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月夜と王宮のマグノリア
第二十三話
しおりを挟む「ねえロッタさん。昔ぼくに聞かせてくれた話を覚えてるかな」
「うん? どんな話だい」
「小さな国に住む、王と王妃と民たちの話だよ」
「ああ、そんな話もしたね」
「あれってさ、今から思えばパパやママ、それにぼくのことみたいだなって。ロッタさんてウジャトの力があるんでしょう。それってさ、未来を見たりもできるんじゃないの?」
アンジェラスの問いは的を射ていた。仮にそれが正しければ、ロッタの話した内容は現在のアンジェラスと周囲の環境、これから起こるだろう予知的な未来ということになる。
期待の目を向けるアンジェラスに、けれどロッタは気のない返事をするだけ。
「さあ、どうかね」
色いい返事がもらえずアンジェラスはがっかりする。それならばと話のつづきを聞かせてと願うと、少しの逡巡のあとロッタが口をひらく。
「そうだね。行動ひとつで未来は変わるもんだ。いいかいアンジェラス、なにがあろうと心に嘘をつくんじゃないよ」
返ってきた言葉はやけに抽象的な内容だった。つづきが聞けると疑いもしないアンジェラスは、思ってもみないことを聞かされ戸惑う。
「え、それって……」
「ははは。いつか分かる日がくるさ。ああ、そろそろ時間だね。ルーがやってくる」
「じゃあ、あたしは退散するよ」──ロッタはテーブルから飛び降りると、書架と壁の隙間にすがたを消した。
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