園に行っているせいか、人見知りをしないでくれて助かる。あやちゃんも交えて一緒に遊んでくれているその光景が本当の親子みたいに見えた。

亘くんもきっと、いいお父さんになったんだろうな。子供が好きで小さい子に優しくて…そんな亘くんに何も言わずに出てきてしまった…望夢を産んだことさえ知らせていない。今更…あれから2年以上が経ってる。きっと亘くんは自分の人生を歩んでる。私には望夢がいる。たった1人の私の家族だから…

「詩織ちゃん、泣きそうな顔して…辛いなら吐き出しちゃいなさい。溜め込んでても辛いだけよ。聞くくらいしかできないけど…」

「沙代子さん…高林先生とあやちゃんと望夢、親子みたいだなぁーと思ってたんです。やっぱり父親って必要でしょうか？男の子って…」

「詩織ちゃんは、のぞくんの父親に報告はしないの？それともあえてしないの？」

「できないんです。彼の人生がありますし…きっと私達とは別の道を歩いてると思います」

「でも…いずれは…」

「まんまっ」
望夢がよちよち歩きでやってきた。
「のぞ、遊んでもらって楽しかった？よかったね」
「まんまっ」
「お腹すいたね」

気づいたら、もう夜ご飯の時間だ。遊んでお腹もすいてきたんだろう。そろそろご飯を作って食べさせないと…と考えていたら
「ご飯食べに行きませんか？これから作るのも大変だろうし…」と高林先生が声をかけてくれた。
その言葉にありがたく、みんなでご飯を食べに行く準備を始めた。