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涙のわけ

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どれくらい泣いていたのだろう…私がやっと落ち着いてくるとあゆちゃんが温かいタオルを持ってきてくれた。腫れちゃうから温めてね。
「あゆちゃん、ありがとう」

「落ち着いたか?」
大ちゃんの声が響いた。

「ごめんなさい。泣いちゃって…」
そう言うと咲希は何か誕生日で思い出したのかと聞かれ首を横に振ると、じゃあ今までどんな誕生日会をしたことがあるのか教えて?と聞かれたので正直に答え流ことにした。母親は私の誕生日なんて忘れられてたからお祝いしてもらった記憶はないと…施設では2ヶ月に1回の合同誕生日だった。だから1人だけのお誕生日会を開いてくれるなんて今まで1度も経験したことがないから嬉しくて泣いてしまったと…すると周りのみんな顔が絶句してるのが見えた。そしてマキさんは旦那さんに抱えられて泣き出してしまった。

「じゃあ今日は咲希の記念日だ。20歳の誕生日と初めての誕生日会。でも誕生日会は今回だけじゃないぞ。来年も再来年も10年後もそして…50年後も俺やみんながお祝いするから」
そう言ってくれた大ちゃんに抱きついた。そんな嬉しいことを言ってくれるとは思わなかった。

するともう。せっかくのお誕生日の料理が冷めちゃうよ。みんな座って。とアキさんが声をかけてくれたと同時に
「ごめんね。遅くなっちゃった」
と大ちゃんのお父さんとお母さんも来てくれた。
お父さんから20本のピンクのバラの花束を渡された。

「咲希ちゃんお誕生日おめでとう。色んな辛いことがあっただろうけど幸せになるんだよ」
と言ってもらって嬉しかった。自分勝手で逃げるように大ちゃんの実家を出たのに…
「ありがとうございます」
そう言うとお母さんは、咲希ちゃんの元気な顔が見れて嬉しいわと私でも知ってるブランドのショップバックを渡された。みんなに促されて中を開けると小ぶりなバックが入っていた。

「こんなお高いのもらえません」

「いいのよ。咲希ちゃんに使って欲しくて選んだの。今度は一緒に買いに行きましょう」
と言ったもらった。

「じゃあみんな揃ったから乾杯しよう」
とグラスにワインが注がれた。私のグラスにも注いでくれたけど横にいた大ちゃんが一気飲みは禁止。少しずつだな…でも無理なら俺が飲むからと…確かに昨日は一気に飲んでワインの味なんてわからなかった。本当、申し訳ないことをしてしまった。

「じゃあ咲希ちゃんの20歳のお誕生日に……乾杯」
あゆちゃんの乾杯の音頭で私の初めてのお誕生日が始まった。
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