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ぼくの楽しいハネムーン

第二十九話

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「ねえ伊織さん」

「ん、どうしたの?」

「ぼくね、その、ほんのちょっとだけど……ベルトのサイズが合わなくなったみたい」

「……そっか。散々美味しいものを食べたからね。うん、けど大丈夫。僕らの家に帰ってから、たっぷり運動させてあげる。きっとすぐ元に戻るよ」

「ベッドのなかでね」――そう耳打つ。

「!っ――……はい」

 言い返そうかと思ったもの、お腹が苦しいのは大問題だ。ここはひとつ、伊織さんの体力と下半身にすがってでも、どうにかしたい案件だ。

 藁をも掴む心境とはこのコトか……、そんな言葉が脳裡に過った。

 ぼくらのハネムーンが終了した。

 世話になったホテル、ビバリーヒルズを離れ、今は帰りの飛行機内はファーストクラスの座席のうえだ。最後まで贅沢をしてしまったと、ここにきてケチくさい思いに駆られる。

 ダイエットをしなくては。そう固く決心した途端、キャビンアテンダントが飲み物と甘いお菓子を勧めにやってきた。

「ああ、美味しそうっ♪ ぼくね、コレとコレとコレ!」

「んふふ」

 ひと口大のケーキを選ぶぼくを見ながら、伊織さんが意味あり気に笑う。

「だって……そ、そうだ、ダダダイエットは明日から――ああ明後日から頑張りますっ!」

「はいはい」

 意味あり気な彼の笑みがさらに深まった。



「伊織さん、見てください。ほら、日本列島だ」

「ほんとうだ。おかえり、秋良」

「えへへ。ただいま、伊織さん――」

 飛行機の窓からのぞくぼくらの故郷を見ながら口づけをする。

 海外は楽しかったけれど、やっぱりイケ部のメンバーたちがいる日本が一番だ。

 
 またね海外。いつかまた遊びに行くよ――――――



 ぼくの楽しいハネムーン/秋良と伊織のHappy Ending/END
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