秋良と伊織のHappy Ending

ぼくの楽しいハネムーン

第二十七話

　★　★　★

　部屋に連れ戻され即刻バスルームに押し込まれると、お湯を張ったバスタブに首まで浸からされ芯まで温まった。

　どうやら部屋に戻るとぼくのすがたがなく、探しに戻るまえに湯を出していったようだ。彼の機転は功を奏し、おかげでぼくは風邪をひかずに済んだ。

　その間もネチネチと怒られながら、主寝室のベッドに横たわらされると、ようやく欲しかった情報を聴かせてもらっている次第だ。

「――じゃあ、あの女のひとたちって、記者だったんですか？」

「うん。まあ”パパラッチ”と兼用らしいけどね」

　伊織さんの話によれば、昨日ロデオ・ドライブの噴水まえで撮られた写真がSNSに流れ、それを見た現地の記者が取材させて欲しいと押しかけてきたそうだ。

　ぼくらのような男同士のカップルは、海外では珍しい光景ではない。

　けれど日本人観光客となれば話は別だ。慎ましく控えめな日本人が、白昼堂々抱き合いキスをしているのだ、これをネタにしない手はない。

　”可愛らしいジャパニーズ・カップル、トゥーロデオの噴水まえで熱愛キッス”

　記事の見出しもできているそうで、それを耳にした途端ぼくの意識が遠退いた。あのとき口づけなどしなければ、今頃こんな事態には陥らな――そこまで考えはたと気づく。